Stroustrup氏の回答~2:「ソフトウェアの発展に対する本質部分の議論は軽視されている」
I think too little emphasis is placed on the documenting the history of programming languages and the fundamental parts of our software development culture. Software is fundamental in our modern world, yet the work on fundamentals is so poorly documented that complete ignorance is almost standard and weird myths are common. For example, I recently tried to find photographs of the designers of the major programming languages. This turned out to be unexpectedly hard: even the Computer History Museum didn’t have a complete "set" of decent photos of the designers of the major languages. The history of hardware seems to be better understood and better documented.
プログラミング言語の歴史を記した文書が注目を浴びることはほとんどありません。ソフトウェアの発展は文化の進化という面を併せ持っていますが、その本質部分の議論は軽視されています。ソフトウェアは現代社会を根底から支えています。
しかし、この事実が分かりやすく説明されることはなく、ほぼ完璧に無視されています。結果、なんとも言いようのない神話が世にはびこっています。
私は最近主要なプログラミング言語の設計者たちの顔写真を入手したいと思い立ちました。驚いたことに、簡単に入手できないではありませんか! コンピュータ歴史館(Computer Histroy Museum)にさえ手頃な写真が揃っていません。ハードウェアの歴史を分かりやすく記したドキュメントは、それなりに揃っている印象を受けるのですが。

対話のポイント:ソフトウェア業界の現状に危機感
「ソフトウェアは現代社会を支えているが、そのことは完璧に無視されている」世界のIT業界を20年以上に渡り先導してきたC++設計者がこのような認識を持っていることに、筆者は正直、驚きました。
筆者の周りには、パッケージソフトを開発・販売している人たちがいます。彼らは日夜頑張りながら、「ソフトビジネスは難しい!」と異口同音にため息をつきます。40年以上に渡りソフトハウスを経営してきた人もいます。「そろそろ会社経営をご子息に譲るつもりですか?」「いいえ。継がせる予定はありません!」
Stroustrup氏が言うように、ソフトウェアが果たしてきた役割が完璧に無視されているとすれば、論理的には、ソフトウェア業界は成長しないことになります。業界にいる私たちの地位も向上せず、ビジネス収益も上がりません。また、有能な人材も集まってくれません。筆者の友人の「継がせる予定はない」という発言もこれに起因しているのかもしれません。これでは困ります。
Stroustrup氏の発言内容を何度も何度も読み返してみると、”説明責任”や”説明能力”という文字列が浮かんできます。同氏のいろいろな論文に目を通していると、「夢を実現するために、活動内容を積極的にアピールしよう!」などと、国際標準化委員会などで同席する知人や友人たちに呼びかけている文章に出会います。Stroustrup氏は現状のあり方に危機感を抱いている印象を受けます。発言文にあるweird myths(言いようのない神話)は、具体的にどのような事象を指しているのでしょう。weirdは好ましい単語ではありません。機会があればお聞きしたいと思います。
Stroustrup氏は現在C++入門書を執筆中で、次回はその入門書の特徴や執筆動機などを伺う予定です。同氏は市販されているC++関連図書に、常々不満を述べていました。現状のコンピュータ教育そのものへの不満もたびたび表明されています。C++設計者自らが書き下ろす入門書はいったいどのようなものなのでしょうか。C++入門書を書くことは、Stroustrup氏にとっては”説明責任”を果たす一環であり、重要な意味を持っています(参照ページ:豊田孝の「C++の学び方」)。執筆中のC++入門書は1,000ページを超える大著といわれます。その大著にはどのようなメッセージが含まれるのでしょう。お楽しみに!
