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等身大のエンジニア女性のまなざし

「メンターになる人が少ない」――だむはさんが、女性ITエンジニアのスキルキャリアシェアサービス「sister」を作って感じた課題とは

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 「仕事で困っていることを気軽に相談できる相手がいない」と悩む女性エンジニアは少なくない。そこで生まれたのが、IT/Web業界に特化した女性向けスキルキャリアシェアサービス「sister(シスター)」だ。自身も女性エンジニアとして同様の課題を抱えていたという開発・運営者のだむはさんに、「sister」の立ち上げに至った経緯を聞いた。

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エンジニアとして働いてきた中で、マイノリティを肌で感じた実体験

――だむはさんのこれまでの経歴を教えてください。

 私は韓国生まれ日本育ちで、3歳から日本で暮らしています。大学は外国語学科を卒業し、その後は旅行業界や商社などに入りたかったのですが、就職活動が思うように行かず。そんなときに、ふと父がエンジニアだったことを思い出し、「とりあえず私も受けてみようかな」という軽い気持ちでSIerを受けたのが、エンジニアになったきっかけです。

 そこから5年、SIerで働きました。新卒で入って2年半ほど働いたのは独立系のSIer。1年目はテスターとしてエビデンスをExcelに貼る仕事が多かったのですが、2年目からはタイの子会社に出向して、タイのエンジニアと一緒にIoT系のプロジェクトを進めました。次にMicrosoft 365(M365)の導入支援サービスを立ち上げる新規部署に配属され、そこでクラウドと出会ったことで、「世の中には、私の知らないおもしろい技術がたくさんあるのだな」と気づき、転職を決意しました。

 2社目はもう少し大きなSIerで、グローバル案件に携わりました。転職後すぐにアサインされたのがM365の移行プロジェクトで、プロジェクトリーダーとして、アメリカ本社のお客さまと英語でコミュニケーションを取りながら進めていきました。8カ月ほどで運用・保守に回ってからは、正直暇で……(笑)何のトラブルもなく、考える時間がたくさんあったので、再び転職を考えるようになりました。将来、妊娠や出産の可能性を考えると、企業に依存するのではなく、手に職をつけておいたほうがいいと思ったんですね。

 そこで2020年8月にWeb系の自社受託開発会社に転職して、サーバーサイドエンジニアにジョブチェンジしました。今はプロジェクトリーダーをしながら、いろいろなBtoC系サービスの開発に携わっています。

「sister」のだむはさん
「sister」のだむはさん

――これまでエンジニアとして働いてきた中で、何か困ったことはありましたか?

 IT業界に限ったことではないと思いますが、プロジェクトリーダーとしてお客さまを訪問しても、あまり目を合わせてもらえないことがありました。私が話したことに対して、「これって本当なの?」と隣にいる男性に改めて確認されることも。技術的に“軽く見られている”と感じたことはありました。

 あとは、やはり月経の問題ですね。インフラエンジニアとしてデータセンターのサーバー室に入らなければならなかったときに、そこが一度入ったらオペレーターに電話をしてからでないと、外に出られないところだったんです。でもその日はちょうど生理の日とかぶってしまい……。4〜5人いたメンバーの中で、女性は私だけでした。なかなか言い出しづらいし、何度もトイレに行くのも気まずいし。誰にも相談できなくて、ずっと外に出られないまま我慢していたら、経血がズボンについてしまいました。その時は「マイノリティって、つらいなぁ」と思いましたね。

 他には、ランチに誘われにくいという経験もありました。転職して初めて出社したときに、同日に中途入社した男性は声をかけてもらっていたのに、私には誰も声をかけてくれませんでした。女性のエンジニアにとっては“あるある”らしいのですが、その時はさみしかったですね。

女性が安心して技術やキャリアの相談ができる場を目指して

――だむはさんは「sister」の開発・運営のほかにもTECH PLAY女子部でオーガナイザーもされていますよね。こうした活動の背景には、どんな想いがあるのでしょうか。

 「sister」を開発しようと思ったのは、すでにあるメンター・メンティー・マッチングサービスでメンターを探そうとしたら、ほとんど同性がいなかったことがきっかけです。確かにメンター・メンティーの関係とはいえ、異性とオンラインで1対1になることに対して、少し抵抗を感じたり不安に思ったりする女性は少なくないと思います。マイノリティな女性エンジニアがメンターに出会えなかったり、逆にメンターにチャレンジできなかったりするのは悲しいことです。それなら女性限定にして、女性のみなさんがイキイキと活動しやすい場所をつくろうと思い、2021年5月に「sister」を立ち上げました。将来的には、女性限定にしなくてもいい社会になってほしいですね。

 TECH PLAY女子部のほうは、すでに知名度のあるコミュニティですが、「オーガナイザーをやってみませんか?」と声をかけてもらったのがきっかけです。ちょうど「sister」のリリースとかぶっていたので悩んだのですが、そうしたチャンスに積極的にならないのは、自分が後悔すると思い、また、オーガナイザーとして女性エンジニアのためにできることはたくさんあると感じたので、受けることにしました。マンションの管理人みたいに、困っている人がいたら手を差し伸べる役割になれたら、と考えています。

――「sister」を利用されたメンティーの方からは、どんな声が聞かれましたか?

 未経験の方からは、「sisterはとても素晴らしいサービスだと思います。私もいつかエンジニアとして、このようなアプリ開発に携われる日が来るよう、これからがんばっていきたいと思います」と。すでにエンジニアとして働いている方からは、「他のサービスには同性がほぼおらず、『検索しては、やめる』ことの繰り返しでした。そんな中、私が使うべきはsisterで、相談すべきはだむはさんだと思いました」といったうれしいメッセージをいただいています。本当にありがたいです。

「sister」について
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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

 フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

鍋島 英莉(編集部)(ナベシマ エリ)

2019年に翔泳社へ中途入社し、CodeZine編集部に配属。同志社大学文学部文化史学科卒。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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