今後強化したいのは「エンタメでのCG活用」と「情報発信」
――CG制作事業をスタートしてから印象に残っていること、大変だったことなどはありますか?
伊勢田 ひとつはチームの構築です。数十人というメンバーを事業部で抱えており、かつ制作拠点を海外にも設けているため、現地スタッフとのコミュニケーションにも試行錯誤を重ねました。日本人の好みのCGの質感や四季の移ろいといった感覚を共有することもCGを制作するうえで大切な要素のひとつなので、そのすり合わせにも当初は苦労しました。
もうひとつ印象的なのは、2020年に携わったエンタメの案件でCG動画を制作したことです。いままでメインで携わってきた建築関連のプロジェクトとは異なり、想像していた以上にチェックすべき事項が多かったことに驚きました。
建築の場合、図面の段階から出来上がりの形が明確になっていることがほとんどで、そのなかで決まっていない部分をCGで肉付けをしていきます。ですが仮想空間でCGを制作する場合、その空間上の建物が建築的に破綻してないかという確認も必要でしたし、最初はイメージがわきづらかったものが制作過程で少しずつ形として出来上がってくると、制作物の方向性が変わることもありました。
実際にはないものをイメージとして制作できることがCGの強みでもありますが、それが諸刃の剣にもなりかねない。仮想空間でCGを制作する場合であっても、最初に決め切ってから進むことで建築と同じように制作できるのではないかなど、多くの気づきを得ることができました。
――最後に、今後のCGに関するお取り組みの展望について教えてください。
柳父 伊勢田も私も以前関わりがあったこともあり、エンタメの案件にもいっそう取り組んでいきたいと思っています。リアルでイベントができない企業さんの仮想空間づくりや、家具メーカーさんのカタログをCGで制作する以外にも、CGとVRの技術をいかした事業を生み出していきたいですね。
もうひとつ強化していきたいのは、情報発信です。私たちが制作している建築パースは設計士さんのお名前で世にでることが多いので、そのパース自体を誰が作ったのかは知ってもらえないことがほとんど。業界として日の目が当たらなければ人材の流入も起きにくいですし、働いている人もやりがいを感じづらくなるかもしれません。
そのため、お客さまとのコミュニケーションのなかで、CGという形で制作物に携わった人がいることやCG制作時のエピソードやストーリーを伝えていきたいですね。それがお客さまの満足度向上にもつながるとも考えています。
またほかの業種とも積極的にコラボレーションしながら情報発信を行っていくことで、まずは私たちのことを知っていただくための行動を続けていきたいと思っています。
伊勢田 引き続き建築や家具をベースとしたCG制作にも取り組んでいきたいですが、なかなか人が集まることができないコロナ禍において、VR制作の需要も高まりを感じています。レコード会社さんやイベント会社さんといったエンタメ業界の皆さんにも、いま以上に私たちの技術を提供できればと思っていますが、そのためにもチームの構築も一層強化していきたいです。よりプロフェッショナルな人材を育てるためにも、映画関連、住宅のCGなど、分野ごとにチームを編成していくのが理想です。
――柳父さん、伊勢田さん、ありがとうございました!