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Azureを卒業し、次はLINEの"bot"で勝負する――砂金信一郎さんのキャリア

クラウドネイティブ時代のデベロッパー生存戦略 第3回(前編)

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目次

マイクロソフトでAzureに触れて「IT業界が根底から変わる」と信じた

Ryuzee.com 吉羽龍太郎さん
Ryuzee.com 吉羽龍太郎さん

砂金 その後、リアルコムも無事に上場して、落ち着いてきたというタイミングで、「マイクロソフトを受けてみませんか?」とオファーがありまして。

吉羽 エージェントから?

砂金 そうです。Visual Studioのプロダクトマネージャーをやりませんかという話で、最初は断る気満々だったんですよ。そしたら最終面接で「砂金さんはプロダクトマネージャーっていうより、エバンジェリストに向いてそうだよね」と斜めの発言をされたんですが、確かに面白そうだなと興味を引かれたんです。

 僕がマイクロソフトに入社したのは2008年12月ですが、その前はちょうど、Windows Azure(現 Microsoft Azure)の先行リリースのタイミングで、Azureをうまく広めてくれるエバンジェリストを探している、というお話をいただいて。「それなら楽しそうなんでやります」と。僕は、時代の転換点によいご縁があって、そこに早いタイミングで乗っかれていましたね。自分もそういう目でマーケットを見れていたのかもしれないし、巡り合わせもあるのかもしれません。

吉羽 でもそれって、勝手に他人がレールを敷くわけじゃなくて、自分がボールを投げていると、ある日突然ズラッとつながる感覚ですよね。

砂金 必然性を感じましたね。

吉羽 今までのキャリアとクラウドはガラッと違いますよね。どうやって必然になったんですかね?

砂金 当時、僕が世の中に広めたいと思ったのは、必ずしもクラウドだけじゃなかったんです。クラウドが世の中を牽引するなんて、そんなに信じられてなかったですし。ただ、実際にAzureを見てみて、周りにいる、AWSでクラウドを先行して触っている方の反応を見て、「これはきっと、うまくやればIT業界の根底から変わるはずだ」と気づいたんです。

吉羽 なるほど。

砂金 やっぱり、メッセージがかっこよかったんですよね。一時期、ビル・ゲイツではなくレイ・オジーがチーフアーキテクトを務めていた時期があって、レイ・オジーが出すメッセージは、それが現実的かどうかはさておき、かっこよかったですね。それを、エバンジェリストとして、あたかも自分が考えたことのようにいろんな人に伝えていると、「これで、みんなの生活が変わりそうだ。少なくともIT業界の在り方は変わるはずだ」と感じ始め、気づいたらずっとAzureの人になっていました。

 スコット・ガスリーが力を持ち始め、Azureが、.NETの実行環境からもう少し汎用的に移り変わっていくにつれ、自然と活動の幅が広がっていきました。Azureを啓蒙するために何をすればいいか、好き勝手にやっていましたね。JAWS-UGが成功していたので、自由にAzureのよさを語り合えるコミュニティとしてJAZUGを立ち上げたり、色モノですが、クラウディアさんを作ったり。あれは実は結城浩先生の「数学ガール」をリスペクトして作ったんです。

吉羽 中身は硬派なんですね。

砂金 だんだんクラウディアさんのキャラが立ってきて、非常にいい感じに育ってきたと思います。

砂金 ここ3年ぐらいはエバンジェリストチームのマネージャーをやっていました。メンバーをきちんと管理して仕事をしてもらう、という仕事ももちろんありますが、どちらかというと、メンバーが自発的に活動できるためのサポート、メンタリングによってどうバリューを出してもらうかの方が重要なんです。なので、いわゆるマネージャーとして、部下が何人いて、マネジメントとしてこういう成果を出した、というのとは感覚がちょっと違うかもしれない。一緒に仕事をしていたメンバーの成長や今後のキャリア、将来性にはコミットするけど。

吉羽 完全にコーチングの領域ですね。

砂金 僕の場合、芸能事務所のマネージャーみたいな仕事の仕方でした。良いタレントさんが揃っているので、その価値を最大化するにはどうしたらいいかを考える。

吉羽 でも一方で、上からの目標やKPIとメンバーとの間で、マネージャーは板挟みになりがちじゃないですか。何か苦労されたりしましたか?

砂金 当然ありました。僕は、自分で吸収してしまうタイプのマネージャーなんですよ。部下の数が300人など大人数になると破綻してしまいますが、10人ぐらいの精鋭部隊だったら、メンバーの価値を最大化しつつKPIを果たせるチームを作れる。自分が半分プレイングマネージャーの方が、今の等身大の僕からすると一番バリューが出せると思います。

 マイクロソフトのデベロッパーリレーションのチームは、KPIを達成するだけでなく、その上でどんな新しいチャレンジができ、どういう学びがあって、どれだけ業界全体にインパクトを与えたのか、そちらの方が重要でした。いかにやらなければいけないことをミニマムの工数でやれるか。綺麗事で言うと、好き勝手なことやった上で、その結果がKPIをとして現れることなんですが、必ずしもそうはならない場合、僕は自分で吸収するタイプでした。

吉羽 プレイヤーとマネージャーと、どっちが好きですか?

砂金 プレイヤーの方がいいですね。ただ、マネージャーの業務のなかでもマイクロソフトにいい貢献ができたなと思うものの一つに、良い人の採用や、良いチームを作るってことですね。

 クラウドソリューションアーキテクトの採用にも関わって、面接にはだいたい参加するのですが、その時には「砂金ちゃんちょっとさ、全力で口説いといて」って言われるんです。そうやって指示を出してくれるのも「砂金みたいな変わった人と一緒に仕事をする楽しさを、面接の30分間で全力で伝えてほしい」というオーダーだったんだと思います。その側面はマネージャー業務のごく一部ですが、良い人を採用することと動機づけに関しては、貢献ができたと思います。

吉羽 ちなみにマネージャーになったきっかけって何だったんですか?

砂金 マイクロソフトでの僕の上司、伊藤かつらさんは、人のキャリアにすごくコミットする人なんですよね。「エバンジェリストをこのまま続けるの?」って。ただ、すごく積極的に誘われるのではなくて「こういう経験ができると思うし、いい機会だと思うので、マネージャーのポジションに手を挙げてみたらどう?」と言われたんです。それをきっかけに、自分の中で考えて、今までと違う視点がほしいと思ったので、マネージャーになりました。

吉羽 IT、コンサルときて、次は「人」という視点ですね。今振り返るとその選択は正しかったと言えますか?

砂金 めっちゃ正しいと思います。エンジニアならマネージャーをやったほうがいいと思うんですよね、ピープルマネージャーのようなロールをね。持ち回り制でもいいから。そうすると「板挟みで大変そうだな」というのも分かると思います。


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著者プロフィール

  • CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

    CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

  • 吉羽 龍太郎(Ryuzee.com)(ヨシバ リュウタロウ)

     クラウドコンピューティング、DevOps、インフラ構築自動化、アジャイル開発、組織改革を中心にオンサイトでのコンサルティングとトレーニングを提供。  認定スクラムプロフェショナル(CSP) / 認定スクラムマスター(CSM) / 認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)。Developers...

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