外部エンティティ
外部エンティティは、分析対象の業務やシステムの外部にあって、データの入力元や、データの出力先となりえる対象です。人であったり、組織であったり、社内外に存在するシステムであったり、物理的なものの置き場所だったり、仮想的なものの置き場所だったりします。実質的には先述のデータストアと同じですが、DFDが取り扱う対象の外部にあるものとして明確に区別する際に使用します。
分析・設計対象から見て、データが生み出される発生源であったり、加工・生成処理をした結果のデータが最終的に吸い寄せられる終着点であったりするところから、外部エンティティのことを「源泉と吸収」と呼ぶこともあります。

外部エンティティは、四方が閉じた矩形(四角形)で表現します。外部エンティティからプロセスに向けて入力を表すデータフロー、プロセスから外部エンティティに対する出力を表すデータフローのいずれか、あるいは両方を必ず持ちます。データフローによる接続のない外部エンティティは、利用されない外部エンティティであり、存在意義がありません。
また、外部エンティティから外部エンティティへデータフローが直接接続されることもありえません。必ずプロセスを介して接続されます。

「外部」という名称のとおり、DFDで分析、設計を表現する対象の外に存在するものですから、内と外という意識の下で使い分けます。UMLのユースケース図では、「境界」を表す四角の囲みを使用することがあります。DFDにおいても同様に「境界」を表現することは禁止されていませんが、境界を描かなくても、外部エンティティを使用した表現の時点で、外部エンティティとその外部エンティティにデータフローで接続したプロセスとの間が、「境界」であることは自明です。
データフロー
データフローは、データの「流れ」です。矢印の向きは「どこからどこへ向かうか」であって、そのデータを扱う主体・客体の関係ではありません。ですから、プロセスから見て、データを受け取る場合であっても、データをとりにいく場合であっても、矢印の向きは同じです。

データフローは実線の矢印で表現します。矢印を表す線は、直線であっても曲線であっても構いません。DFDが複雑になると、記号配置の都合上、データフローの矢印がほかの記号と重複や交差が発生する可能性が出てきますが、そうした表記は極力避け、別々のDFDに分解するといった工夫を心がけましょう。次の図のように、同じ意味を示すDFDも、データストアやプロセスの配置の工夫によってデータフローの交差を回避することができます。

原則として、データフロー以外の記号同士を接続するために使用します。始点または終点にほかの記号が存在しない表現を禁止しておらず、DFDについて解説しているトム・デマルコの著書『構造化分析とシステム仕様』の中でもデータストア、プロセス、外部エンティティのいずれかが必ず存在するように表記します。
データフローの矢印に付与する文字は、そこに流れるデータを具体的にイメージできる名称を付与します。また、データフロー上を流れる実際のデータフォーマットをそのまま表現するのは、図解スペース的にも困難であるため、別途整理する「データディクショナリ」を参照するうえでわかりやすく一意であるような名称を付与します。
データディクショナリにおいて、データフローの詳細はいわゆる「インターフェース仕様書」に相当する情報となります。