企業規模、業界を問わず、さまざまな場面でSORACOMの活用が進む
3回目となったソラコムのプライベートカンファレンス「SORACOM Conference "Discovery"」。「3000名以上の申し込みがあった」とキーノートの冒頭で玉川氏が話したことを裏付けるように、会場は満席で、熱気に包まれていた。
ソラコムは2015年に創業、同年9月には「SORACOM Air」というIoT向けの通信サービスを開始。「IoTは盛り上がってはいるものの、モノ向けの通信においてはセキュリティに問題があった。それを解決したいと思い、IoTアプリケーションをより簡単、セキュアに構築、集中管理できる仕組みを作った」と、その背景を玉川氏は語る。
2017年には、30億円を調達してグローバルSIMの提供を開始。またKDDIグループ内に入った。
「お客さまは1万以上、パートナーは460社。サービスは11個に上り、アメリカ、シンガポール、ヨーロッパに拠点を構えている」(玉川氏)
ソラコム認定デバイスは100種類を超える。「大企業のみならず、たくさんのスタートアップ、新規事業に使われている」と玉川氏。
例えば日本郵便では物流倉庫内のパレットの混雑度可視化の通信にSORACOMを活用。日本石油輸送では鉄道冷凍コンテナにSORACOMを活用し、位置情報とステータス管理および制御を実現している。東急スポーツオアシスではスポーツジム内のタオル回収状況をリアルタイムに把握している。スタートアップの600ではSORACOMを活用し無人コンビニを実現。同じくユニファでは、幼児の見守りの仕組みにSORACOMを活用し、より安心できる眠りを実現している。そのほかにもデザミス(牛の活動データと飼養記録をリアルタイム分析)、豊田若竹病院(医療ガス設備の遠隔監視)、JapanTaxi(ホテルや病院でのタクシー配車)など、さまざまな顧客に利用してもらい、「そのフィードバックを次のプラットフォームに生かすことを心がけている」と玉川氏。
顧客ニーズに基づいた開発も迅速で、「創業以来、2週間に1回のペースで新しい機能を提供しており、これまで86個の新機能をリリースしてきた」と玉川氏は胸を張る。ソラコムが提供するサービスはデータ通信やネットワークはもちろん、アプリケーション、インタフェースまでに及んでいる。
アプリケーションサービスとしては「SORACOM Beam」(データ転送支援)、「SORACOM Funnel」(クラウドアダプター)、「SORACOM Harvest」(データ収集・可視化)、閉域網サービスでは「SORACOM Canal」(VPCとのプライベート接続)、プライベートラウドやパブリッククラウドと接続するための「SORACOM Door」(VPN接続)、「SORACOM Direct」(専用線接続)などのサービスを提供している。
「お客さまのニーズに従ってサービスを作っているうちに、かゆいところに手の届くサービスになっていると思う」(玉川氏)
世界100カ国以上で使えるグローバルSIM
これらのサービスは国外でも利用できる。それを可能にするのがグローバルSIMだ。グローバルSIMは複数の通信キャリアと契約しており、現時点で100を越える国と地域に対応している。
それだけではない。同SIMは自社で認証を行っているため、他のSIMよりも自由度が高く、最先端のテクノロジーをつぎ込むことが可能だ。グローバルSIMでは国内SIMで提供されている機能に加え、1年間のスタンバイ無料、月45円から使える低トラフィック用途向け、チップ型SIM(eSIM)、SMS APIによる配信、SIMアプレットのほか、新しくUSSD(キャリアが設定しているプロトコル)を使ってデータ送信する仕組みを提供することも発表。この度新たにCHAP認証にも対応した。
グローバルSIMを活用する顧客の代表として紹介されたのがソースネクストだ。同社が昨年末の12月14日にリリースした超小型翻訳デバイス「POCETALK(ポケトーク)」は、グローバルSIMを搭載。「これにより世界105の国と地域で、面倒な設定をすることなく使える翻訳機が実現できた」と同社 代表取締役社長の松田憲幸氏は語る。
ポケトークは現在、世界63言語に対応しており、2年間使い放題で、2万9800円と思い切った値付けをし、しかも量販店で買えることから「非常に人気の製品となっている」と松田氏。また玉川氏もポケトークは大好きな製品とのことで、「中国に行った際に活躍した」と笑みを浮かべながら話す。