「ハードウェア全然分かんない」を解消したくて始めたdotstudio
ゆうこ 最近、dotstudioという会社を立ち上げられたそうなんですけれども、これはどういったことをする会社なんですか?
のびすけ うちはですね、IoT領域を専門にいろんな情報発信や、開発もやったりするんですけど、根底にはさっき言ったDevRelがあって。今はIoTに着目してますが、テクノロジーの楽しさや便利さを、いろんな人に幅広く伝えたいと思ってやってます。
僕はWebエンジニアなので、ハードウェアをやろうとした時に難しさを体感したんです。電気の流れとか抵抗とか全くわからんということで。でも、IoTが広まった時って、ハードウェア側の人たちって今さら感があったんですよ。でもWebの人たちが異様に盛り上がったっていう。今までWebの中でしか表現できなかったものが、リアルな世界に行ってリアルの世界のデータを扱うことができる。それをArduinoやRaspberry Piなどのデバイスが出てきて、簡単に扱えるようになったらしいと。Webの人がIoTを盛り上げたんじゃないかなと僕は思っています。
みんな言うわけですよ。「ArduinoとかRaspberry Pi使うと、簡単に何かできるんだよ」って。で、やろうとするわけですよ。でも全然わかんなくて。
ゆうこ 私もね、記憶にあるんですよ。中国の深センに行った際に、Arduino互換の基盤がついたロボットみたいなのを買って、それを動かそうとしたら、説明書通りに接続してるのに動かないんです。実は、基盤に物理スイッチがあったのに気づかなかったんです。「うわ、これかあ」と思って。本当にド初心者からしたらそういうスイッチがトリガーになってるのに気づかないんですよね。その時に、ハードウェアは怖いなってちょっと思いました。
のびすけ そうなんですよね。当時ブログも全然なくて、メディアに出てる情報もないんですけど、簡単にできるというイメージだけがあって。
かまぷ 簡単って、あれ売り文句だからね。
のびすけ そうなんですよね。電子工作の世界で言うと、LEDをチカチカさせる「Lチカ」がプログラミングで言う「Hello world」になるんですけど、そもそもLチカってなんだっていうところから分からない。「この配線通りやってみましょう」みたいな感じで、線つなぐんですよ。で、LEDつないでみると、なんか点かない。悩んでも全然わからなくて、結局LEDのプラスマイナスを間違ってたっていうやつなんですけど。逆にしたら点くみたいな。もうね、全然分かんない、そういうレベルだったんですよね。
ゆうこ ちなみにIoTをはじめたのは、IoTLTを企画したのがきっかけですか?
のびすけ いや、そうではないんですよね。その前から、大学時代の研究室の先輩がArduinoを使って何かいろいろやっていたので、そこで最初に知ったんです。本を買って、Raspberry Piも買ってやってみた。でも、Webの一つの表現として使えたらいいんじゃないかなとか、それが仕事にできたら面白いかもなっていう、趣味でラジコンやプラモデルを触ってるくらいの感じでしたね。
かまぷ 研究室では何を研究してたんですか?
のびすけ 研究室では教育工学について研究していました。教育分野に対して情報システムを適用させてみるという感じで。大学の授業で使うような、設問を作る時の支援システムみたいなの作ってました。
かまぷ 答えはだいたい真ん中にあるから真ん中を選べばいいとかそういうんじゃなくて?
のびすけ 4択クイズってあるじゃないですか。4択問題って今だと一番よく使われる手法なんですけど、あれって問題文作る側の立場から考えると、問題文に対して、正解の答えだけを問いたいわけなんですよ。それを記述式にしてしまうと、表記ゆれとか漢字のミスで間違いになるはちょっとアホらしいんで。それで4択クイズとかになるわけですよ。そうなると問題作る側からすると、1個が正答で、残りの3つの誤答を作るのがすごく大変になるんですよね。
で、4択問題、こういうのを多肢選択式って呼んでるんですけど、問題の難易度って誤答選択肢によるんですよね。どれだけ言葉の類似度を近づけられるかっていうところがポイントで。
かまぷ 先生は専門知識だけじゃなくて別の才能が必要なんですね。
のびすけ そうなんですよ。でも問題を作る側からしたら、「この問題に対してこれ」っていう答えだけあれば、それだけを問いたいわけですよ。その誤答選択肢を自動的に推薦してくれると、問題を作る側のコストがすごく減るよね、という研究をやってました。それを自動的に作って、問題として成り立っているかを評価するために、実際に人が作った問題と自動的に作った誤答選択肢とで、それぞれ学生たちを集めて実際にテストしてもらって。
ゆうこ それ、相当ムズい研究ですね。
のびすけ でもすごく楽しかったですね。
ゆうこ ありがとうございます。どこまでいったっけ。
かまぷ Lチカ、研究室、教育工学。
ゆうこ そうだ、IoTをどの時点で始めて、dotstudioがどういう会社かっていうことをお聞きしてました。
のびすけ DevRel領域にはなるんですけど、僕がIoTをやって、難しいところがあったんで、Webエンジニアがもっとハードもやれるようにしたいというのが最初かなと思います。もっと幅広くいくと、そもそもエンジニアじゃない人でIoTを知ってる人も増えてきてるんで、そういう人が試してみたいって思えるようなものを作りたいなと思ったのがきっかけですね。
でも、今後、ハードウェアをやろうとした時に僕が感じたような障壁を、誰かが下げていくような取り組みをやっていくと思うんですね。それはすごく僕らもやってはいるんですけど、それが進む結果、今難しいと思われてる技術がどっかで一般化されるんですよね。
そうすると、ハードウェアに取って代わる別の技術で、人工知能とかもそうかもしれないですけど、一般の人やエンジニア初心者が入っていこうとした時に難しいなと感じるものが出てくる。時代に沿ったものを、一般の人たちに広めるような動きができたらなと思います。DevRelの延長線上にあるかなと。
かまぷ ちょっと、いやらしい話いいですか?
のびすけ はい。
かまぷ お金っていうのは、企業さんからの研修や広報の代理みたいな感じで得るんでしょうか。広告代理店に近い?
のびすけ 近い動きしてます。僕らはアパレルのバイヤーのように、海外で流行ってるデバイスを国内に持ってくるエージェンシーみたいな動きをしてたりするんですよ。日本国内でそういうコミュニティ持って発信しつつ、海外ともそういうやり取りができるところはあまりないんじゃないかなと思っていて、それを上手くつなげられたらなと思います。コンシューマ向けには国内でもデバイス売ったりもするんですけど。
かまぷ 電子部品だとか、電気が走る系は、一般の人に売るの厳しいと思いますよ。
のびすけ そうなんですよ。ハードウェアの価格ってどんどん下がってくと思うんですよ。この間、中国の深センに行って、偽物のiRingが40円ぐらいで売ってたんですけど。本当にすごくハードウェアが安くなっていくんで。
かまぷ ARMもそうですけど、設計図を売るほうがいいんじゃないですか?
のびすけ そうですね。僕らはそこの伝えるところに付加価値を出せればなと思っていて。海外の面白いデバイスも、英語ドキュメントはあっても日本語ドキュメントはないじゃないですか。
かまぷ リアルなものに関しては、商社に任しときゃいいと思う。
のびすけ あとはブランディング的な要素ですかね。僕が思ったのは、ものを買う障壁がまずあると思ったんですよ。何買えばいいかわからないんですよ。温度センサーって言ったときに、いっぱいあるわけですよ。いろんなメーカーが出してる。どれ使えばいいんだって。LEDのもいろんなのあるし、秋葉原に行って、秋月電子に行っても分かんないわけですよ。
dotstudioでは今、キット販売をやってるんです。キットにしてまとめて、これさえ買えばいいよ、という状態にして売るやり方ですね。ただ、やってはいるものの、お金の話になるともう全然ペイしてない。
やりたいことベースでいうと、そういうキット販売をしてブランディングもしていきたい。ですが、実際の収益源でいうと、企業さんに対して広告代理店のような入り方したり、コンサルティングしたりが大きいですね。
かまぷ どうも赤裸々にお話いただいて、ありがとうございます。