CodeZine編集部では、先日のOpera社CSO(Cheif Standards Officer)、Charles McCathieNevile氏の来日に伴い、Opera社が取り組んでいるWeb標準の取り組み、Web標準の舞台裏、今後の展開に関するインタビューの機会を得た。
企業ビジョンの「すべてのデバイスに最良のブラウザ」を実現するために欠かせないという、同社のWeb標準への取り組みとは。
これまでのWeb標準の活動と成果
Webの標準化をみんなで一緒に行ったのは正しく賢明だった。もし一緒に活動しなければ、よい標準にならず、何もうまく機能しなかっただろう。
標準化のすべての局面において重要なことは、コモンエリアを見つけることだ。コモンエリアでは、人々が多くのことを試している。標準化はすべてのサービスを決められた形に定めるため、開発者にとって動きやすく、まるで雪玉が転がるようにどんどん大きくなっていく。
1990年代を思い起こせば、NetscapeやInternet Explorerがそれぞれ独自の規格を作り上げており、Webサイトの作成がとても大変だった。そのため、標準フォーマットとしてのHTMLはまだ大きな成功を収めているとは言えないだろう。これに対し、現在W3Cで動いている次世代のHTML 「HTML 5」のワーキンググループは、ほぼ成功の兆しが見えており、実際に相互運用性・信頼性を証明している。開発者は、ユーザスペックを気にせずページを作成できる。
HTML、CSS、SVG、DOM、これらは大きなWeb標準だ。
SVGは標準化において既に成功している。いくつかの実装はよくないが、それについてはやれることがたくさんある。モバイルの実装もあり、多くの人々がSVGはよいからと、もっと相互運用ができてパワフルなものにしようとしている。
CSSだが、CSS 2.1にはCSS 1があらかじめ組み込まれている。CSS 2.0は巨大で複雑すぎてすべてをやり遂げることが誰にもできなかったため、CSS 2.1のアイデアは、実現可能なようにCSS 2.0を縮小すること。それは成功した。
その他の標準化として、DOM、Web APIはうまくいったと思っている。やることがあるとすれば、よりよくすることと、より標準化することだ。
一方、先ほどいくつか成功したといったが、どれが成功してどれが失敗したと明確になったわけではない。なぜなら、開発は人々がやりたいことの数だけあるからだ。やりたいことが出てくるたびに実装を繰り返すことになる。
ECMAでOperaやMicrosoft、Mozillaが、新しいバージョンのECMASciript 4(JavaScript 2)の策定に関わっているが、これらは中間期にある。草案に対して、個々に異なった実装をしているため、見た目はうまく動いているように見えるが、実装が異なっていることで最適化が難しい。また振る舞いが違うこともあり、みんなが一つの実装に納得するまで慎重に行う必要がある。
その他に取り組んでいるWeb標準の分野
その他にW3Cで取り組んでいるWeb標準の分野として、アクセシビリティのガイドラインや、モバイルWebのベストプラクティスが挙げられる。ここで行っているのは、物事をどうすると正しいのか、という指針を与えることだ。
結論からいうと、モバイルWebは時期尚早だ。活動がヨーロッパに集中しすぎている。
日本や韓国、先進国の多くは、携帯電話が非常にパワフルなため、Opera Mobileなどを利用して、普通にWebブラウジングできてしまう。しかし、ヨーロッパでは多くの人がとても基本的なブラウザを使用しているため、Webコンテンツの作成も非常に制限されており、例えば、古いドコモのchtmlのようなものでしか動かない。アプリケーションも、日本ではハイエンドなマシン向けに作られるが、ヨーロッパはパワフルではないため、そうもいかない。
つまり、ヨーロッパの携帯電話の多くはパワフルではないため、マーケットシェアもまだとても小さい。
なお、アメリカのモバイルWebはパワフルでとてもハイエンドであり、使い方はさらに本格的だ。仕事でも、家でも、運転中でも使う。
非国際化の問題
W3CとECMAは重要で大きな標準化団体だ。W3Cの長所として、とても柔軟で、とても早く、多くのオープンソースハッカーたちがいることが挙げられるが、構成員のほとんどを西ヨーロッパやアメリカの人々が占めるため、国際化の面で問題があった。
彼らは、日本人やアフリカ人がどのようにWebを使っているか知らず、多くの言語があることを理解していなかった。言語の違いは重要で、日本語、スペイン語、英語と、それぞれやり方は異なる。英語で書いたものをただ他の言語に訳したとしても、うまく動かないし、書き方にしたって、垂直のレイアウト、左右のレイアウト、それぞれ異なる。
だから、W3Cはそれらのことをもっと認識し、様々な国の人々をワーキンググループに巻き込まないといけない。
以前のHTMLのワーキンググループでは、アジアや南アメリカ、中東からの参加がなかった。世界の約半数を占めるアジア・中東を含まなかった影響は、非常に大きい。
ワーキンググループは、活動が早く、正しい方法を模索するのに効果的なため、早期の開発に非常に適している。またW3Cは、仕様を整理し、リリースが全世界的に適合しているかを確認するのに、よい場所だとも思う。オープンソースのブラウザを作成しているMozillaも、同じような歴史を辿っている。
なお、コミュニティを巻き込むのはとても重要だが、細部に注意して、みんなが望むものを確実にすることが最も重要だ。