はじめに
Web Tools Platform(WTP)プロジェクトは、Eclipse 3.2と共にリリースされた新しいCallistoプロダクトスイートの非常に興味深いコンポーネントの1つです。WTPはEclipseの分野で活躍している多くのユーザーの貢献と参加をベースとして、J2EE Webアプリケーションの開発を支援する包括的なツールスイートを提供し、より簡単で生産性の高い開発作業を実現します。
WTPは、J2EE Standard Tools(JST)とWeb Standard Tools(WST)の2つのサブプロジェクトから構成されています。
JSTプロジェクトは、各種のJ2EEファイルに対応する機能豊富なテキストエディタやグラフィカルエディタ、さらにはデータベースアクセスツール、Webサービス開発向けウィザードなど、J2EE開発の生産性の向上を目的とする豊富なツールセットを提供します。WSTプロジェクトは、Eclipse内からアプリケーションを各種Webサーバー上で実行するための統合的なサポートを提供し、使用するアプリケーションサーバーに関係なく統一された方法でJ2EEアプリケーションの実行およびテストが可能です。
WTPには、J2EEアプリケーションプロジェクト向けの幅広い新しいプロジェクトテンプレートも用意されています。例えば、Dynamic Web Projectは、Java Web Archive(WAR)アプリケーションの作成、テスト、デバッグに役立ち、Enterprise Application Projectは、Enterprise Archive(EAR)アプリケーションの構築を目的としています。
本稿では、WTPの主要機能を紹介し、WTPがJ2EEアプリケーションの開発にどのように役立つかを説明します。
WTPのインストール
EclipseにWTPをインストールする方法はいくつかあります。一番簡単なのは「Remote Update」サイトを使う方法でしょう。この場合は、Eclipse内で[Remote Update]ウィンドウを開き([Help]-[Software Updates]-[Find and Install])、[Callisto Discovery Site]を選択します。Callistoプラグインの全リストが表示されるので、[Web and J2EE development]を選択します(図1)。また、その従属プラグインの[Enabling Features]、[Graphical Editors and Frameworks]、および[Models and Model Development]も選択する必要があります。また、時間的に余裕がある場合はすべて選択します。他のプラグインも必ず役立ちます。
もう1つは、Eclipse Foundation Memberのいずれかから、バンドル済みのインストーラをダウンロードする方法です。例えば、IBMのインストーラにはWTP付きのEclipse 3.2がバンドルされています。この方法は、Eclipse 3.2をまだインストールしていない場合や、既存の構成とプラグインを廃棄しても構わない場合に有効です。
WTPをインストールしたら、IDEを再起動して新しい機能を見てみましょう。
Javaファイル以外のファイルの編集
最近まで、標準バージョンのEclipseには、Javaファイル以外のファイルを編集する高度な機能がありませんでした。しかし、Webアプリケーション開発者であればお分かりのように、Java Webアプリケーションには、HTML、JSP/JSTL、XML、JavaScript、CSSなど、Javaファイル以外のファイルもたくさん使われています。確かにこれらのファイル形式に対応しているエディタがサードパーティ製プラグインとして提供されており、中には素晴らしいものもありますが、これは最新のIDEならばデフォルトで用意されていなければならない部類の機能です。WTPの登場により、ようやくこれらの非常に貴重な機能とEclipseとの統合が実現されました。
WTPには、HTML、JSP、JSTL、XML、DTD、XML Schema、XSL、WSDL、JavaScript、CSSなど、Java Webアプリケーションプロジェクトで使われる主要なすべての種類のファイルに対応する最高級のエディタが用意されています。Eclipse 3.2と一緒に提供されるWTP 1.5は、JSF JSPファイルの初期サポートも備えています(将来のバージョンで完全サポートが予定されています)。現行バージョンでのJSFのサポートは、JSTL
タグで使われているような、構文チェックとコード入力支援に限定されています。
各エディタでは、構文のカラー表示とコード入力支援の機能に加えて、文書構造を[Outline]ビューに便利なツリー形式で表示することもできます(図2)。HTML、JSP、JSTL、JSF、その他のXML系エディタなど、これらのエディタの大半は、ファイルがうまく構成されていなかったり、不正だったりした場合に警告/エラーを発行します。こうした機能はすべて、これらの種類のファイルを作成するときの生産性とユーザー経験の向上に貢献しています。
また、JavaScript、CSSなどのクライアントサイドのHTMLファイルにも対応しています(図3)。これらのエディタでは、構文のカラー表示と便利な構造表示を利用できますが、エラー検出機能とコード入力支援機能はいくらか制限されています。
XMLの処理
XMLを扱う必要のないJ2EE開発者はまずいません。これまでは、構文のカラー表示機能と文書の検証機能を実行するにはXML-Buddyなどのプラグインが必要でした。
この状況を改善するため、WTPプロジェクトには、XMLおよびXML関連の文書を扱える包括的なエディタセットが用意されました。標準のXMLエディタでは、XML文書を便利な三区画のビューで表示ができます(図4)。
XMLソースコードは中央のパネルに表示され、そこで編集します。このパネルでは、必要不可欠な構文のカラー表示がサポートされ、文書のフォームが適正か(XML構文が適正か)、および有効か(文書の構造がXMLスキーマまたはDLDに従っているか)をチェックすることもできます。
[Outline]ビューには、文書の構造がツリービュー形式で表示されます。画面の下部の[Properties]パネルには、選択したXML要素の属性が一覧され、編集できます。この機能は、Springの構成ファイルやHibernateのマッピングなど、複雑なXML文書内の要素の有効な属性をすべて覚えていない場合に便利です。
WTPはXMLスキーマ文書にも対応し、XMLスキーマをテキスト形式およびグラフィック形式で表示し、編集することもできます(図5)。
[Properties]ビューでは、要素の種類とカーディナリティを一目で確認し、変更できます。また、例によって[Outline]ビューでは、文書構造の概要を把握できます。新しいスキーマを効果的に作成するためにはXSDの知識が必要となることに変わりはないものの、WTPのグラフィックエディタでは、この種のファイルを簡単に効率よく処理できます。