ワナその3「技術を使うことが目的化してしまう」
特にエンジニアが陥りやすいのが、このワナです。ITの分野では、次々と新しい技術が生まれ、時に「バズワード」として注目されます。近年では「AI」や「ブロックチェーン」あたりも、そうした「注目の新技術」とされています。もちろん、エンジニアとして仕事をしていくにあたって、最新の技術動向に興味を持ち、その内容を理解して、正しく評価できるスキルを身につける向上心は必要です。しかし、あまりに技術が好きなあまり、プロダクト作りのゴールが、そうした技術を使うことにすり替わってしまうと問題です。
「ハンマーを使えるようになると何でも釘に見えてしまうというたとえがありますが、身につけた道具、つまり技術は使ってみたくなるのがエンジニアの性分だと思います。それ自体は大切なことですし、試してみるのも悪くありません。しかし、その思いが前に出すぎないようにすることは必要です。プロダクト作りでは、ユーザーを喜ばせるために打つ『釘』に対して、自分が使おうとしている『ハンマー』が本当に適切かを、手応えを確かめながら常にチェックすることを意識すべきだと思います」(小野さん)
余談ですが、小野さんは大学時代に弁論部で米国式のディベートを学んだことがあるそうです。その当時、こんな失敗をしたと話してくれました。
「ディベートでは、論理学に基づく完成された方法論を駆使して相手と議論をします。このやり方を知ったとき『美しい』と感じましたし、それを使えるようになった時には、何となく自分自身がレベルアップしたように感じたんですね。ただ、あまりにそれが気に入ってしまったため、当時付き合っていた女性とのデート先をディベートで決めようと提案して、大変嫌がられたことがあります」(小野さん)
当時の小野さんは、まさにこの「ハンマーを使えるようになったせいで、何でも釘に見えてしまう」状態だったわけです。自分の持っている道具が、そのとき相手を喜ばせるために適切なものかを見きわめるというのは、プロダクト作りだけでなく、人間関係全般にも必要な姿勢かもしれません。
企業がプロダクト開発で陥りがちな「6つのワナ」について、前編では主にプロダクトの企画から開発に関わる「ターゲット設定」「方法論」「技術」に関する3つのワナを紹介しました。後編では、主に「組織」「コミュニケーション」にまつわるワナについて考えていきます。
