ローコード開発ツールを活用したビジネスの実際
ここからは、弊社が営んでいるFileMakerを活用した3つの事業について詳しくご紹介します。
FileMakerプラットフォームを主軸としたソフトウェア開発の内製化支援
FileMakerを使った社内システム開発の内製化を画策するクライアント企業に対しての支援ビジネスで、弊社のメインサービスでもあります。具体的な実装テクニックの指導はもちろんのこと、中長期のIT投資戦略策定やシステム企画の支援も行います。また、具体的なプロジェクトにおいても、データモデリングやリリース計画の策定など、支援する内容は多岐にわたります。
実際にこのサービスをご利用いただいたお客様さまには、非エンジニアであるお客様さまご自身がローコードを駆使して開発を行うというインハウスデベロッパーが育っており、中にはプロ顔負けなレベルの「エンジニア」も誕生しています。
FileMakerの高い開発生産性を活かしたプロトタイプソフトウェアの開発
将来的に、Webや一般的な開発プラットフォームを前提としたプロダクト、もしくはパッケージとしてリリース予定のシステムのプロトタイプをFileMakerを使って開発するサービスです。
一般的な開発言語で作る場合と比較すると、短時間かつローコストで実際に動くソフトウェアができあがります。また、実用に耐えうるレベルまでプロトタイプを仕上げれば、小規模なテスト運用も可能なので、実装予定機能の見直しやブラッシュアップはもちろんのこと、課金モデルやビジネスモデルの素早いピボットにも有効な手段になります。
ITプロフェッショナルに対するFileMakerプラットフォームへのスキル移行支援
普段はWebや.NET、Javaなどで開発する技術者に対して、FileMakerプラットフォームでの開発ができるようになるためのスキル移行支援です。
FileMakerは独特の世界観を持つ開発プラットフォームなので、これまでの常識をそのまま持ち込むと、かえって開発生産性が下がり、応答性能の悪いシステムになってしまいます。私自身が、元々Microsoft AccessやDelphiなどで開発をしていたので、一般的な開発プラットフォームとの違いを示しながら、できるだけ短期間でFileMakerを使った開発ができるようにするための支援を行います。
これら3つの事業は、全てクライアント企業からの直接受注のみで承っているため、マーケティングとセールスを工夫することによって、自分が提供したいサービスにピッタリのニーズを持った「相性の良い」クライアントさんと巡り合うことができるようになります。
この「相性の良いクライアントさん」から、次から次に引き合いをいただける状態を作ることができれば、仕事は本当に楽しくなります。そして仕事が楽しくなれば、ITエンジニア人生の幸福度はぐっと上がります。
ローコードはITプロフェッショナルを幸せにするのか?
ここからは、ローコード開発の本質にもう一歩踏み込み、「ローコード開発はITプロフェッショナルを幸せにするのか?」という問いについて考えてみたいと思います。
もちろん、人の「幸せ」にはさまざまな定義や考え方があります。しかし、もし今のITプロフェッショナルという仕事に対して、マイルドな閉塞感や失望感を感じている方にとっては、ローコードをうまく活用したビジネス・プロジェクトに従事することで、何らかの突破口になる可能性もあります。
ITプロフェッショナルを苦しめる多重下請け構造・ウォーターフォールモデル・一括請負契約
これはあくまで私の意見ですが、私はITプロフェッショナルに不幸に招く3つの原因が、多重下請け構造・ウォーターフォールモデル、そして一括請負契約だと思っています。もちろん、この3つの条件が重なる中でも、幸せなITプロフェッショナルライフを満喫している方もいると思います。しかし、状況の濃淡はありつつも、この3つの条件下で毎日の仕事が楽しくてしょうがないという方は多くないと考えています。
実は私自身も、以前SESのプログラマ要員として、この3つの条件が重なったプロジェクトに組み込まれた時期がありましたが、その当時のプロジェクトはあまり楽しいものではありませんでした。そして今、ローコード開発プラットフォームを活用した新しいビジネスモデルをスタートしたことで、この3つの条件の全てから解放され、とても充実した幸せな毎日を過ごしています。
ここからは、私自身が感じているローコードを活用したビジネスに取り組むことで、この3重苦から開放されたことで感じている、ITプロフェッショナルとしての「幸せ」について書いてみたいと思います。
エンドユーザーから直接「ありがとう」が聞ける幸せ
多重下請けから脱却して、最も強く感じる幸せは、エンドユーザーの方と直接お話ができることです。そして、自分の書いたコードが、具体的にどのように役に立ち、誰を幸せにしているのかがダイレクトに伝わってくることです。
それは以前、私がブライダル関連のソフトウェアをFileMakerで構築していた時のことです。ブライダル業界は女性の多い職場で、子どもを幼稚園や保育園に預けて仕事をしている女性もたくさんいました。無事リリースしたソフトウェアの導入効果で、業務を大きく効率化できたことで職場のママユーザーから「これで延長保育を頼まなくても良くなります。ありがとうございます!」といった声をかけてもらったことがあります。
ほんの数秒の会話ですが、このような瞬間は、エンジニアにとってとても大きな幸せを感じる時間です。それまでの苦労も一瞬で吹き飛ぶほど、とても幸せな気持ちになれます。
多くの多重下請け構造のプロジェクトにおいて、最前線で実装を担当しているエンジニアは、実際に自分が書いたコードが、どのように役立っているのかを知ることはまずありません。
しかし、多重下請け構造から脱却することで、エンドユーザーとの直接会話の機会は確実に増えます。また、ローコードの良さは、仕様変更による手戻りリスクが低いことにあります。よって、ウォーターフォールモデルを採用する場合と異なり、短期間に何度もトライアンドエラーを繰り返すことができ、結果的によりユーザのニーズにマッチしたソフトウェアを構築しやすくなります。
このような積み重ねの結果としていただける「ありがとう」の言葉は、ITプロフェッショナルにとって、最高に幸せな瞬間ではないでしょうか。
プロとしての技術力が活かせることの幸せ
ITプロフェッショナルの幸せの要素として、「習得した技術力を発揮できること」は重要です。ローコードを活用するのはいいけど、自分の培ってきた技術力が全く活かせていない、もしくは技術力による差別化要因が小さいのであれば、それを活用してみようという気持ちにはなれません。
そして私の経験では、これまでに培ってきた技術力の中でも普遍的な要素については、ローコードを活用するにあたって大きな強みになります。
例えばFileMakerは、リレーショナルデータベースを活用した業務システムの構築を効率化するためのローコード開発プラットフォームです。そのため、データモデリングスキル、使いやすいユーザインタフェースをデザインするスキル、完成したソフトウェアを安全かつ快適に運用・保守してくためのスキルなどの普遍的な要素は、これまでの経験をそのまま生かすことができます。
また、FileMakerには、「スクリプト」や「カスタム関数」といった、システムの振る舞いを記述するための専用プログラミング言語の仕組みを持っています。
上記の図のように、分岐命令(IF)や繰り返し(Loop)など、プログラミングに慣れ親しんだITプロフェッショナルであれば、おなじみの制御構造を記述することができます。このようなロジックを制御できる仕組みが搭載されていることで、複雑なシステム化要求にも応えることができますが、こういった複雑な要求に応えるためには、高度で複雑なスクリプトや関数を実装できる技術力が必要です。
また、プロとしてはただ複雑なロジックを書けるだけではなく、保守性やセキュリティを考慮した、より洗練された「コーディング力」が求められます。このあたりのスキルも、これまでに培ってきた技術力がそのまま活かせます。
さらに、FileMakerには、Webのフロントエンドを組み込み可能なWebViewerというコントロールが実装されています。これを活用することで、FileMakerの標準機能だけでは実装することのできない高度な操作性を実現することができます。しかし、そのためにはJavaScriptを始めとしたフロントエンドに関する技術力が必要になります。つまり、「ローコードを使う=技術力は必要ない」ということではないのです。
培った高度な技術力が、クライアントの問題解決に大きく役立つというのは、やはり技術者冥利に尽きるものです。そして、この獲得した技術力によってクライアントに喜んでもらうという特別な経験は、ITプロフェッショナルの幸せとして重要な要素だと思います。
ビジネスとして十分な収益が得られることの幸せ
ITプロフェッショナルの幸せ、最後の要素はズバリ「お金」についてです。いくらやりがいのある素晴らしいプロジェクトであっても、それに見合う収益が得られなければ、私たちは幸せを感じることはできません。
しかし、「ローコード」というキーワードから一般的な連想をすると、「ローコードだから簡単なんでしょ? だから安くできるでしょ?」という論法(?)が成り立ってしまいそうです。つまり「ローコードで稼ぐことなんてできるのか?」という疑念がどうしても拭えません。
これは「開発費を安く上げたい」というニーズが最優先の見込み客に捕まった場合のみに心配すべきことです。世の中には、必ずしも開発費を安くすることが最優先の見込み客ばかりではありません。
先にも書いたとおり、ローコードと言えども、複雑で高度な要求に応えるためには、相応の技術力が必要です。この技術力をしっかりとクライアントに理解してもらい、自社の価値が相手にきちんと伝われば、ローコードを使うからと言って不当に安いフィーで仕事を請ける必要はありません。
また、弊社でやっているソフトウェア開発の内製化支援ビジネスでは、お客さまにも実際に手を動かしてもらい、実装部分を担当してもらいます。そのため、お客さま自身もソフトウェア開発の難しさ、大変さを身を持って理解してもらうことができます。ベンダー側の持つ技術力がダイレクトにお客さまに理解していただくことにつながり、結果的に自社の持つ技術力を正当なフィーとしていただける下地となります。
大切なことは、従来のソフトウェア開発ビジネスの常識にとらわれすぎないことです。ここがクリアできれば、ローコードを使ったソフトウェア開発でも、十分な収益を得られるモデルの組み立てができると思います。
まとめ
今回は、連載の最初ということもあり、詳細な技術情報ではなく、ローコード開発プラットフォームを活用した新しいビジネスモデルや、ローコードはITプロフェッショナルを幸せにするのかといった、私の考えを中心にお話しました。
お話の過程で、多重下請け構造やウォーターフォールモデル、一括請負契約を諸悪の根源のように表現してしまったので、中には気分を害された方もいらっしゃるかもしれません。決してこの3つが絶対ダメと決めつけるものではないですし、プロジェクトの質や規模によってはどうしても必要なものであることも理解しております。
さて、次回以降はローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」に関するテクニカルな内容を5回に分けて連載していきます。
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