ガートナージャパンは、AIの価値を安全かつ大規模に展開する上でCIOが克服すべき4つの課題とその対応策を、10月28日から開催されている「Gartner IT Symposium/Xpo」の、オープニング基調講演にて発表した。
AIによる価値の実現を阻む課題として、同社は
- AIのビジネス上のメリットが常に実現するとは限らない
- AIのコストは制御不能に陥りやすい
- あらゆる場所で増殖するデータとAIが新たなリスクを生む
- 従業員のパフォーマンスとウェルビーイングに、AIはポジティブにもネガティブにも影響する
の4つを挙げている。
「AIのビジネス上のメリットが常に実現するとは限らない」では、世界のデジタルワーカーが生成AIの活用によって、週平均3.6時間の節約を実現している一方で、すべての従業員が生成AIによって同じメリットを得られるとは限らず、業務の複雑度と経験値のレベルによって異なると指摘する。
その上で、加速的なペースでAI施策を推進している組織は、生成AIについて生産性以外のメリットにも着目しており、オペレーションレベルでは主要なビジネスプロセスの自動化や、業務の再設計によるチャットボットの組み入れといった改善、ビジネスレベルでは新しい収益源の創出、ビジネスモデルの再構築といった変革を挙げている。
「AIのコストは制御不能に陥りやすい」に関しては、日本におけるCIOの95%以上が、AIから価値を引き出す際の阻害要因としてコスト管理を挙げる一方で、生成AIのコストが増大しやすいことをCIOが理解していない場合、見積もりと比較して500〜1000%の誤差が生じる恐れがあると指摘する。
「あらゆる場所で増殖するデータとAIが新たなリスクを生む」では、企業内のあらゆる場所でデータやAIの活用が増えたことで、IT部門がそれらを集中管理できなくなっていると指摘し、データアクセスを管理してAIのガバナンスを確保し、安全にAIの価値を実現するための新たなアプローチが必要であると訴えている。
具体的な方法としては、増え続けるデータとAIを上下のパンの部分に配置して、その他を挟み込む「AIテクノロジサンドイッチ」を例に、あらゆるところからやってくるデータやAIの間に、TRiSM(トラスト/リスク/セキュリティ・マネジメント)テクノロジを挟み込むことによって、AIの安全性を確保できるという。
「従業員のパフォーマンスとウェルビーイングに、AIはポジティブにもネガティブにも影響する」では、従業員がAIに対して恐れや憤りを感じる可能性を指摘し、そういった複雑な反応が「AIを使いこなす人に嫉妬する」「AIツールに過度に依存する」といった、従業員のパフォーマンスへの悪影響に対する懸念を示している。
一方で、多くの組織は生成AIが従業員のウェルビーイングに与える、潜在的な悪影響を軽減することに注力していないことから、行動の成果に対して誰が責任を持つのかを意識し、テクノロジやビジネスの成果と同様に1人ひとりの行動がもたらす成果を管理する必要があると訴えた。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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