キャリアを途切れさせない“学び”のための3つのポイント
そんな山崎氏は勉強するにあたって「一つ一つ徹底的に追い求めること」を重視しているという。そして、「IT技術者の生存戦略で実施すべきこと」として下記の3つを挙げた。
1)ソースコードの正当性
コーディング規約について徹底的に理解すること。ソースコードの複雑さをメソッド単位で数値にして表す指標で、ソフトウェア測定法の一つである「サイクロマティック複雑度(Cyclomatic Complexity:循環的複雑度)の考え方に基づき、システムの安全性に関わるソースコードの正当性を理解することが重要である。また、これに関するコーディング規約の書籍を複数読み込んで徹底的に理解したそうだ。
2)ネットワーク
「日経NETWORK」を3年間定期購読で申し込み、毎月届いた本を熟読した。さらに実機で理解できるまで、徹底的に実施していた。ネットワークについてかなりの知識を得ることができ、また実務につながることでもあるため、やって良かったと感じているという。
3)インフラと各ネットワーク
例えば、仮想でECサイトを構築することを想定し、サーバやネットワークの構築、アプリ、フレームワーク、データベースなどを用いて実装を理解していった。現在はAWSなど仮想環境が主流ながら、元々のベースとなる知識がなければ、実運用で使えないと考えた。山崎氏は「例えばRaspberry Piも結局Linux。知るという意味ではRaspberry Piはハードルが低いので、まずはやってみることが大切」と語った。
そして、山崎氏が「現在のマストな技術」と考えているのがセキュリティだ。ランサムウェアやトロイの木馬など、さまざまな侵入手口が登場する中で、システム構築で具体的な適用提案や設計ができるか、実務でやれるかどうかは、大きな差になる。「何か1つだけできる」ではセキュリティは担保できず、ユーザーにどう使わせるか、通信はどう設計して運用するのか、アプリケーションやミドルウェア、OSには何を適用し、どう設計・運用するのかまで、全てが大事になる。当然データベースにおける個人情報の保持も必要だ。
山崎氏は、「情報セキュリティの3要素である『機密性』『完全性』『可用性』には違反する要素が含まれる。提案・適用するには、すべての知識を網羅的に把握しておくことが必要」と強調した。
こうしたエンジニアの勉強について、山崎氏はこれまでを振り返り、「20〜30代の頃はOSや言語の乱立時代で、何が残るのかもわからない状態だった。不確実性は今も昔も同じ。ある程度、技術が成熟している今だからこそ、深掘りが可能となり、複数の専門性を持つことが最重要な価値となる」と語る。当然ながら、新技術・市場のアンテナを張る必要はあるが、新技術は礎となる知識を習得してこそ生きるもの。継続的な収入の安定性を考えるなら、市場に多く、かつ世の中に実務で困っている人の多い知識習得が最優先というわけだ。
山崎氏は、「我々IT技術者は日々アンテナを張り、精進の毎日。皆様のよりよい人生の一つの情報として、役立ててほしい。独立リスクを回避する方法がPE-BANKだと思うので、問い合わせてみてはどうか」と自身の経験談を締めくくった。
山崎氏の体験談を受け、八重倉氏は「エンジニアから、今後10年20年と食いはぐれずに仕事を続けることは可能かという相談を受ける」と語り、「山崎さんのお話のとおり、複数の技術に強いことが非常に重要」と語る。つまり、ある分野で一定程度深掘りできたら、その周辺分野で異なる技術を学ぶことが有効だというわけだ。
エンジニアのキャリアと学びをサポートする充実のラインナップとは?
そうしたエンジニアの勉強、スキルアップやキャリア設計において、PE-BANKはさまざま様々な取り組みを実施している。その1つが、PE-BANKが培った35年の経験やノウハウを活かし、2023年11月にスタートした教育・育成に特化した新事業「Pe-BANKカレッジ - エンジニアのためのネクストキャリア準備講座」だ。ビジネスプロフィール部の進藤氏は、「会社に属しているとどうしても、『一生エンジニア』という働き方が難しい場合がある。それも含めてエンジニアのキャリアに示唆を与える内容なので、ぜひ興味のある方は問い合わせてほしい」と語った。
またPE-BANKに未登録でもスキルアップ支援が受けられる「サポートプラス」では、登録はためらわれるという人や短期で試しに使うだけ使ってみたいという人でも、確定申告や健康診断、さらには資格取得までサポートが受けられるという。
そしてもう1つ、ITエンジニアがおさえておくべき業界動向について学び、語り合うイベントとして、「ProTechOne」が紹介された。毎年開催され、誰でも無料で最新の技術や情報に触れられる。2023年開催時には、マイクロソフトの千代田まどか氏、脳科学者の茂木健一郎氏に加え、有名なエンジニアも多数登壇し大盛況を博した。次回は2024年の6月頃を予定しており、4月頃にはゲストスピーカーも含め、詳細が発表されるとのことなので、興味のある方は参加してみるとよいだろう。
PE-BANKでは、フリーランスだけでなく正社員転職など、エンジニアの転職に関するさまざまな支援を行っている。ただ、日本ではフリーランスエンジニアの働き方についてハードルが高いというイメージが根強い。八重倉氏は、「相談だけでもいいし、ざっくばらんに当社の営業にお話いただき、今後のキャリア構築に役立ててほしい」と語る。実際、PE-BANKも会社の福利厚生と同等のサポートサービスが用意されているなど、フリーランスエンジニアの不安を払拭し、トライする機会を提供している。
最後に進藤氏は、「一度フリーランスになってみて、合わないと感じたら正社員に戻るというキャリアもあり、たくさんの選択肢がある。さまざまな働き方にチャレンジいただきたい。そして我々も、エンジニアの方に経験やスキルを向上させるための仕事を提供できるように頑張っていきたい」と語り、セッションのまとめとした。