メンバーができることは「不安と感じていること」を共有すること
もちろん、理想的には、マネージャーがプロジェクトの内部事情・外部事情を把握し、適切な判断ができればいいが、実際にはできていないことも少なくない。
武方氏は、「PM(プロジェクトマネージャー)はスーパーマンではない。分からないこともあるし、顕在化するリスクを見逃すこともある。そんなときこそ、メンバーが不足している部分を補えれば、チームとしては問題ないだろう。例えば、専門性の高い分野の知識、作業の中で得られた知識、過去の経験から得た知見、リアルタイムな進捗状況など、メンバーの方が詳しいことはたくさんある」と語る。
例えば、あなたが開発チームのメンバーだとして不安を感じているとすれば、それはプロジェクトのリスクの顕在化を、自身の経験や知見から察知していることになる。
つまり、感じているささいな違和感や不安が、炎上リスクのサインである可能性が高い。それも顕在化が近い、もしくは部分的に顕在化しているかもしれないというわけだ。これをリスクマネジメントに活かすには、「メンバーが自身の不安として感じていることを共有すること」が大切になる。
もちろん、自分が感じている不安が「単なる杞憂ではないか」という反論もあるだろう。しかし、一般によくあるリスクとして、過去の問題は今回もリスクになる可能性がある。また、一般的でないリスクとして、プロジェクト固有の条件や組織だからこそ起きる問題も存在する。つまり、経験から感じる不安は十分な根拠と言える。
そしてもう一つ、「自分が感じていることは他のメンバーも分かっているはず」との思いから、あえて言葉にする必要を感じないというケースもある。しかし、自分が指摘することで、他者も同じ不安を持っていることが判明すれば、確実性が高まる。つまり、共有することで、よりリスクを回避できる可能性が高まるというわけだ。
しかし、「不安を伝えると炎上を回避できるのでどんどん伝えよう」といっても、実際にはそう簡単にいかないもの。不安を感じても、楽観的に考えて不安を打ち消したり、口にすることなく済ませたりということも経験があるだろう。
また、「言い出しっぺ」になることで対応する責任が降ってきたり、チームとして考慮する必要が生じたり、「面倒になる」ことを回避しようという気持ちも働く。まして自分の責務でないところに口を挟むことで、「どう思われるか不安」という心理もあるだろう。不安を伝えるというハードルの先に「いいこと」があると分かっていても、ハードルが乗り越えられないでいるという状況だ。
メンバーの「不安」から顕在化前のリスクを察知するツール
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