作業時間は大幅に短縮され、サムネイルを目視でチェックするストレスからも解放
──この写真選定システムは、現在どのように運用されていますか。
餌取:昨年末ごろからテスト運用を始め、2月に開幕した明治安田J1百年構想リーグから本格的に公式戦の現場で使い始めました。現在(2026年5月中旬の取材時点)では6~7回ほどのホームゲームが行われており、試合ごとにカメラマンさんが写真をアップロードする形で運用しています。
──システムの導入によって広報現場の負荷はどれくらい軽減されましたか。
餌取:担当者にヒアリングしたところ、目的の写真を探してダウンロードするまでの作業時間は体感で3分の1程度に短縮されたとの回答がありました。写真の読み込みが早く、ほしいシーンもタグ検索によって抽出しやすくなったと喜ばれています。また、写真の判定も安定しており、複数選手の検索精度も以前と比較して向上したと聞いています。ピンボケの判定や選手検索、フィルター機能のおかげで、担当者がサムネイルを目視で追いかけるストレスも大幅に軽減されたようです。
また、検索の精度が安定したことで「誰でも同じクオリティで写真を選べる」ようになり、現在は広報担当者だけでなく、ほかの部署のスタッフもアクセスして利用できるように展開を進めています。
──FC東京以外への横展開も検討されていますか。
數藤:はい。バスケットボールチームの千葉ジェッツでも実際にテスト運用を進めています。バスケットボールならではの要望として、通常のシュートとスリーポイントシュートを見分けて認識させたいという話があり、AWSさまと一緒にプロンプトの調整を行いました。やってみると「投げ方」や「コートのライン」を捉えて、おおむね合っているという高い精度で分類できたので予想以上の成果がありましたね。
さらに、当社が運営しているFC東京の公式デジタルトレーディングカードゲームのチームからも、試合後に活躍した選手のベストショットを早く選びたいという要望があり、このシステムの活用が予定されているところです。
さまざまな情報と組み合わせて、画像認識精度の向上を目指す
──運用を通して見えてきた改善点や、今後追加する予定の機能について教えてください。
數藤:アップロード処理の高速化は進んでいます。システムをリリースした当初は1万枚の写真をアップロードしてデータベース化するまでに約3.5時間かかっていましたが、通信プロトコルを改善し、並行して処理できる数を強化したことで、現在は2時間弱にまで短縮できました。今後はこれを1時間以内に収めることを目標に改善を続けています。
また、現在は画像内の情報だけでAIが識別しており、試合の流れなどの文脈はわかりません。例えば、同じ「歓喜のシーン」であっても、それがゴール直後の瞬間なのか、それとも試合終了のホイッスルが鳴った瞬間なのかは、画像だけでは判別できないのです。
今後は、Jリーグなどが配信している「試合のテキスト速報データ」や、選手やチームのプレーを分解し、各項目を数値化して統計情報としてまとめた「スタッツ情報」とシステムを連携させ、写真の撮影日時と組み合わせることで、「誰がパスをして、誰がゴールした瞬間なのか」まで自動判定できるよう、精度を上げていきたいと考えています。また、これまでに公開した記事のデータを活かして「この記事として掲載するなら、この写真がおすすめ」とAIが提案してくれる機能も試していきたいです。
加えて、ユニフォームのスポンサーロゴ認識についてはさらに強化していく方針です。すでに千葉ジェッツで先行してテストしているのですが、社名やロゴのマークをあらかじめAIに特徴としてインプットしておくことで、かなり正確に写り込みを判定できるようになっています。広報写真としてはもちろん、営業担当者がスポンサー企業さまへ「これだけロゴが露出しました」と報告する営業資料にも活用できるため要望が多く、近いうちにFC東京でも本格導入する予定です。
餌取:広報現場でのさらなる効率化としては、顔認識の精度を保つための「人物登録」の手間を減らしたいですね。毎シーズン、所属する大勢の選手それぞれの写真を、さまざまな角度から複数枚登録する必要があり、運用面でのコストになっています。ここも機能を改善し、運用の負担をより軽くできたらいいなと思っています。

