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Women Developers Summit 2023 セッションレポート(AD)

「技術に自信が持てない」……入社7年目の中堅エンジニアに訪れたキャリアの苦難、事業に携わって見えた道とは

【A-3】悩んだからこそ見つけた、中堅エンジニアの私が事業貢献で大切だと思う3つのこと

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 ウエディングパークは、「21世紀を代表するブライダル会社を創る」をビジョンに掲げ、結婚に関連するさまざまな領域に特化した専門メディアを運営している。なかでも「Wedding Park DRESS」は全てのカップルが理想の衣装に出会える世界を目指したWebサイトである。同サイトのチーフエンジニアの髙嶋葵氏は、そのような事業に貢献する視点から、エンジニアとしての仕事を見つめ直した経験を語った。

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「技術に自信が持てない」……入社7年目、中堅エンジニアの悩み

 1999年設立のウエディングパークは、2004年に日本初の結婚式場クチコミサービスを開始し、海外挙式、ウエディングドレス、フォトウエディング、結婚・婚約指輪など、結婚に関連する各領域に特化した専門メディアを運営している。メディア事業に留まらず、式場向けノーコードツール、デジタル広告、DX推進、オンラインスクールなどを通じて、デジタル技術を駆使し、ウエディング業界の発展を支援している。業界としては、コロナ禍の中で結婚式数は減っていたが、現在は徐々に回復している状況だ。

 登壇した髙嶋氏は、2017年にウエディングパークに入社し、広告運用チームでの開発を経験。その後、2020年にWedding Park DRESSのチーフエンジニアに就任した。コンテンツのリニューアルやPHPのバージョンアップなど、サイトの開発全般を担当している。

株式会社ウエディングパーク Wedding Park Dress チーフエンジニア 髙嶋葵氏
株式会社ウエディングパーク Wedding Park DRESS チーフエンジニア 髙嶋葵氏

 髙嶋氏が担当するWedding Park DRESSは、全てのカップルが理想の衣装に出会える世界を目指しており、衣装探しを楽しむカップルとドレスショップの新たな接点を創出している。具体的には、結婚式場を決定したカップルが提携ショップで衣装を試着し、選択する流れをサポートしている。このサービスは、ショップに理想の衣装がない場合も含め、カップルに最適な衣装を見つける手助けをしている。

 Wedding Park DRESSでは、掲載されているドレスショップへの試着予約、衣装に関する問い合わせ、資料請求が可能であり、先輩カップルのドレスショップや衣装に関するクチコミも閲覧できる。さらに、ブランド、着られるエリア、衣装タイプなど多様な軸から衣装を探せる機能や、人気衣装のランキング閲覧機能も提供されている。

 髙嶋氏は、このサイトのリデザインを通じた学びの前提として、まずウエディングパークの「デザイン経営」について紹介した。これは、社会が本質的に求めているニーズに応える事業運営のことだ。ビジョンの実現に向けて、サービスや事業展開、組織構造、プロモーション戦略を検討しつつ、顧客や社会のニーズとのバランスを考慮した形で進められている。またそのために必要な考え方として「バックキャスティング」がある。運営上の課題を一つずつ解決する「フォアキャスティング」に対し、将来の理想の姿を描き、それを実現するために必要な大きなチャレンジを特定するアプローチである。

フォアキャスティングとバックキャスティング
フォアキャスティングとバックキャスティング

 Wedding Park DRESSでは「全てのカップルが理想の衣装にまっすぐに出逢える世界を実現する」をビジョンとして掲げ、その実現のためにサイトを大幅にリデザインする決断をした。髙嶋氏は「より大きなチャレンジをして、もっとより良いメディアにしていくべきだと考え、リデザインを決断しました」と語った。単に見た目の変更に留まらず、メディアの価値を再考し、サイトを根本的に刷新することにしたのだ。

 髙嶋氏は当時、ウエディングパークに入社して7年目の中堅エンジニア。リデザインを決断したものの技術に自信が持てないという悩みを抱えていた。社内の憧れのエンジニアが示す、技術を活用したシステム改善の提案に対しても、自らの技術力の不足を痛感していたという。周囲には技術に情熱を傾けるエンジニアが多い中、自身のエンジニアとしての存在意義に疑問を持つようになった。

 そんな中、「はたなに」という社内イベントで転機が訪れた。このイベントは、エンジニアとデザイナーが「働く」をテーマに、カジュアルにトークするもの。ランチタイムの約1時間を利用し、毎回エンジニアが2人発表する形式で月に1回から2回程度の頻度で開催されていた。なお、イベントが始まったきっかけは、2022年のWomen Developers Summitだという。

髙嶋氏の「はたなに」での発表内容
髙嶋氏の「はたなに」での発表内容

 「はたなに」に参加した髙嶋氏はそこで、働く意味やエンジニアとしての未来について深く考えた。そしてエンジニアとしての自己認識を新たにし、事業に貢献できるエンジニアとしての道を積極的に歩むことを決意した。

 「エンジニアっていうのは、たくさんの人を幸せにするものづくりができる、誇れる職業だと改めて思いました。ウエディング業界・ドレス業界を変えられるエンジニアは私達だけではないかと考えるようになりました」(髙嶋氏)

誰しも訪れるキャリアの苦難、乗り切るためには?

 髙嶋氏は事業貢献に大切だと思うことについて、Wedding Park DRESSのリデザインプロジェクトで行った3つのステップから学んだことを説明した。

 まず最初のステップは「社会の声を聞く」。サイトに関連するドレスショップや衣装を探しているカップルに価値を感じてもらえるものは何かをゼロから考えるプロセスである。これまでの業務ではWedding Park DRESSのサイトの改善に焦点を当てていたが、このプロジェクトでは制約を一切なくし、社会が本当に求める価値について深く考えた。

 そして、実際にクライアントとの対面での会話を通じて意見を聞いた。髙嶋氏自身が直接話をしたのは一部のドレスショップに限られるが、他のディレクターや営業メンバーも含め、担当が持ち回りでクライアントとの対話を行った。直接対面が難しいクライアントに対しては、オンラインツールを使用して会話をする者もいた。

 こうして社会の声を聞いた髙嶋氏は、衣装の在庫管理機能や試着予約が完結できる機能など、いくつかの新しいアイデアを考案し、「Figma」などのツールを用いてこれらの仮説を具現化し、ドレスショップやカップルに提案した。しかし、これらの提案に対しては、既に似たようなツールが導入されているか、やりたいけれど実現に難しい事情があるという反応が返ってきた。

仮説をもとに衣装管理サービスの提案をしたが、すでに導入されていることを知る
仮説をもとに衣装管理サービスの提案をしたが、すでに導入されていることを知る

 このプロセスを通じて、髙嶋氏は「ドレスショップの方に向き合ってみると、衣装の在庫や試着予約をどう管理しているか、基本的な業務について知らないことばっかりだったと反省しました。しかし、直接のヒアリングを通じて、ドレスショップやカップルが望む最高の一日を実現するための気持ちに共感し、また情熱を感じ、これまで以上に事業への熱が強くなったのを感じました」と話した。現在もエンジニアとしてパソコンに向かうばかりでなく、営業担当の顧客訪問に同行して改善要望を聞く活動をしているという。

 次のステップは「自分たちの考え、想いを言語化する」というプロセス。ここでは、入手した社会の声を基に、ウエディングパークとして何をすべきかを検討し、想いを言語化する作業を行った。髙嶋氏とチームは会議室で集まり、聞き取った声や調査結果、自分たちの実体験をもとに議論を重ね、課題・戦略・戦術を言語化したシートにまとめた。具体的な議論内容としては、提起された課題が本当にその原因なのかを深掘りし、真の課題を見つけ出す作業、カップルにとって良いものがクライアントやウエディングパークにとっても意味があるかを考える作業、そして提案された戦術が、本当に使いたいものかを再考する作業などが含まれていた。

 髙嶋氏はこれらの作業を通じてリデザインの方向性を明確にすることができたとし、「迷ったときに、シートを見返して議論ができるようになりました。また、自分自身が納得しした戦術だからこそ当事者意識も高まりました」と話した。

議論を重ね、課題・戦略・戦術のシートを作っていった
議論を重ね、課題・戦略・戦術のシートを作っていった

 3つ目のステップは「技術をつかって実現する」だ。これまでに考えた構想を具体的な技術によって実現する。髙嶋氏は、その前のステップによって、事業全体に及ぼす影響も考慮できるようになり、以前よりも広い視野で、将来的な運用を考えて設計ができるようになったという。

 「今までは実装のリスクや影響範囲の把握をしていました。そこにプラスをして、事業として何をしたらカップルやドレスショップさんに影響が出るかを考えられるようになっていました。この変化は、周りから言われて気づいたことです」(髙嶋氏)

 単に何かを作ることではなく、事業をより良くすることを目指すようになり、UIの改善や技術負債の解消など、プラスアルファでの改善を提案できるようになった。また、事業の視点から必要な技術を提案することの重要性を理解し、それを自身の憧れのエンジニアが行っていたことに気づいた。

事業貢献への視点が加わり、憧れのエンジニアに近づけた
事業貢献への視点が加わり、憧れのエンジニアに近づけた

 髙嶋氏は、技術が事業の目標を実現するための手段であり、より良い手段を選ぶことで事業の武器にすることができるという考えに至った。エンジニアとして自信を持てなくなっていた状態から、リデザインの取り組みを通じて前向きになることができたのだ。また髙嶋氏は、モチベーションの維持において「自分自身が納得しているかが重要」と述べた。誰しもキャリアにおいて困難な時期が訪れるが、そのような苦難の時を乗り切るためには、自分の仕事への納得感やモチベーションが大きく関わってくると、今回の体験から学んだという。

 最後に髙嶋氏は最も伝えたいこととして、「エンジニアという職種に限らず、さまざまな行動を取ることで、考え方や働き方が変わるという経験を得ました。職種に囚われることなく行動することが重要で、私はそれをエンジニアリングに生かしていくことが大切だと考えています。これからもこのアプローチを続けて努力したいと思っています」とコメントした。

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提供:株式会社ウエディングパーク

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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