社外のエコシステムと関わるのがこれからの生存戦略

編集部 砂金さんのキャリアはすごく幅広いですね。ITという軸はあったとしても、守備範囲が全く違う分野をされています。そこまでしなやかに振り切れた、やり続けられた理由とは何でしょうか。
砂金 飽きっぽいのと、自分が過去積み上げてきたことにあまり執着がないんだと思います。普通にコードを書いている人たちにとっても、書いたコードが5年も10年も使われている状態は気持ち悪いじゃないですか。どこかでリファクタリングするし、違うアーキテクチャに変わっていかなければならない。
それと同じで、過去の資産で生きていこうという発想があまり無いんです。自分のCPUを最大限に発揮できそうなところ、求められているところを察知するセンサーは、他の人より性能がいいんだと思います。僕は、何かを立ち上げるタイミングに必要とされる人材で、それが軌道に乗ってくると、他にもっと上手くやれる人たちにお任せして僕はまた次の新しい何かを見つける。あとは、どこに行ってもやれるだろうというすごく楽観的な自信があります。
吉羽 転職は、あるステージでのレベルアップを終えて、次のステージに行き、さらにレベルを上げるような感覚なんだと思います。僕も過去、SIerにいたこともあるし、いろんなことをやってきました。経験が無駄だったと思うことはないですが、一方で何かを全部捨てたことは無いですね。
砂金 マイクロソフトでもLINEでも、会社として期待されることは当然ありますが、その根底は「職業:俺」だと思っています。自分が提供できている価値は、過去の色々な、僕の場合はちぐはぐなキャリアでしたが、その最終型としていろんな知見が貯まっているからこそ出せるものなので。
編集部 砂金さんはいろいろな業界を移られていますが、転職された後、昔の仲間とどんな関係を築いているかに興味があります。
砂金 そこはあまり真剣に考えていなくて、平和的に解決しています。むしろ社内より、社外のエコシステムの方が大きい。僕がマイクロソフトを辞めたとしても、Azureのコミュニティやパートナーのみなさんとは今後も一緒にお仕事をしていきたいですね。今この瞬間は裏切り行為と思われたとしても、5年も経てば、誰がどこに行ったかよく分からなくなるので。あんまりシビアには考えていないです。
吉羽 今の話はエンジニアの人材流動性とも密接に関わっていますよね。僕は5回ぐらい転職して、どこにいっても昔の人と付き合うし、いまだにAWSの人から仕事の相談が来たりする。逆に、いろんな知り合いがいるからこそ仕事が回るというのもあります。
IT業界のエンジニアの仕事の選び方ややり方が、昔と変わった気がしますね。エンジニアがこれから生き延びていくには、最初にどこかのエコシステムに入る。コミュニティでも何でもいいと思いますが、社外のどこかに居場所を見つけてほしいなと思います。
編集部 砂金さんの自分にしかない持ち味、強みはどのようなものだと考えていますか?
砂金 人の巻き込み力はあると思います。マイクロソフトでのエバンジェリストの仕事でいうと、「なぜその技術、その製品を今やらなきゃいけないのか」を上手く伝える能力はすごく高いんだと思います。それは、コンサル時代に培ったところで言うと、課題分析力なんですよね。本質の解に対して、それを解決するためのサブイシューが5つあったとすると、順番に解決するのか、同時に解決する必要があるのかは、それはそれで分析が必要。
一方で、僕の今までのコネクションの中で、それを解決できそうな技術や人の蓄積を、今までいっぱい作ってきたつもりなんです。それを上手く適合させていく力はあると思います。
編集部 一般の人が、課題分析力をうまく鍛えられる機会はあるのでしょうか?
砂金 身近な課題や社会的な課題に対して、自分は何ができるのだろうか、という意識の持ち方だけだと思います。そこから先のロジックの展開は、一般の方に比べればエンジニアのほうが格段に訓練はされてるはずなんです。課題が何か分かれば解決できるけど、おそらく日本のIT産業の多重下請け構造では、新しい課題を発見する機会は、35歳以降にならないと来ない。
週末のハッカソンでも何でもいいから行って、自分の身近な課題を解決する。打席数をどれだけ多くできるかですね。
編集部 砂金さんのキャリアをお聞きしていく中で、よく「種まき」という言葉が出てきましたが、種まきとは具体的にはどんなことをやってきたのでしょうか。
砂金 動機づけですね。エバンジェリストは、プロジェクトやプロダクトにずっと関わり続けられないんですよ。「面白いからやってみよう」と言って人を巻き込んで、その人たちのハートに火が付いたら、あとはそれを応援し続ける。何をやれば面白いのか、儲かるのか、楽ができるのか、みんなに尊敬されるのかを伝えていく。
「あなたは今この瞬間何をすべきですか?」と問いかけ、僕と出会ったことによってちょっとでも変化が起これば、それは僕にとってすごく嬉しい。そういうことが、僕にとっての種まきだと思います。
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