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生成AI時代のエンジニア教育で重視すべきことは? ソフトウェア品質のプロ集団AGESTの城倉氏×高木氏に学ぶ

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生成AI時代だからこそ重視したい、知識を活用するまでの三段階

 最近のソフトウェア開発で注目を集めているのは生成AIの活用だ。ソフトウェア品質保証の面での活用について城倉氏に意見を求めると「生成AIは、新たに登場したツールの一つ」と語った。例えば、コードを手動で書くのが面倒であるため、生成AIで自動化を試みる。またテスト工程においても、技術を駆使して作業を効率化したいと考えるだろう。生成AIがエンジニアの仕事を奪ってしまうというわけでなく、エンジニアは、変化する仕事の枠組みの中で、どのようにAIを適応させるかが重要だというのだ。

 生成AIによる自動化は、中間の処理を明示しないため、インプットとアウトプットの関係性が中心となる。高木氏は「入力と出力をどのように制御するかが重要です」と説く。インプットに関しては、プロンプトエンジニアリングの手法を利用して、AIへの指示や供給する情報、チューニングのための設定値などを調整する力が必要。一方、アウトプットに関しては、その結果が正確であるかを判断する能力が求められる。いずれにしても、エンジニアは知識・経験を身につける必要がある。

 高木氏は、エンジニアはインプットを増やしていくことが重要であるとし、知識を習得して活用するまでの三段階を説明した。第1段階は、情報の「インプット」だ。一冊の本だけで全てを理解するのは難しい。多様な情報源からの大量のインプットが必要となる。これが知識を技能に昇華させるための基盤となる。AGESTには「AGEST Academy」という教育機関があり、レックス・ブラック氏など、アメリカ、アジア、ヨーロッパのトップエキスパートと業務提携を結び、質の高いコンテンツを社員に提供している。また、業界の最高峰の専門家たちと共同研究する「AGEST Testing Lab.」もある。

 第2段階は、知識の「アウトプット」だ。単にインプットしただけでは、それが身につかない。AGESTでは、輪読会でのディスカッションや、ライトニングトークなどでの発表を用意している。

 第3段階は「コラボレーション」だ。これは、互いに知識や技能を高め合うための場の提供である。輪読やライトニングトーク、そして当社のオフィス環境自体も、コラボレーションを促進するように設計されている。AGESTのオフィスには床に座って円を描きながら話せる場所やホワイトボードが随所に設置されるなど、コラボレーションを誘発する仕掛けが設けられている。

AGESTのオフィス風景。コラボレーションしやすい工夫が詰まっている
AGESTのオフィス風景。コラボレーションしやすい工夫が詰まっている

 さらに、個々のエンジニアの成長につながるような案件に意図的に割り当てできるよう、1on1ミーティングにも力を入れているという。高木氏は「エンジニア一人ひとりの成長を真剣に考え、外部からの働きかけ、そして環境の整備に注力しています。エンジニアが幸せになれるような取り組みを続けているのです」と説明した。

エンジニアの成長と組織の発展、両方に有効な「ある試み」とは

 しかし、環境を用意するだけで成長できるものだろうか? この疑問に対し、城倉氏は「やはりカルチャーが重要」と説く。

 「よく言われるように非連続な変化が求められる時代なので、新しいことにアンテナを張り、活用することが、成長するうえでも大切です。そのためには各個人の好奇心が必要ですし、それを醸成するためのエンジニアカルチャーが重要になります。上記のような環境を用意しているのもそのためです」(城倉氏)

 そうしたエンジニアカルチャーを作るために一役買ったのが、自社の品質メディア「Sqripts」だ。AGESTの事業であるソフトウェア品質だけでなく、開発、資格、アジャイル、セキュリティ、プロセス改善など多岐にわたる領域をカバーしており、エンジニアリングを向上させるために以下のような発信を行っている。

 城倉氏は、自社メディアの運営は、メンバー個人にとっても会社にとっても多くの利点があるとし「発信して反応がもらえると楽しさが増し、自主性が高まります。たとえば、ChatGPTが2022年の11月30日にリリースされたときも『すぐに記事を書くべき』と提案するエンジニアがいました。また、会社としては、適切な人材を発掘するのにも役立ちます。記事がきっかけで、関連した業務に抜擢されるようなケースもあります」と述べた。また高木氏もブログによって興味の範囲を広げてインプットを増やしていけることや、記事を書き上げることによる成功体験の積み重ねができる効果を挙げた。

 現在ではこうした利点も実感できるようになったが、最初は苦労も多かったという。そもそも何を書けば良いのか分からないうえ、企業として発信するうえでの責任もある。加えて書き手であるエンジニアは案件を抱えているため、継続的な運営が難しい。

 AGESTではこうした課題に一つ一つ向き合い、継続的に改善していった。例えば企画会議を開いてある程度企画が固まったものをエンジニアに書いて貰えるようにしたり、記事のレビュー体制も構築したりした。また運営に関しては事務局を設置し、記事のプロジェクトマネジメントを行うようにした。

 ここまで継続的に改善できたのは経営層の理解も大きいと高木氏は語る。経営層がコミットしているなら、メンバーは安心して活動を展開できる。ちなみに、高木氏も上記のレビュー体制に加わっている一人だ。

 最後に二人は、これからのエンジニアのスキル習得について、以下のように述べた。

 「今後は『質』の時代となると感じています。例えば、AIのアウトプットを正確に評価することなども、質の良さを見極める視点が必要です。しかし、人は簡単に高い質を持つことはできません。初めは量をこなし、その経験を通じて、質の追求につなげていただきたいです。私たちの会社、AGESTは、インプットの機会とアウトプットの場を多く提供しています。ぜひ一緒に取り組んでいただきたいです」(高木氏)

 「エンジニアにとって、学びは非常に重要です。これからはAIの時代が進行していくでしょう。しかし、AIが台頭するからといって、私たちの取り組みが根本的に変わるわけではありません。技術をしっかり学び、その学びが正しいのかをアウトプットし、他の人と共有する。このプロセスを繰り返すことで、技術スキルの向上を目指します。少しでもAGESTに興味を持っていただけたなら、ぜひ足を運んでみてください」(城倉氏)

Sqripts | エンジニアリングを進化させる品質メディア

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

篠部 雅貴(シノベ マサタカ)

 フリーカメラマン 1975年生まれ。 学生時代、大学を休学しオーストラリアをバイクで放浪。旅の途中で撮影の面白さに惹かれ写真の道へ。 卒業後、都内の商業スタジオにカメラマンとして14年間勤務。2014年に独立し、シノベ写真事務所を設立。雑誌・広告・WEBなど、ポートレートをメインに、料理や商品まで幅広く撮影。旅を愛する出張カメラマンとして奮闘中。 Corporate website Portfolio website

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社デジタルハーツホールディングス

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