エンジニアが事業に貢献するための4つの軸「CODE」
佐藤氏は、エンジニアが事業に向き合うために必要な要素を「Connection/Organization/Domain/Engagement」の4つに整理し、頭文字を取って「CODE」とした。この4軸を理解することが、エンジニアが事業視点を獲得する第一歩になる。
最初の軸である「Connection」は、事業とエンジニアリングの距離を縮めるための視点である。業務の中でコードを一行書いたとしても、それが事業価値にどの程度寄与したのかを直接把握することは難しい。そこで佐藤氏は、まず事業活動を測定する「指標」への理解が必要だと強調する。
事業には必ず売上・LTV(顧客生涯価値)・注文単価といったKPIが存在し、それらを構成する先行指標が複雑に連鎖している。一方で、エンジニアリング側の指標は開発工数、人件費、インフラコスト、生産性などが中心である。そして、これらが販管費や原価として計上され、売上・利益に到達するまでには、多くの因子を経由する。この構造的な「距離」は、エンジニアリング活動が他部門から過小評価されたり、事業フェーズと優先順位が噛み合わなかったりといったズレを招く。
ゆえに佐藤氏は、まず会社全体の目標構造──経営ビジョン、売上目標、プロダクト目標、チーム・個人の目標──を俯瞰し、日々の改善活動をその体系に結び付ける重要性を説く。「日々の活動は事業貢献そのものだ。デイリーの活動がスプリント、プロジェクト、プロダクト、戦略、そしてビジョンへとつながる。それらが指標に反映され、全部つながって初めて事業に貢献できる」。
2つ目の軸「Organization」は、企業というシステムそのものへの理解である。営利企業は「資金を集め、投資し、利益を上げる」という循環で動いており、財務指標はその活動を記録した「ログ」と捉えられる。仕訳データというイベントが積み重なることでBS(貸借対照表)やPL(損益計算書)が形成される。この構造を理解するだけでも、企業活動の流れが俯瞰しやすくなるという。
また組織も、ビジョン策定、戦略立案、予算計画、実行、評価というサイクルで運営されており、経営層から事業部、チームへと縦方向に整合されることで、初めて「組織」としての機能が成立する。
企業のフェーズによる違いも重要だ。スタートアップ企業には圧倒的な成長速度が求められるため、ときには赤字覚悟で投資を続けることもある。一方でエンタープライズ企業は持続的成長と安定性を重視する。「この違いは、優先順位に顕著に表れる」と佐藤氏は述べる。特にスタートアップでは、「1日でも早く機能を出すこと」が最優先になるため、人材育成や生産性向上への投資は後回しになりやすい。
加えて佐藤氏は、「人材育成の成果やROI(投資利益率)を正確に測定することはほぼ不可能だ」とも話す。そのため育成投資は経営の思想に依存しやすく、方針が一致しないと摩擦を生む。
一方で、人材育成が醸成するブランド、特許などの知財、技術、文化といった「目に見えない価値」が、企業価値に寄与しているのも事実だ。エンジニアリングも、まさにそこに接続している。財務指標だけでは測れない領域だが、投資判断はどうしても、企業のフェーズや財務状況に大きく左右されるのである。
