「巧遅は拙速にしかず」進んでいる海外に追いつこう
今回のデモではインターネットへの接続がうまくいかなかったという場面も。「実際にシステムでちゃんと動かすのはすごく大変なこと。これも格闘技と同じだ」と太田(寛)氏は説明する。つまり自分一人でいくら鍛錬を積んでも、実践では通用しない格闘技と同じだというのだ。格闘技は相手を察知して、受けて攻撃することを繰り返す。勝つためには相手の情報を徹底的に収集して、戦う場所は己の土俵で有利にし、死線をくぐった経験を基にいろんな戦い方のバリエーションを駆使していかねばならない。「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」、つまりデータを基に経験を積み、その経験を知識化して知恵(戦略)にすることで、ようやくIoTの開発ができるようになるというわけだ。
開発者としてIoTのゴールは、やはりデータを貯めて分析して、創造の礎となすことである。そこで太田(寛)氏が分析に使える機能として紹介したのが、Azureが提供している「Stream Analytics」と「Machine Learning」。「Stream Analytics」は一時、F1のロータスチームが採用していたこともあるテクノロジーで、タイムフレームごとの特徴(トレンド)を抽出し、リアルタイムに分析・蓄積できる機能である。一方の「Machine Learning」は予測(機材の故障予測、メンテナンスコストの最適化、信頼性予測)と分類(機械の特性、ユーザーの特徴、利用形態のカテゴライズ)が容易にできるようになる。
ビッグデータから有用なデータを抽出するにはどうしても試行錯誤が必要になる。そこで活用したいのがエクセルだ。先のGalileoを使った大田(昌)氏のデモでも、分析や可視化に役立つソリューションとして「Power Query」と「Power View」のアドイン機能を紹介。それに付け加え、太田(寛)氏は地図へのマッピングで可視化する「Power Map」を紹介した。「これらのツールを活用することで、データを情報に、情報を知識に、知識を知恵にすることができる」と太田(寛)氏は言い切る。
日本ではこれからが本番との印象のあるIoTシステムだが、海外では既に活用が進んでいるという。太田(寛)氏は英ロンドンの地下鉄やドイツティッセンクルップという会社のエレベータの事例を紹介。太田(寛)氏は「先の例と比べると規模は小さいが」と前置きした上で、日本マイクロソフトの本社では、.NET Micro Frameworkで組み上げた温度、湿度、照度、大気圧を測定するボードを常設していることを披露した。
「海外は進んでいる。私たちも負けてはいられない」と参加者にハッパをかける太田(寛)氏は、「巧遅は拙速にしかず」「三十六計逃げるにしかず」といったことわざを引用し、クラウドは利用をやめたければいつでもやめられるので、四の五の言わずにとりあえず試してみよう、会場を促す。
とはいえ何から手をつければ良いのか分からない人もいるのも事実だ。ではどうするか。そこでまた太田(寛)氏は「守破離」という世阿弥の言葉を引用し、「まずは守。基本に忠実に学び、頭に回路を作ることだ」と語る。そしてその守の部分なら、マイクロソフトは支援できるという。例えばIoTの基本要素が学べる自学・自習可能なハンズオントレーニングはその一例だ。続けて太田(寛)氏は総合格闘技であるIoTだからこそ、いろんなプラットフォームの使い手や立場の人、プロフェッショナル達がつながっていくことも大事だという。「IoTコミュニティを立ち上げようと考えている。3月15日にキックオフなので、ぜひ、みなさん興味のある人は参加してほしい」
こう会場に呼びかけ、太田(寛)氏と大田氏のユニークなセッションは終了した。