はじめに
アプリケーションをさまざまなロケール(言語や地域)で利用できるようにすることを「国際化」と言います。国際化されたアプリケーションを、実際に特定の言語や地域で利用できるようにすることを「地域化」と言います。
国際化・地域化の対象は、大きく分けて次の2つです。
- 日時や通貨・数値
- メッセージ文字列
日時や通貨・数値については、『I18Nv2による日時と通貨・数値の表記国際化』で解説しました。
本稿ではメッセージ文字列を扱います。ここで紹介する手法を取り入れたウェブアプリケーションは、クライアントのロケールにあった形式でメッセージ文字列を表示することができます。たとえば、ブラウザの言語を英語にしてアクセスすると「Hello Taro YABUKI!」、日本語にしてアクセスすると「こんにちは、Taro YABUKI。」と表示するようなウェブアプリケーションを作ります。
必要な環境
XAMPP for Windows 1.6.4に含まれるPHP 5.2.4で動作を確認しました。利用したPEARのパッケージは以下の通りです。
- Translation2 ver.2.0
- File_Gettext ver 0.4.1
- I18Nv2 ver 0.11.4
準備
必要なパッケージを次のようにインストールします(コマンドの実行前に、c:\xampp\php\pear.iniの「"\xampp」を「"C:\xampp」に修正)。File_GettextとI18Nv2はβ版なので、-beta
を付けています。
c: cd \xampp\php pear install Translation2 pear install File_Gettext-beta pear install I18Nv2-beta
Gettextのためのツール群は、Cygwinに収録されているものを利用します。Cygwinの開発環境を用意してください。coLinuxやandLinuxでapt-get install gettext
のようにしてgettextをインストールしてもよいでしょう。
Gettext
Gettextはメッセージ文字列を国際化・地域化するためのフレームワークで、次のような手順で利用します。
- コーディング(コード中にはメッセージ文字列ではなくメッセージIDを記述する)
- ソースコードからメッセージIDを抜き出し、翻訳のためのテンプレートを作る
- テンプレートを元に、ロケールにあわせたメッセージカタログ(POファイル)を作る
- メッセージカタログをバイナリファイル(MOファイル)に変換する(不要な場合もある)
この方法には、開発者と翻訳者が役割分担をしやすくなるというメリットがあります。一度テンプレートを作ってしまえば、開発者と翻訳者は別々に作業することができるのです。翻訳者が作業している間にソースコードが変わって、翻訳対象が増えるというのはよくあることですが、そのような状況に対応するためのツール(msgmerge)が用意されています。
このようなメリットがあるために、gettextは事実上の標準と言っていいほど普及しています。本稿で利用するTranslation2は、gettext以外の方法(データベースやXMLファイルを利用する)もサポートしていますが、上記のような理由から、本稿はgettextだけに注目します。他の方法に興味のある方は、参考文献(1)などを参照してください。
本稿ではgettext自体についての詳しい解説は行いません。GNUのサイトや参考文献(2)などを参照してください。
紹介する方法
本稿ではgettextを利用する3種類の方法を紹介します。
- PHP標準のGettext
- PEARのFile_Gettext
- PEARのTranslation2