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Chatworkのプロダクトマネジメントに学ぼう

競合ひしめくプロダクト開発で、PMFを達成するには? 市場変化の捉え方と意思決定のヒント

Chatworkのプロダクトマネジメントに学ぼう 第5回

成長前期:ポジショニング戦略に基づく開発

 成長期に差し掛かると、社会情勢の変化が、より大きく市場の動向にも影響をもたらしました。特に、2016年頃に始まった「働き方改革」により、多くの企業が、自社の労働環境の見直しやICTツールの導入検討を進めました。こうした変化は、多様な顧客を市場に呼び込むことになり、プロダクトとしても今までChatworkを利用していない層のユーザーと接することになりました。

 それまでの主要なユーザーセグメントは、Web制作会社や広告代理店、ゲーム会社など、社内にイノベーター層となる人がいる組織でしたが、この頃から非IT業界の企業や、大企業などからの引き合いも増え、ユーザーの要望や課題自体も多様化が進みました。

リソース差があるからこそポジショニングを明確に

 より幅広い顧客からの引き合いがあることは、プラスに捉えられる反面、大手企業と比較すると10分の1ほどの人員規模で開発を行う必要があるため、誰に向けた開発に最も投資すべきかを明確にする必要がありました。

ビジネスチャットツールベンダー各社のポジショニング
ビジネスチャットツールベンダー各社のポジショニング

 大手競合他社はターゲットを徐々に変えながらも、主にエンタープライズ企業やITスキルが高い人材が多い企業をターゲット層としてサービス展開を目指している傾向があったため、中小企業かつ、ITが浸透していない層をメインターゲットと捉えたポジショニング戦略をとり、それに合わせたターゲット企業のペルソナ策定を行いました。

 ペルソナの策定にあたっては、「働き方の自由度」を横軸、「企業規模」を縦軸にした上で、9つにユーザーセグメントを分けた上で、

  • People:どのような人が多く働いているか?
  • News&Tech:どのようなメディアやテクノロジーに触れているか?
  • Place:どういった場所で働いているか?

 という観点で深掘りを行った上で、特に重要視したいセグメントからペルソナを決めました。

 ペルソナが決まるまでは、大企業向けの管理機能と、フリーランスにとって利便性の高い機能、競合にはあるもののChatworkにない機能などが、同じテーブルの上で議論されていましたが、ペルソナを統一したことで、開発リソースを分散することなく、特定の顧客セグメントの課題解決に向けて投資できるようになりました。

成長後期:マジョリティーに向けたプロダクト価値の構築

 グローバル市場に目を向けると、すでに50%を超える企業がビジネスチャットを導入している(総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018))ことから、すでに国内でも成長後期のフェーズ、もしくは成熟期に入っていると捉えられる方もいるかも知れませんが、国内市場の実態としては、ようやくキャズム(普及率16%の壁)を越えようとしているフェーズにあたります。

 このフェーズでは、マジョリティー層からのニーズが増加し始め、各社シェア拡大に向けた戦略を推進していきます。

 今まで、プロダクトライフサイクルにおけるイノベーター層やアーリーアダプター層が、プロダクトのコア機能を目的に利用を開始したのに対して、マジョリティー層のユーザーにとっては、コア機能は当たり前の水準であり、そこに付随する周辺価値次第で、利用するかどうかが大きく左右されます。

 付随する価値は、フィリップ・コトラーのプロダクト3層モデルなどから捉えることができ、「製品の中核」がコア機能にあたるのに対し、「製品の実態」や「製品の付随機能」が付随する周辺価値として考えることができます。

 そして、大手競合他社と比較した際に、自社のポジショニングも踏まえたうえで、どの付随する価値に自社独自のバリューがあるかを見極めていきます。

 一般的にブランド認知の高い企業が提供するサービスにおいては、その品質やブランドイメージなどは、ベースとして高く評価される可能性があります。そのため、より多岐にわたる顧客ニーズのカバーを行うため、管理機能やAPIを活用した連携サービスなどの提供に力を注いでいる傾向があります。

 一方、Chatworkはブランド認知がされていない中で、価値を示していく必要があるため、「安心安全に利用できる」「使いやすい」の2つの観点で品質改善を進めることで、既存顧客から口コミが広がる構造を作るところに注力をしていきました。

 「安心安全」については、ユーザー増加に合わせて増えるトラフィックやデータをリアクティブにさばけるシステム基盤を構築するための、技術的なチャレンジを継続して行っています。また、「使いやすさ」については、前回の「UX負債をためない! プロダクトの「小さなカイゼン」を継続するための3つのポイント」でも述べたような、改善サイクルを回すことで品質向上に取り組んでいます。中小企業をターゲットとしたユーザーインタビューやユーザビリティテストの実施に加え、セールスやカスタマーサクセスを担当する部署と、定期的にユーザー情報の交換を行っています。

 これにより既存のChatworkの新規登録のうち、半数以上は既存ユーザーからの招待や紹介経由での登録される構造につながっています。

まとめ

 今回は、ビジネスチャット市場に大手テクノロジー企業が参入してくる中で、Chatworkがどのように市場変化を捉えてプロダクトに関わる意思決定やアクションをとってきたか紹介をさせていただきました。

 資本や人材の規模が異なる大企業とベンチャー企業が戦っていく過程では、

  • 導入期におけるProduct Market Fitを目指したマーケットの見極め
  • 成長前期におけるポジショニングとペルソナ定義に基づく開発投資先の絞り込み
  • 成長後期における付随する価値での差別化

 の3点が重要なポイントとなっていました。

 これからも、市場の変化に柔軟に対応しつつ「すべての人に、一歩先の働き方を」というビジョンの実現に向けたプロダクトづくりを行っていきます。

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この記事の著者

石田 隼(Chatwork株式会社)(イシダ ハヤト)

 Chatwork株式会社 プロダクト本部 プロダクトマネジメント部 マネージャー。San Francisco State University 在学中に、VCでのインターンを経て、現地でユーザーテスト事業を開始。日本のゲーム会社やスタートアップのプロダクトローカライゼーションを支援。卒業後、Cha...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/14080 2021/05/19 11:00

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