激務な職場環境をぬって「やる気」をアピールし転職に成功
しかし、未経験からの転職はそう簡単ではなかった。書類審査が通らず、アピールできる経歴もなく、内定がなかなかもらえない状況に陥った。Rubyで自作のアプリケーションを開発したところ、なんとか3社から内定を勝ち取ることができた。そのうちの受託開発ベンチャーに入社したものの、創業5年で従業員数は6名、裁量労働制で給与は安く、原則出社という、人によってはやや黒い印象がある会社。それでもとりあえず開発経験を積みたいし、エンジニアとしての経験もほしい、そして客先常駐を避けたいという思いが入社の決め手になった。
空港予約システムや、業務実態可視化を目的とする入力ツールアプリ、旅行プラン作成サイトなど、開発案件は楽しく、フロントエンドもバックエンドも両方の開発の経験を積むことができた。とはいえ、未経験ではなかなか厳しく、修正方法も修正するファイルも、同僚エンジニアの話も、ググって出てくる単語すらもわからないだらけの日々。それでも「できることが増えていく感覚は成長している実感にもつながり、仕事は楽しかった。業務時間外で必死に勉強し、新しい知識が身についてくる感覚も楽しかった」と阿部氏は語る。
しかし、労働時間は長く、終電も度々で残業代は出ない。その上、同僚のエンジニアとの差を感じてネガティブになっていった。終電を逃してマンガ喫茶に泊まったり、深夜の食事がたたって10kgくらい太ったり、仕事内容は楽しくても、もっと良い環境を求めて、再び転職を決意することになった。
このときの転職時の苦労として、阿部氏は「平日が忙しすぎて、面接の時間がなかなか取れない。土日面接の会社が限られていたこともあり、平日の午前中にオンライン面接をしてから出勤するという生活を続けていた」と語る。さらにやる気を見せるために、アウトプットとしてQiitaに投稿するなどの努力を続けていたという。さらに"経験者"ということで面接では技術的な質問やコーディングテストを受け、これがなかなか難しく、わからないことも多かった。
そうした転職活動を経て、セーフィーに入社することになった。入社の理由は、サービスに興味を持ったこと、さらに売上や業績が伸びており、ちょうど上場するタイミングだったこともあった。さらに社員の話から環境の良さが伺え、使っている技術がマッチしたことも大きかった。しかし、入社して仕事および環境への悩みが晴れると同時に、今度はエンジニアとしての将来に対して「迷子」になったという。