PMはどう育成する? 個人の特性に応じて、実践を重視した教育
同社のプロダクトマネージャーには、ディレクター系組織に所属する企画バックグラウンドを持つ人と、エンジニアリングのバックグラウンドを持つ人がいて、これらの人材をうまく組み合わせて競争力を高めている。山崎氏は「ゼロイチでプロダクトを開発できる人もいれば、企画系や事業責任者とコラボレーションしながら実行に重きを置いて活動する人、成長フェーズでA/Bテストが得意なグロースハッカーな人など、さまざまなタイプの人がいます。育成の際にはそれぞれの強みをどう伸ばしていくかに注目するのもポイントです」と説明した。
また、プロダクト開発を推進していくために、2020年4月からはエンジニアリングバックグラウンドのプロダクトマネージャー、エンジニア、QA、デザイナーを山崎氏が率いている。人材育成については、個人のレベルに応じた個別指導ができるメンター制度の導入をしている。集合研修では、参加者のレベルにあわせて難易度をそろえなければならず、非効率だからだ。山崎氏は「座学よりも実践を重視しています。特に弊社は、プロダクトマネージャーの数よりプロダクトの数の方が多いため、中途入社であっても比較的短期間でメイン担当ができ、経験を積めます。また現在のスキルよりもチャレンジと学びを重視し、毎週1時間、プロダクトマネージャー同士で学びの共有会を実施しています」と、人材育成の基本的な考え方や体制を述べた。
さらに山崎氏は、プロダクトマネージャーとプロダクトデザイナーの関係について「プロダクトマネージャーというのは世界観を扱い、プロダクトデザイナーは具体化を扱います。この両輪が回って初めてよいプロダクトが見えてきます。それぞれの役割は組み方によって変わります。例えば、私がベテランのプロダクトデザイナーと組む場合と若手のプロダクトデザイナーと組む場合では対応が異なるでしょう」と、プロダクトマネージャーとプロダクトデザイナーが二人三脚で取り組むことの重要さを説いた。
続いて、冒頭で掲げられた7つの「プロダクトシコウ」の話題となった。この考えのルーツは、エムスリーが推進している、ヘルスケアビジネスの7Pフレームワークだ。ヘルスケアビジネスでは、たくさんのプレーヤーがいて、理念や技術、場所、お金の流れ、法制度なども考慮しながら、何をどう改善をしていくかというターゲット定めてプロダクトを方向付ける。エムスリーもこのフレームワークから逸脱しないよう事業を展開している。
山崎氏は、プロダクトマネージャーにおいてもこの考え方は共通すると考え、あらためて7つのシコウについて下図のように説明した。
1つ目の「思考」は、考えるということ。プロダクトや顧客のことを率先して考えられているか、そこから学べているのかを指す。
2つ目の「指向」は、ゴールの設定とリーダーシップ。一般的な意味では「ある方向に向かうこと」だが、プロダクトマネージャーとして重要なのは「プロダクトが達成すべきゴールや、そこへ導くためのリーダーシップを発揮できているか」だと説明した。
3つ目の「志向」は2番に近いが、志や気持ち、仲間を巻き込む部分を表す。プロダクトマネージャーとして「このプロダクトでこれを実現したい」といった強い気持ちを持ち続け、それをチームにも伝搬できるかどうかが重要だ。
4つ目は「試行」。まずは試すという意味だ。ここでは「プロダクトが顧客の真の課題を解決できるように、素早く仮説検証できているかどうか」という意味になる。仮説検証の文化は、チームの学びを促進すると共に、リカバリ不能な失敗を避けるためにも重要だ。
5つ目の「施行」は、計画を実行することだ。プロダクトを素早く作りリリースするために開発プロセスを理解して、チームで実践できているかといったエンジニアリングに近い部分も、プロダクトマネージャーには必要になる。
6つ目の「嗜好」。これは「好み」という意味だが、プロダクトマネジメントにおいても意外と重要で「プロダクトやチームが顧客から愛され、そして自分たちもプロダクトが好きか」が大事になってくる。
7つ目の「至高」は、「この上なく高く優れていること」を表すが、「これはプロダクトマネージャーの育成において非常に重要」だと山崎氏。これは、プロダクトチームの全員が、最終的には最高のプロダクトを作ろうという高みを目指せているかということだ。
「まずは考えて(1.思考)、ゴールを設定し(2.指向)、志を持つ(3.志向)ことが大事です。それから試して(4.試行)、ちゃんと作る(5.施行)、好きになれることと好かれること(6.嗜好)も大事で、最高のプロダクトを目指します(7.至高)。これは順番にトレーニングできるようになっています。また、対角線上にある2.指向と5.施行はおよそ逆の意味を持っていたり、隣接する1.思考、4.試行、5.施行なら仮説検証などのテクニカルな意味を持っていたり、さまざまな解釈ができます」(山崎氏)
山崎氏は、この7つのシコウを指標として、どれくれいできているかを評価し、プロダクトマネージャーの特性を明らかにし、育成に活用していくのもよいのではと提言。育成を最大化するためには、アジャイルで素早く実践して身に着けることがポイントだとした。
