エンジニアを支援するプラットフォームを提供するファインディ
ファインディはエンジニア転職サービス「Findy」や開発データを意思決定に活かす、経営と現場をつなぐAI戦略支援SaaS「Findy Team+」など、エンジニアを支援するプラットフォームを提供している企業である。
セッション冒頭、ファインディの渡邉氏は自身の経歴と「Findy Team+」を紹介した。
渡邉氏はサンマイクロシステムズ、プリファードインフラストラクチャー、トレジャーデータ、MODEを経て24年にファインディに入社。「テック企業で営業やマーケティング、デベロッパーコミュニケーションなどを担当してきました」(渡邉氏)
同社が提供する「Findy Team+」はGitHubのようなソースコード管理ツール、Jira、Notionのようなタスク管理ツール、AIエージェントツールなど、ソフトウェアエンジニアが利用するDevOpsツールと連携して、開発ワークフローや生成AIによる開発状況を可視化することで、開発効率や開発者体験を最大化するための課題を発見、改善を支援する。ダイキン工業は同サービスを導入し、開発生産性の計測に活用している。
「PoCで終わるプロダクト開発」からの脱却──内製開発チーム立ち上げの背景にあった危機感
ダイキン工業では現在、アジャイル開発の内製化を進めている。それを牽引しているのが、森鳰氏だ。
森鳰氏は2016年にAI機械学習エンジニアとしてダイキン工業に入社し、研究開発に従事していた。研究職だった森鳰氏が内製開発チームを立ち上げるきっかけとなったのは、「自分の関わった技術のプロダクト化をしようとしても日の目をみることなく、PoCで終わってしまっていた。事業貢献に繋がらない原因を探ってみると、ソフトウェア開発が自社のコントロール外にあることが問題に見えたこと」だった。
具体的には、企画側が「こんなプロダクトを作ればこんな顧客価値が提供できるのでは」と仮説を立てて仕様書を作っても、その後はベンダー委託をしてしまうため、実際の顧客価値を検証することがほとんどないまま進展し、最終的には失敗してしまう経験が何度もあった。
そこで森鳰氏はプロダクトのすべてを一貫して取り組むためにソフトウェアエンジニアに転身。2019年に森鳰氏を含め未経験者4人で内製チームを立ち上げた。「ターゲットにしたのは事業部が進めていた補助金事業です。このままだと事業を畳まざるをえないほど工数がネックになっていました。私たちはその状況を見て、完全なプロダクトを作るのではなく、一日でも早く彼らの業務を楽にしようと業務の整理や自動化をして、最終的に従来工数の9割を削減しました」(森鳰氏)
そのような取り組みの結果、2020年に補助金制度に頼らない事業として商材化したのが、「EneFocusα」である。EneFocusαは空調機の遠隔監視・省エネをサポートするエネルギーマネジメントのサブスクリプションサービスだ。
ダイキン工業では空調機を納入したビルに対して、空調の使用状況に関するデータを収集している。「EneFocusα」を活用することで、収集したデータを分析して空調の使用状況の無駄や不要な運転している箇所を特定し、最適な運用を提案している。「1つのビルに対して約20%弱の省エネ、節電効果があります」(森鳰氏)
商材化できたことで、内製化チームのメンバーも増やし、適用先を拡大。その過程で得られた知見を共有するために、2023年には社内向けの開発者コミュニティ、2025年にはアジャイル内製センターを立ち上げた。アジャイル内製センターは事業部横断型のプロジェクト型仮想の組織で、「今は正式な組織ではなく、有志で組織を構成しています」と森鳰氏は説明する。
組織上はデータ推進グループに所属しているが、事業部の人たちと共通のチームを作って、事業計画に基づいたプロダクト開発を加速する。アジャイル内製センターでは事業に関するものをすべて内製するわけではなく、空調のコア事業に関するところの内製化を推進している。現在は20人弱のメンバーが所属する組織になっている。
アジャイル内製センターの特徴は、「イベントへの登壇など、社外活動を積極的に行っていること」と森鳰氏。外部へのPRや外部人材との交流を増やす目的ではあるが、「発表することでうまくいったこと、うまくいかなかったことの再整理ができるので、自分たちにとっても学習になる。また話すことで客観的なフィードバックがもらえる」と、もう1つの狙いを説明する。「スクラムやアジャイルなどのイベントを中心に、品質や製造関係、ファインディが主催するイベントにも登壇させていただいています」(森鳰氏)

