はじめに
VMロールとは、昨年のPDC 2010で発表された、Webロール、Workerロールに続く第3のロールです。現在は、ベータ版として利用可能なこのロールについて紹介します。
対象読者
- Windows Azureの新機能に興味のある方。
- Windows Azureのサブスクリプションを持っており、Azureを利用したことがある方。
必要な環境
- Windows Azureサブスクリプション
- Visual Studio 2010もしくは、Visual Web Developer 2010 Express
- Windows Azure Tools for Microsoft Visual Studio 2011.3以降(Windows Azure SDK 1.4含む)
- 英語版 Windows Server 2008 R2
- Hyper-Vが動作する環境
VMロールとは
VMロールは、オンプレミスのHyper-V上で作成したWindowsサーバーそのものをWindows Azure上にホストし実行できるロールです。従来のWebロールやWorkerロールでは難しかった既存アプリケーション移行、各種ソフトウェアのインストールなどが容易に実現できます。ただし、その柔軟性と引き替えにパッチ適用などの保守運用は利用者が行う必要があり、管理コストが増大します。
VMロールは、利用者が作成した仮想マシンをそのまま実行できますが、いくつかの制約が存在します。
- VMロールへの変更は永続化されません。
- グローバルIPアドレスは1つのみ利用可能であり、外部からのリクエストもロードバランサーを経由してリクエストが振り分けられます。
- OSのメンテナンスは利用者自身が行う必要があります。
1.は、WebロールやWorkerロールと同様に、リモートデスクトップ接続して変更を加えたとしても変更は永続化されません。VMロールに展開するソフトウェアについて永続化が必要なデータは、何らかの手段でSQL Azureもしくは、Azureストレージに保存する必要があるということです。
2.については、複数のIPアドレスを必要とするサービスは配置できません。外部からのリクエストがロードバランスされるのも従来のロールと同様です。したがって、VMロールにおいてもステートレスな設計をする必要があります。1つのインスタンスで運用するとすればこの限りではありませんが、Windows AzureのSLAは2インスタンス以上の場合に適用されることに留意しておく必要があります。
3.については、WebロールやWorkerロールのように、自動的でアップデートされません。OSのメンテナンスは利用者が実施する必要があり、Windows Updateなどはオンプレミスで実行してから、再度VHDファイルをアップロードする必要があります。
上記のようにVMロールですべての問題が解決できるわけではありません。現状の選択肢としては、以下の順番に適用の可能性を考えた方がよいでしょう。
- Webロール、Workerロールでの運用
- Webロール、Workerロール+権限昇格での運用
- VMロールでの運用
VMロールの事前準備
ここからは、VMロールを実際に使っていくための準備について説明します。
ベータプログラムへの申し込み
VMロールは、他のロールと異なりベータ版です。利用するためにはベータプログラムへの申し込みが必要です。管理ポータルの[Beta Programs]の[VM Role]から申し込むことができます(図1)。申し込み後、メールでの連絡とともに状態が「Active」になっていれば利用可能です。
VMロールがサポートするOS
現在、正式にサポートされているOSは以下の通りです(注1)。日本語版やデータセンターエディションなどインストール報告例もありますが、サポート対象外であることに注意してください。
- 英語版Windows Server 2008 R2 Enterprise
- 英語版Windows Server 2008 R2 Standard
2011年中にはWindows Server 2003/2008 SP2が追加される予定とアナウンスされています。
VMロールのライセンスは、課金に含まれていますが、仮想マシンを作るために必要なインストールイメージ、媒体は別途入手する必要があります。現在のところライセンス的にクリアな入手方法としてボリュームライセンス(MSDNなどを含む)を通して取得したものを利用する必要があります。詳しくは、「VMロールの価格情報とライセンス」を参照してください。
VMサイズによる課金とVHDファイルサイズ
VMロールの課金は、他のロールと同様にVMサイズとインスタンス数に準じます。
また、VMサイズによって、VHDファイルの最大サイズが異なります。下表の通り、VMサイズ毎に上限があるため、仮想マシン作成時には注意する必要があります。
VMサイズ | 最大VHDファイルサイズ |
Extra Small | 15GB |
Small | 30GB |
Medium, Large, Extra Large | 65GB |