Whatはどこにあるのか?
What(=顧客の課題)を見つけるには、顧客に聞く必要がある。自分の経験則はn=1のサンプルでしかなく、ビジネスになり得るような普遍的な課題であるとは限らないからだ。田中氏はCB INSIGHTSによる『The Top 20 Reasons Fail』の調査結果を紹介し、「スタートアップ(≒新規プロダクト)が失敗する理由のトップは『マーケットニーズがないものを作ってしまった』ことである」と強調した。
ベリサーブでは、これまでテストエンジニア当事者としての身近な課題から企画を始めており、市場ニーズはあまり意識していなかったという。例えば、テスト管理ツールの「QualityForward(クオリティフォワード)」は、当時Excelライクな操作性で、うまくテストを管理できるツールがなかったから誕生したものであり、テスト技法ツールの「GIHOZ(ギホーズ)」は、クラウドで軽量かつ複数のテスト設計技法をサポートしたツールが市場になかったから生み出したものだ。
冒頭でも紹介したが、田中氏はテストエンジニアではなく、当事者としての強いニーズもなければ、市場に受け入れられる確証もまったくない状態である。そのような中でもWhatを見つけるには、やはり顧客と話して探す“マーケットイン”アプローチにするしかない。
マーケットインのやり方は、書籍やブログを参照した。田中氏がさまざまな情報に当って分かったのは、みな共通して「インタビューによってCPF(Customer-Problem Fit)を検証しろ」「Burning Needsを見つけろ」と説いていることだった。
Burning Needsとは、髪の毛に火が付いて、すぐに消さなければならないような、切迫したニーズのことである。
このBurning Needsを見つけるため、田中氏はこれまでに60〜70社くらいのプロダクト開発に携わる人たちにインタビューを重ねてきた。インタビューを受けてもらう人は、これまでの知人・友人のネットワークで探したり、社内の他プロダクトの開発メンバーに協力を依頼したり。「ユニーリサーチ」や「トリマイン」といったオンラインインタビューのマッチングプラットフォームも活用しているという。
インタビューはオンラインで開催。プロダクトマネージャー、エンジニア、マーケター、セールスなどプロダクト開発に携わるさまざまなポジションの人たちに話を聞く。時間は30分程度〜長くても45分まで。YES/NOで完結するクローズドな質問ではなく、「プロダクト開発で一番困っていることは?」といったオープンな質問を投げかけることも忘れない。脱線を厭わず、無意識からこぼれ出る本質的なニーズをすくい上げることを大切にしているそうだ。
「理想的なインタビューのイメージを言えば、30分間ずっとインタビュイーに好きなことをしゃべってもらい、私は相づちを打つだけにしたい。だから基本的にインタビュー中はうなずいているだけだが、たまに相手の話を要約して、『こういう認識で合っていますか?』と確認を取る。これにより、勘違いによる思い込みを防げるし、そこから新たな話が広がることもあるので、メリットが多い」と田中氏は述べた。