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当たり前を作れるテックカンパニーを目指す――DMM.com 松本勇気さんが語るCTOの仕事

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2018/12/10 11:00

目次

DMMを「当たり前を作れる」テックカンパニーに

──次にDMMのCTOになったきっかけ、経緯を聞かせてください。

 2017年のIVS CTO Night(Infinity Ventures Summitのイベント)がひとつのきっかけです。金沢にCTOが集まり、いろいろな情報交換やトークが繰り広げられたのですが、僕もそこに登壇しました。そこに、DMM前CTOの城倉さんがいて仲良くなり、「CTOをやってほしい」というお誘いを受けました。そこから毎月飲みながらいろんな話を聞きました。何度か話を聞く中で、DMMってどういう会社なんだろうって結構調べたんですよね。過去の発信だったりとか、売上規模や社員規模だったり、それを見たときに、こんな面白い会社はないなと思ったんです。

 上場企業は株式と正しいガバナンスを手に入れる代償として、どうしても意思決定の素早さにトレードオフが発生しやすいと自分は感じているのですが、DMMはその真逆で未上場かつ意思決定が早くて、資本も動かせていて、人もたくさんいる。そんな会社はほとんどないし、こんなユニークな会社でCTOというポジションをもらえるのであれば、ぜひ挑戦したいと思いました。

──その時、DMMのCTOとして、何を求められていると思いましたか?

 「DMMをテックカンパニーにしたい」というミッションについては聞いていましたが、それ以外に具体的なオーダーがあるわけではなく、好きにやっていいという感じでした。僕は僕でDMMについて、いろんな人にヒアリングを重ねながら課題を把握し、それを突破しながらより世界水準で当たり前に強い会社にしないといけないと思いました。当たり前にきちんとやりきれる会社、かつ、当たり前を最終的に自分たちが作っていく側の会社にならなくてはいけないと。その当たり前を作れる会社にするためには、今やらなくてはいけないことはたくさんあるので、自分のミッションをいろいろ組み立てているところです。

──「当たり前を作れる」とは、具体的にはどのようなことでしょうか。

 「当たり前」とは、世の中のベストプラクティスの集合体だと思っています。例えば開発をするなら、今だとGitHubでプルリク上げてマージされたらもうデプロイされてるような状態、いわゆるGitOpsの徹底や、コンテナの活用など。いろんな当たり前があって、そういう状態をちゃんと徹底して作っていく、使えるようにしていく、当たり前のように社内の文化にしていく。他にも、データ分析によってサービスを伸ばすという考え方を、社内みんなができるようにするなどですね。

 「当たり前を作る」というのは、「当たり前」のことができるようになった次の段階、技術スタックがこれからどんどん変わっていく際に、どのような設計にしていくべきかを作っていけることです。

 例えばクライアントサイドは、今だとiOS、Androidでは各OSが提供する標準の元で開発することが一つの当たり前ですが、これからは新しいデバイスがどんどん出てくるかもしれない。それがVRやARならインターフェイスの常識も変わるし、開発方法も変わる。そうした時に「当たり前の開発ってこういうことだよね」「これがあるべき姿だよね」ということを、DMMから出していけるようになりたいと、メンバーとも話しています。

──テックカンパニーにするための一つが、その当たり前をきちんとやっていく、作っていくということでしょうか。

 一つというよりはそれが一番重要ですね。今「DMM Tech Vision」という名前で、開発チームのビジョンを打ち出し、その中で必要なことを今どんどんブレイクダウンしながら実行しています。

 DMMは何でもありの会社なので、会社全体としてのビジョンが明確にあるわけではないんです。だからこそ、「開発チームはこういう指針で行こう」というどこに向かうか、その指針はちゃんと作ってあげないといけないなと考えています。

──Gunosy時代とエンジニアのマネジメント方法は変わりましたか?

 DMMのエンジニアは500~600人くらいと、Gunosyの10倍なので、マネジメントのスタイルは全然変わりましたね。Gunosy時代は現場で一緒に開発することもやってたんですけど、今はより先の指針までをちゃんと示すことを心掛けています。この方向に向かう、だからこういうことをやる、あとはそのためにやったことがどうだったかという結果に対する透明性の担保のために全力を尽くすということです。

 モニタリングやみんながやっていることをちゃんとチェックして、どこに向かうかをきちんと示し、その結果これからやろうとすることを正しく伝えていく。航海士のように、先をちゃんと示す仕事、これから規模を増やしていくときの考え方なのかなと。

 DMMはもう20年続いている会社。20年でこれだけ大きな事業を作ってきたということは、巨大なプロダクトや20年間で積もってきたいろんなソースコードがあるということ。いろんなチームがその巨大なシステムを一つ触るという状況になってくると、意思決定がどんどん遅くなったりします。20年間で培ってきた成功パターンがありつつも、大きくなったシステムを見直すタイミングでもあると考えていて、それが今向き合っている課題であり、これからやることだなと思っています。

──その先の長期的なビジョンについてはいかがですか?

 DMMは意思決定がピカイチに早い。それはステークホルダーである亀山さんの意思決定がとにかく早いからです。その意思決定の早さに、テクノロジーやデータの強さが加われば、おそらくスタートアップを作るよりも面白い会社になる。より早くこの国の市場を獲りに行き、より世界で戦えるような会社をスタートアップで資金調達して進めるよりも、DMMの中で事業を受け持ったほうが面白いという選択肢が作れると思っているんですよ。

 DMMは売上規模を高いし、人もたくさんいる。そこの僕が今から作っていくテックカンパニーとしての文化を組み合わせていけば、普通の株式会社的な速度感では立ち向かえなくなると僕らは信じていて。これからいろんな事業が立ち上がっていく中で、僕もいろんなことをやってみたいなと思っています。

──CTOの考え方を知ることで若手が学べることは何でしょうか?

 僕は仕事をする上では、全員がある程度マネジメントの思考をしなければならないと考えています。例えば「CTOはなぜこの意思決定をしているんだろう」というトレースをしてみたら、意思決定の背景やなぜこの技術選定をしたのかなどが理解できてくる。自分よりも上の人間の視野を手に入れることが、とても大事なんです。

 CTOってある意味エンジニアキャリアの一つの終着点だと言われていますが、CTOが何を考えているのかというのは、翻って自分の仕事に対してさらに上り詰めていくに必要な考え方なんですよね。何かプロダクトを作ろうというときに、考えなきゃいけない軸は何なのかとか、自分のキャリアを考えるときに考えることは何なのかとか。

 彼らが何をもって人を採用していて、自分のキャリアをそこに合わせていくにはどうしたらいいのかというときに、自分の想いだけではダメなんです。上のレイヤーの人たちの思考を自分の中にも取り入れてうまく融合させる考え方が必要で、その融合をどうやったらいいのかを考える。CTOやマネージャーの視野を手に入れることはとても大事だと思います。

 自分の仕事全体の空間を地図として描写したときに、自分の領分はここなんだけど、その周辺に何が広がっていて、どう向かって行けば周りも助かるし、自分がより評価されるかを考える攻略ゲームみたいなものですね。周りのプレイヤーたちが、どうすれば喜んでくれるのかを考えるのは大事だし、それを設計しているのはCTOやその他経営者のようなポジションの人たちなので、その視点を持っておくことはいろんなところで役に立ちます。自分もゲームマスターの気持ちになって、この一つのゲームの盤面を動かすには何が必要なのかって、いつも考えています。

──最後に若手エンジニアの方にメッセージをお願いします。

 若いエンジニアのみなさんには、CTOが何を考えているのか、どうしたらなれるのだろうかということを知ることで、自分のキャリアにフィードバックしていってほしいですね。それが翻って自分が好きな仕事をすることにつながります。結局自分の好きな仕事をするのが、一番成長につながるので、自分の好きなことと自分がやらなくていけないこと、要は会社が求めることをうまく融合するにはどうしたらという考えていってもらえたらうれしいなと思います。

松本さんも登壇する若手エンジニア向けカンファレンス「Developers Boost」

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著者プロフィール

  • 近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

    株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の...

  • 馬場 美由紀(ババ ミユキ)

     エンジニアとテクノロジーが好きな編集・ライター。エンジニア向けキャリアサイト「Tech総研」「CodeIQ MAGAZINE」、Web技術者向けの情報メディア「HTML5 Experts.jp」などでライティング、コンテンツディレクション、イベント企画などを行う。HTML5 開発者コミュニティ「h...

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