ADO.NET Data Services（WCF Data Services）を使用してデータサービスを構築する

Silverlightで行うデータ処理アプリケーション開発の第一歩 第2回

ADO.NET Data Servicesでのサービス実装

　では、実際に構築手順に移ります。

　前述したサンプルシステムを使用し、開発環境はVisual Studio 2008 Service Pack 1とSQL Server 2008を使用します。また、データモデルとして、ADO.NET Entity FrameworkのEntity Data Modelを作成します。環境に関する詳細は、上記のサンプルシステムのサイトでご確認ください。

　ADO.NET Data Servicesの実装は、Silverlightアプリケーションでの活用を考えて、「Silverlight Navigation Application」Visual Studioテンプレートから作成されるWeb側のプロジェクトにしたいと思います。

手順

1. Visual Studioの［新規作成］-［プロジェクト］より［Silverlight Navigation Application］テンプレートを選択して［OK］をクリックします（ファイル名は「MSStoreSample.Client」とします）。


この時、同時にSilverlightアプリケーションをホストするWebサイトを作成することになります（ファイル名は「MSStoreSample.Web」とします）。


2. 次にMSStoreSample.Webにデータ公開用のサービスを実装します。 ［プロジェクト］-［新しい項目の追加］ ダイアログボックスでADO.NET Entity Frameworkを選択して［追加］をクリックします（ファイル名は「MSStoreSample.edmx」とします）。
新しい項目の追加 ダイアログ ボックス

3. Entity Data Modelウィザードが表示されますので、［データベースから生成］を選択し［追加］をクリックします。
4. Entity Data Modelウィザードでデータ接続を指定します。この時、接続情報としてSQL Serverのインスタンスであるsqlexpressを指定して、MSStoreSampleデータベースを選択します。このデータベースはサンプルシステムのインストールと共に作成が可能です。
接続のプロパティ

5. aspnet_XXX 以外のテーブルとビュー、sp_CreateOrderとsp_DeleteBasketのストアドプロシージャ2つにチェックを入れ ［完了］ を押下します。これで、プロジェクトの中にMSStoreSample.edmxが作成されます。
データベースオブジェクトの選択

6. ここまでの操作により、データベースのモデルが準備できました。次にMSStoreSample.Webプロジェクトに対して、ADO.NET Data Services を追加します。［プロジェクト］-［新しい項目の追加］ ダイアログ ボックスでADO.NET Data Servicesを選択して［追加］をクリックします（ファイル名は「MSStoreSampleDataService.svc」とします）。
新しい項目の追加 ダイアログ ボックス

7. 追加したADO.NET Data Service（MSStoreSampleDataService.svc）に対して、使用するモデル、データアクセス用のルールを指定します（太字になっている箇所が実際に記述したコードです）。このサービス上では、基本的にすべてのエンティティ（テーブル）がAllRead（読み取り専用）として指定されます。ただし、Baskets、Baskettemsエンティティはフルアクセスが可能となります。
リスト MSStoreSampleDataService.svc.cs

using System;
using System.Collections.Generic;
using System.Data.Services;
using System.Linq;
using System.ServiceModel.Web;
using System.Web;
using MSStoreSample.Models;

namespace MSStoreSample.Web
{
    public class MSStoreSampleDataService : DataService<MSStoreSampleEntities>
    {
        // このメソッドは、サービス全体のポリシーを初期化するために、1 度だけ呼び出されます。
        public static void InitializeService(IDataServiceConfiguration config)
        {
            config.SetEntitySetAccessRule("*", EntitySetRights.AllRead);
            config.SetEntitySetAccessRule("Baskets", EntitySetRights.All);
            config.SetEntitySetAccessRule("BasketItems", EntitySetRights.All);
        }
    }
}

メモ

　エンティティに対するアクセスルールには他にも以下のが存在します。

None	データへのすべてのアクセス権を拒否
ReadSingle	単一のデータ項目を読み取る許可
ReadMultiple	データ セットを読み取る許可
WriteAppend	新しいデータ項目をデータ セットに作成する許可
WriteReplace	データを置換する許可
WriteDelete	データ セットからデータ項目を削除する許可
WriteMerge	データをマージする許可
AllRead	データを読み取る許可
AllWrite	データを書き込む許可
All	データを作成、読み取り、更新、および削除する許可

8. ここまでの手順により結果を確認することが可能です。ソリューションエクスプローラーから、MSStoreSampleDataService.svcを右クリックし、［ブラウザで表示］を選択して、結果を確認します。

　次のような画面が表示されます。これは、このサービスが公開しているエンティティの一覧です。

サービスのエンドポイント

　データを取得してみましょう。以下のアドレスを指定します。Categories エンティティの全リソース（データ）が AtomPub（XML）の形で取得されます。

http://ホストのアドレス/MSStoreSampleDataService.svc/Categories

取得データの例