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はてなのプロダクト開発の舞台裏

プロダクトのデザインを長く健康に保つには?――デザインの優先順位・チームでのコミュニケーションのコツ

はてなのプロダクト開発の舞台裏 第4回

デザインの破綻に対処して持続性を高める

 たとえどんなに優れたガイドラインを策定しても、それに則っていないデザインは生まれてしまいます。既存のガイドラインでは対応できないデザインが必要になった場合や、単にデザイナーが変わっただけでも起こります。特別な理由がなければ基本的には一貫性を維持すべきなので、たいていの場合これはネガティブに作用してしまいます。

 これをただ眺めているだけでは、沈んでいく船にしがみついているのとそう変わりません。部分的にでもキャッチアップするためのメンテナンスを続けていく必要があります。ただ、往々にして開発チームにはやりたいことが山積みなので、メンテナンスのためのまとまった時間や労力を割くことはむずかしいかもしれません。

ユーザー体験のリファクタリングをついでにする

 そこで、日常的な機能開発のついでに「体験のリファクタリング」を取り入れてみてはいかがでしょうか。これはユーザー体験を変えずにデザインを整理しようとするものです。一般にリファクタリングというと、エンジニアリングの世界で、表面的な動作を変えずにソースコードを整理することを指します。この考えかたをデザインに応用しようというのです。

 デザインで見た目を変えないのは難しいですから「表面的な動作」を「体験」と読みかえます。例えば、見出しのバリエーションが増えてきたらプロダクト全体で絞ることができないか見なおすとか、似たような機能のモーダルUIを新しくつくっていたらまとめて再利用可能な設計にする、といったことができます。

 カクヨムでも体験のリファクタリングをよく行っています。すこし前になりますが、プロダクト全体のボタンの見直しは例として分かりやすいでしょう。この取り組みのきっかけは、作品のフォローボタンのスタイルを見直して、続きから読むボタンとの役割の違いをはっきりさせるという施策でした。

作品画面のボタンスタイルを見直す計画
作品画面のボタンスタイルを見直す計画

 約2年が経過したカクヨムには、意味は同じだけれどスタイルがちがうボタンが、プラットフォームを横断していくつか存在する状態になっていました。その状況下であらたなボタンスタイルを追加すると、今後のメンテナンスがいっそう複雑になる状況も目にみえました。施策の実行前にプロダクト全体のボタンスタイルを整理することが必要だと考えたのです。そして全画面のボタンを一つひとつ確認し、手軽に対応が可能な範囲でスタイルの乱れを修正していきました。カクヨムはこのときの恩恵をいまでも受けていて、扱いやすく壊れにくいボタンを素早く利用できるようになっています。

 この取り組みは現状をみつめ、将来のデザインへ投資するものです。ですが、重要な開発項目を遅らせてまで取り組むほどインパクトのあるものではありません。かといって放置したままで良いものでもありません。時間が経てばたつほど、ほころびの蓄積が開発者を苦しめ、デザインの不具合を増加させてしまいます。

 では、どのようにして現場に取り入れたらよいのでしょうか。その鍵を握るのが「ついで」の精神です。本筋の開発計画に影響を与えない範囲でついでとして取り組むのが、障壁が低く取り入れやすいと思います。いま取り組んでいる施策に関連するものでよいです。プロダクトにとって嬉しい結果をチリツモで獲得していきましょう。

視野をひろげて小さくはじめる

 モックアップで魅力的な未来を思い描けたとしても、それを実現するには、チームやプロダクトのさまざまな運用上のハードルを超えていかねばなりません。ましてやプロダクトの運用期間が長くなればなるほど、過去の資産との付き合いも深くなり、状況はますます複雑になっていきます。そうした開発環境のなかでデザインを安定的にスケールさせるには、現在だけでなく過去や未来にまで視野をひろげた開発が必要です。

 本稿で紹介した3つの取り組みは、はてなのノベルチームで実践しているそんな取り組みの一部です。そして、そのどれもが小さくはじめられます。ぜひどれか一つでも皆さまの開発現場に取り入れてみてください。いつかその効果をじわりと実感するときがやってくるはずです。

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この記事の著者

村田 智(株式会社はてな)(ムラタ サトシ)

@murata_s。アートディレクター/デザイナー。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業後、2013年はてなに入社。ウェブやアプリの企画、情報設計、ビジュアルデザインをおこない、新サービスの立ち上げやグロースに貢献している。主な仕事に、サーバー監視サービス「Mackerel」、小説投稿サイト「カ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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