「不安を共有すること」には、失敗しても成功しても意味がある
この「マイナスの意見を表明するハードル」は、時にプロジェクトへの不安よりも大きくなることがあり、そうなってしまうと自分が感じたことを共有することは難しくなる。こうした状況こそ「心理的安全性が保たれていない」と言える。なお、心理的安全性を提唱したエドモント博士は、この阻害要素として「①無知だと思われる」「②無能だと思われる」「③邪推をしていると思われる」「④ネガティブだと思われる」という対人リスクの不安を上げている。
それではこれらを乗り越えて、不安を伝えるにはどうしたらいいのか。そのための方法として、まず「乗り越えるためのエネルギーを与える=動機づけする」ことが挙げられる。つまり、不安を共有したことで、チームががんばってリスクに対応し、結果としてプロジェクトがうまくいって自分も楽になる……といった理解が進み、広がれば、不安を共有するモチベーションがアップする。
そしてもう一つ、乗り越えるハードルを低くするという考え方だ。不安を感じた時に、PMのところに行って話をするのはなかなかハードルが高い。いわば意志の力に頼って、行動を起こすことであり、再現性が高いとはいえない。そこで、習慣化やルーティンワークとすることで、それに乗ることで頑張らずに不安を伝えられるというわけだ。
とはいえ、これもまた理想論であり、心理的安全性は1日でかなえられるものではなく、そう簡単に不安を共有してもらえない。リスク対応が失敗すれば、なかなか成功体験につながらず、「言わなければよかった」と感じてしまうこともある。
しかし、一方で仮に対応に失敗しても、不安にチームで向き合うという経験が得られれば、「不安」を共有すれば、みんなで向き合って対応してもらえるという認知を育める。そうした一つひとつの積み重ねが、心理的安全性をつくる唯一の手段といえるだろう。また、失敗自体が学びとなり、これまで後手後手で対応していたものから、先手でのリスク対応の経験値を高めるものとなる。これはチームにとってはもちろん、個人の成長にもつながる。
武方氏は「不安共有に成功しても、失敗しても、不安を共有・受容して向き合うことで、心理的安全性が高められる。だから、成功するかは分からなくてもやっていくほうがいい」と語った。
各メンバーの「不安」と向き合い心理的安全性を高める
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