人間がボトルネックに?生成されたコードのレビューが課題
生成AIはソフトウェアの開発現場に突然仲間入りした謎の大型新人のようだ。仕事は早いものの、中身が本当に正しいかは微妙。成長や変化が著しく、どう扱うか、どんな仕事を割り振ればいいのかみんな戸惑っている。
ギットハブ・ジャパン合同会社 シニア カスタマーサクセス アーキテクト 服部佑樹氏は、2016年から日本マイクロソフトでDevOpsやクラウドのアーキテクトなどを経験し、今はGitHubでAIやオープンソースに携わっている。また、企業にオープンソースの透明性や文化を普及させるための非営利団体InnerSource Commons Foundationのプレジデントや、独立行政法人情報処理推進機構の専門委員(オープンソース)も務めている。
服部氏は、生成AIの現状とともに生成AI時代のエンジニアの在り方について語った。

生成AIは、コーディング作業の省力化に大きく貢献している。生成AIが世の中に広まった当初は、主にコーディング支援ツールとして使われていた。しかし、今ではバイブコーディングと呼ばれるように、人間と対話しながらより自立的にコードを生成することも可能となった。
今や生成AIを活用することで、非エンジニアでもリクエストすればそれなりのコードを作れる時代となった。新人や初心者であればバイブコーディングで生成されたコードを見て学ぶこともできるので、生成AIは先輩や師匠にもなりうる。
また、知識を引き出す場面でも生成AIは人間をサポートしてくれる。これまでの検索ならキーワードが正確でないと探せなかったが、曖昧な記憶をもとにした質問でも察してくれて一般的な情報なら答えられるほど博学である(ただしたまに間違ったことも言うので注意が必要だ)。
特にスタートアップのように新しい機能を次々と作るような環境では、生成AIを活用することで、試行のサイクルを早められるので効果的である。それにAIが生成したコードなら、ちょっとしたスペルミスでプッシュバックされることはなく、形式的に整ったコードを生成してくれることも多くなってきた。
コードを早く大量に生成できるのはいいが、その分、人間にはレビューのタスクが増えてしまった。現時点で大きな課題となっているのは、コードレビューをいかにさばいていくかではないだろうか。
コードレビューができる機能を持つ生成AIやAIエージェントもある。将来はコードレビューすら、何らかのAIの仕事になるかもしれない。ただし現時点ではレビュアーに渡す前のコード整形程度で工数削減には寄与するものの、まだ完全とは言えない。
服部氏は「プロジェクトの特性、あるいはアーキテクチャ全体を考慮するならこうすべきとか、保守の都合などで一般的ではないけどうちのチームではこういうシンタックスで書いたほうがいいとか、そうした人間が求める個別の差異を考慮に入れた、柔軟なレビューは現時点での生成AIでは難しい」と言う。
配慮すべきことはプロンプトに盛り込めればいいが、なかなかそうはいかないのが実情だろう。やはり都度、臨機応変に人間が配慮しなくてはいけないことはある。そうなると「人間は、レビュアーとして高度であることが求められてくる。また人間のレビューがボトルネックにならないようにする必要がある」と服部氏は言う。