「やりたくないこと」にこそ可能性がある。マネジメントがもたらした成長記録
赤坂幸樹氏はany株式会社に所属し、エンジニアリングそのものを「楽しい」と語る生粋のプレイヤーだ。多様な課題に向き合い、成長し続けられるこの仕事にやりがいを感じてきた赤坂氏にとって、マネジメントの役割は「できれば避けたい」ものだった。
そんな赤坂氏がマネジメントを任されたのはエンジニア4年目のときだ。後輩への技術支援を行うなかでチームが拡大し、先任者の異動を機にプロジェクトマネジメントを引き継ぐことになった。しかし、本音は「コードを書き続けていたい」。時間管理や調整業務、責任の重さと向き合う役割には、正直なところ抵抗があったと率直に明かす。
それでも引き受けたのは「仕事が好きで、チームメンバーも好きだったから」だ。任された以上は、やり切る。その覚悟が、結果として新たな視座をもたらした。
赤坂氏が担ったのは、主にプロジェクトマネジメントである。スケジュール設計、タスク配分、ゴール設定。その本質を「情報の交通整理」と表現する。
プロジェクトが遅延する原因の多くは、技術力不足ではなく情報の分断にある。なぜこの機能を作るのか、ビジネス側の目的は何か、優先順位はどこにあるのか。これらが十分に共有されないままでは、各自が最善を尽くしても方向は揃わない。
そこで赤坂氏は、まずビジネス側の意図を丁寧に咀嚼し、目的と優先順位を明確化した。その上で、背景も含めてメンバーに伝えるよう努めた。目的が共有されたことで、メンバーは自ら緊急度を判断して提案を行い、主体的に動き始めた。単なる進捗管理ではなく、チームが同じ方向を見るための「設計」こそがマネジメントの役割であると体得したのだ。
この経験は、自身の技術観にも影響を与えた。個人のタスクだけでなく、コードがプロダクト全体に与える影響を意識するようになったという。全体最適の視点が身についたことで、1人が奮闘する「ヒーロー型」の働き方から脱却し、個々の強みを掛け合わせる「協働」へと意識が変化した。純粋なコーディング力だけでは得られない「開発を前に進める力」を身につけたと、赤坂氏は振り返る。
「もし一人でPCに向き合い続けていたなら、コーディング能力はさらに向上したかもしれない。しかし、チームを動かす力や全体最適を設計する視座は得られなかっただろう。自分の“やりたいこと”の外側にこそ、未知の可能性が広がっている」。赤坂氏はそう語り、今向き合っている「やりたくないこと」が未来への投資になり得ると示した。
生成AIの登場により開発現場が変化するなか、周囲を巻き込み目的を共有する「協働する力」は重要性を増している。赤坂氏がマネジメントを通じて体得した全体最適の視点や情報の整理力は、AI時代においてもエンジニアの底力を支える武器となるだろう。技術だけでなく人と向き合い、チームを前進させる力こそが、U35エンジニアがこれからの時代を切り拓く鍵である。
