モバイル対応とソーシャルグラフ活用が今後のカギを握る
基調講演でLead Product ManagerのBrad Abrams氏は、まずWeb技術のトレンドについて振り返り、スマートフォンや高速モバイルネットワークの普及から、すべてのWebアプリでモバイル対応が必須になりつつある状況を再確認した。
また、今後のトレンドは想像がつかないとしつつも、重要な要素の一つとして人と人との関係性、つまりソーシャルグラフの活用を挙げた。実際、検索、広告、Android、YouTubeといったグーグルのプロダクトでは人を中心にした検討が行われていると述べ、聴講者にも同様のアプローチを勧めた。
加速度的に市場が広がり続けるAndroid
Googleが現在最も力を入れているのがAndroidを始めとするモバイル分野。続いて、Developer AdvocateのTim Bray氏が急成長を遂げるAndroidの最新動向を紹介した。
Androidは現在、アクティベートされた端末が全世界で1億9千万台を超え、日に55万台のペースで増え続けている。Androidマーケットでは30万のアプリが提供されており、総インストール数としては80億本を超える状況だ。
これは開発者にとって大きなチャンスであるが、一方で競争が激しいという側面もある。Bray氏は飛び抜けたすばらしさやユニークさの必要性を強調し、具体例の一つとして、神原健一氏が開発した翻訳通話アプリ「セカイフォン」が紹介された。
もちろんGoogleでも、AndroidマーケットをPCのWebブラウザで閲覧できるようにしたり、キャリア課金やアプリ内課金(In-app Billing)といった収益性を向上させる仕組みをサポートしたりと、さまざまな施策を講じている。特に日本はキャリア課金によって売上が飛躍的に伸び、現在売上の半分近くを占めているという。アプリ内課金も堅調に売上を伸ばしており、これを活用して顧客との長期な関係性を築いて欲しいとも述べた。
4.0にあたるAndroidの次期バージョン「Ice Cream Sandwich」(ICS)の新機能としては、まず「クイックコンタクト」が紹介された。連絡帳に電話番号やメールアドレスの他、各種SNSへのリンクなどを紐づけるもので、連絡相手との通信手段を柔軟に選択できる。8月末にリリースされたWindows Phone 7.5でも同様の機能が提供されており、最も旬なスマートフォンの機能といえるかもしれない。APIも提供される。近距離無線通信を行う「Android Beam」や、顔認識でのロック解除「Face Unlock」のデモも行われた。
ICSのSDKは既にdeveloper.android.comで公開されているので、ぜひ早くダウンロードして使ってみてほしいとBray氏。中でも注目の新機能として、インテントを使ってSNSなどの情報をやり取りできるAPIや、カレンダーAPI、顔認識のAPIなどを挙げた。プライバシーに関するものも多いため、個人情報の取り扱いは慎重に行う必要がある点も強調した。
また今回、個々のセッションも含め、技術的側面だけでなく、フロントエンドのデザインがユーザー体験の向上を不可欠なことを強く意識している印象を受けた。プラットフォームが成功するための考察の一つとして、アプリが際立った美しいものであることも挙げていた。