一部の仕事が代替されることで、エンジニア組織が変わる
なお、エンジニアリングマネジメントにおいて、4つのPが完璧である必要はなく、重要なのは、価値を実現するために「なんとかすること」だと広木氏。自分ひとりですべてをこなす必要はなく、必要なものを理解し、適切に調達することが求められる。そのために、自らが「できる」必要はないが、何が起きているか「わかる」ことが不可欠だ。
続いて、生成AIの進化がエンジニアリング組織やエンジニアリングマネージャーに与える影響について言及した。ソフトウェアは歴史的に簡単になり続ける一方で、複雑性が増し、適用領域も広がっていると分析し、生成AIの登場も同様の変化をもたらすと指摘する。労働力が減少するなかで、コンピュータに多くの作業を任せる流れが加速すると予測した。
コンピュータが人の仕事を代替するにつれ、人が関わる業務は、単なる運営から成長、さらには変革へと移行していく。同質的なチーム構成ではなく、異なるスキルを持つメンバーとの協業が不可欠になり、エンジニアリング組織の在り方も変化していく。
広木氏は、自身が現在AIエージェントとともに行っている開発経験を踏まえ、AIに指示を出し、課題を整理する作業がマネジメントに近いと述べる。今後、全てのエンジニアがAIをメンバーとして扱うマネージャーになり、人間は目的設定と意思決定を担い、AIが実装や提案を行うサイクルへと移行していくのだ。
広木氏は、自著「エンジニアリング組織論への招待」のタイトルに込めた意図についても言及した。従来、エンジニアが指示を出す対象はコンピュータだ。それが執筆当時はクラウド技術の発展により、一瞬でサーバーという「部下」を用意できる時代となった。これからは、同じようにAIという「部下」が抽象度の高い指示で動作するようになり、コンピュータと人間を区別しないシステム設計や組織設計が主流になる可能性が高い。
ソフトウェアアーキテクチャと組織には共通点も多い。今後、それらを統合する理論が生まれると考え、その入口として「招待」というタイトルをつけたという。
最後に広木氏は語った。「私たちのロードマップは『アーキテクチャと組織の統一』を目指すことになる」
