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Azureを卒業し、次はLINEの"bot"で勝負する――砂金信一郎さんのキャリア

クラウドネイティブ時代のデベロッパー生存戦略 第3回(前編)

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目次

2020年までにLINEで新しい勝負に出たい

吉羽 砂金さんは、マイクロソフトで成功して、マネージャーをやり、最強のチームを作ってきたわけですよね。なぜこのタイミングで転職しようと思ったんですか?

砂金 あの、面白い話になるかどうかわからないですけど、マイクロソフトに入って8年同じ部門で、扱っている技術もAzureやその周辺技術で、だいたい同じものだったんですね。マイクロソフトに居続けるにしても、他の部門に移ろうと考え始めていて、自分の次のチャレンジとして面白そうな話はいくつかあったんです。それはそれで進めていましたが、一方で、せっかくだから外にも目を向けて、どんなオファーだったら今の自分に合っているか考えてみようと、普段はLinkedIn経由で来るオファーも全てシャットアウトしていたんですけど、3日間だけ僕の心の窓が開いた瞬間があって、その時に来たいくつかの他社からのオファーを進めました。

 いろんな視野を持って選んだかというとそうではなく、逆に言うとそこで深く話してみて、合わなかったら別にマイクロソフトに残ればいいし、面白そうだったらそっちに移ろうと思った中の一つに、今回のLINEの話がありました。

吉羽 マイクロソフトの中のポジションと外に出るのと、どっちがより楽しそうか、チャレンジになるかっていう基準で選んだんですね。

砂金 そうです。転職の話を進めていたときはLINEがそろそろ上場するというタイミングだったことと、今までゲームや広告の売上が主体だったのが、僕がLINE入社後に関わっていくbotの事業など、他の事業に広げていこうとしていて、チャレンジングだなと思ったことがありますね。

 あとは、「りんな」(マイクロソフトの開発した女子高生との会話bot)のプロジェクトに関わったことがきっかけで、データを持っている企業は強いな、と感じたのもあります。りんなはマイクロソフトディベロップメントという別法人の開発チームが主体となって進めていたプロジェクトで、北京にあるマイクロソフト リサーチ アジアの基礎研究チームが、かなり本気で技術を投入して女子高生の雑談botを作っているという不思議なプロジェクトなんです。

 りんなを見ていると、マイクロソフトが持っている、日本語を紡ぎ出す技術、アルゴリズムはすごいなと思います。ただ、りんながなぜLINEと一緒にやっているかというと、ユーザーのレスポンスや対話データがほしいんですね。データがあれば、ディープラーニング的なエンジンに対して、無限のデータを投入して学習していくことができるんです。

 りんなに限らず、ここから先、クラウドをただのインフラじゃなくてディープラーニング的なAIのエンジンと考えるなら、インフラやアルゴリズム側で勝負をするのもあるんだけど、データやユーザーとの関係性をきちんと握っていて、そのデータをどのパートナーと組んで有効活用し、新しいことをやる立ち位置の方が、面白いなと思ったんです。

吉羽 事業開発に近い立場なんですね。

砂金 ちなみに、次にLINEでやる仕事は、今まで「LINEビジネスコネクト」「LINE@」という形でパートナーと組んでビジネスをしていたのを、今年3月に発表した「ビジネスプラットフォーム構想」といって、よりオープン化していこうという動きがあります。

 その一つに、chatbotやAIがあって、マイクロソフトのりんな、リクルートジョブズのパンダ一郎などで、チャットを利用したUXってどうなっていくのかを実証実験していて、その実験フェーズが終わり、世の中の役に立つものが作れそうだ、という確信を持てているのが今なんです。

 ではそれを、一気に間口を広げ、チャットが世の中のデファクトスタンダードになるように、例えば、宅急便で不在通知が入っていたら、「LINEでチャットして時間指定して再配達を頼むよね」と、全日本人の7割とは言わずとも半分くらいの人が発想するような。当然、会話の相手はAIで。そんな世の中を、実現できるんだったらやってみたいと思ったんです。そして、最初に担当する仕事が優勝賞金最大1,000万円の「LINE BOT AWARDS」という、みんなのライフスタイルを変えるbotを生み出すエコシステム作りに早速チャレンジしています。

 いつまでLINEにいるかは分からないけど、僕はたぶん2020年まではLINEにいると思います。2020年はオリンピックイヤーで、インバウンドをより強化すると予測されます。個人的に思っているのは、2020年になった時に、「日本に来たら、このLINEっていうアプリ入れておくと、決済も問い合わせも予約も全部いけるらしい」という状態が作れたら勝ち。

 でも、中国から来日した方が、中国で普及しているチャットアプリ「WeChat」がLINEよりも先行して、WeChatで決済もタクシー配車もできちゃう、ってなってしまったら負け。そうしたら次のチャレンジを探そうかなと。いろいろな仕掛け作るのに、3~4年はかかると思うし、ちょうどいいスパンのチャレンジだと思うので、2020年までは一生懸命やってみたいなと思っています。

吉羽 砂金さんのキャリアは、今まで有名な会社でやってきているものの、どちらかというとアウトロー、新規の事業開発をやっていますよね。今度のLINEもある意味そうじゃないですか。それをどの切り口からやっているかが、今回変わっただけなんでしょうね。

砂金 はい。なので、どうやったらいいのか分からないということは全然なくて、あれもこれもやりたいんだけど、どの順番で手を付けていこうか、という感じですね。

吉羽 Azureの時上手くいったやり方が、まだ上手くいくのかどうか分からないですよね。そういう意味では楽しそうですよね。チャレンジがいっぱいあって。

砂金 基本的に、0を1にしたり10にするのが大好きで、10から100や、10万にするようなことは、あとは誰にやってほしいです。

 マイクロソフトを辞めるにあたって、別に後ろ向きな理由は無いんです。ただ「砂金ちゃんが1人でいろいろやれることはわかった。それをどうやってスケールするか仕組みに落とし込め」と言われたことは後押しになっていて、もし仕組みが作れて、それで回せる状況になったら、僕は別にいなくてもいいんじゃないかなと思いがちなんです。

吉羽 僕もすごくワーカホリックで、朝5時ぐらいに起きたら夜寝るまでずっと仕事しても全然OKなんですけど、面白くないと、朝がつまんないんです。だから、月曜日会社行きたくないなって思ったらもうその仕事は終わった時期なのか、と思っていましたけどね。砂金さんが次、何をやってくれるのか楽しみですね。

砂金 めっちゃ楽しみです。みなさんを超巻き込むので、よろしくお願いします。

吉羽 そうすると今回の決断は、クラウドマーケットの状況の変化や、Azureも世の中にだいぶ浸透し、ある意味レールに乗ったので、自分の役割は終わりつつあるかなと思ったのと、違うことにチャレンジしたいという、2つが要因?

砂金 そうですね。AWS第一世代の小島英輝さんや玉川憲さんたちと、僕は違うものを扱っていたとは言え、同じ方向を向いていたんだろうなと思うところがあって。僕は別に、クラウドを使ってほしいわけじゃないんですよ。クラウドを使うことによってエンジニアとしての考え方や生き方が変わった、そういった人の変化にどれだけ触れられるかというところが面白いと思うんです。それが集合すると、新しい企業や新しいサービスができる。その真実の瞬間にどれだけ触れられるか。

 その結果、3年前なら絶対マイクロソフトに興味を持たなかっただろう人が、クラウドと触れたことによって入社することになった。あるいは、大手SIから、クラウドを専業で扱うベンダにキャリアを振って、人生をエンジョイしてる人とか。そんな人たちを生み出す仕事をしたかったんだと思います。

 「僕もあの人みたいになりたい」っていう、ロールモデルが何人か出てきて、そういう生き方がかっこいいという世の中の認識ができて来たので、あとはみんな、よろしくやってくれるかなと思ったんです。クラウド第一世代の人たちみんな面白い人が多かったですね。

吉羽 新しい、まだ絶対流行るかどうかもわからないものを、さっさとツバつけて自分で試してみて、いけそうだからって言って自分のキャリア変えるような人たちだから、自己責任で何でも考えるし、だから面白い人が多かったんでしょうね。今の環境を平気で捨てられる人たちがあの頃の世代の人たちっていうイメージですよね。ただ、変化に対する恐怖、みんなありますよね。

砂金 あるんだけど、それを上回るワクワク感、どうなるか分からない感はすごくありましたね。

吉羽 開発者の人たちが自分たちのキャリアを考える時、もちろんお金は大事だけど、ワクワクするものを選んでおけばいいのかなと。

砂金 そうだと思います。自分の時間って有限じゃないですか。何年現役でいられるかわからないという時に、朝会社に行きたくもないような仕事のために、8時間や10数時間を費やして心をすり減らしているよりも、費やした時間に対して、自分がどれだけワクワクしているのかが、ものを作り出す人にはより重要なんだと思います。

 基本ね、新しいものを作り出したいなって思う瞬間はワクワクしてないと本当に良いものが多分自分の眼に入ってこないし、さっきの必然性みたいなもので、この技術、この人との出会いは必然なんだと。ただそれは自分の種まきがあったから、あるいは自分がこういうことに興味がある、こういうことコミットしてやりたいという表明に対する反応なんですね。何かワクワクするもの、自分はそれに対してひたすら時間をかけてでも探求したいと思えるものを持っていれば、それをずっとキープでいいと思うし、次に新しく興味があるものを見つけたら、多分失うものがどうのとかじゃなく、とりあえず移ってみてから考えるっていうのは大事だと思います。



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  • CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

    CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

  • 吉羽 龍太郎(Ryuzee.com)(ヨシバ リュウタロウ)

     クラウドコンピューティング、DevOps、インフラ構築自動化、アジャイル開発、組織改革を中心にオンサイトでのコンサルティングとトレーニングを提供。  認定スクラムプロフェショナル(CSP) / 認定スクラムマスター(CSM) / 認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)。Developers...

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