エンジニアリングマネージャーとは何か? その進化と本質
広木氏は、2008年に株式会社ミクシィに入社し、アーキテクトとして技術戦略や組織構築に携わった。その後、同社のメディア開発部長、サービス本部長執行役員などを歴任。現在は株式会社レクターを創業し、技術と経営をつなぐ技術組織のアドバイザリーとして、多くの企業の経営支援を行っている。さらに、一般社団法人日本CTO協会の理事や朝日新聞社の社外CTOを務め、著書に『エンジニアリング組織への招待』(技術評論社)がある。

広木氏はエンジニアリングマネージャー(EM)の変遷を振り返る。かつてEMは「エンジニアの管理職」として曖昧に位置づけられ、技術を追求したいエンジニアから敬遠されがちだった。しかし、2018年頃から日本でもEMの概念が広まり、職務やスキルセットが明確化。EM Meetupやポッドキャストなどのコミュニティ活動が活発になり、2019年に開催された大規模カンファレンスには700名以上が参加した。
この流れを一過性のブームで終わらせず、エンジニアリングマネジメントを体系化し、知識として確立することが重要だと指摘。ソフトウェアを中核とする経営が加速する中で、技術マネジメントの重要性が高まっており、その知識体系の整備が求められていると述べた。
また、エンジニアリングとは「曖昧な構想を具体的なソフトウェアへ落とし込む試行錯誤の過程」であり、その本質は不確実性との対決にあると説明。この不確実性に対処する鍵として、「フェイルファスト」の原理を挙げた。

そのうえで「フェイルファストは単なる失敗の許容ではなく、リスクを早期に暴露することが目的」と強調。テクノロジー企業ではこの原理が文化として根付いており、課題を共有し学び合う風土や、短い開発サイクル、シフトレフトによる早期エラー検出などにつながっていると述べた。