Works Human Intelligenceでは男性の育休取得率は全国平均よりも大幅に高い27.0%
少子高齢化により人口減少が進む日本。それに伴い労働力人口も減少の一途をたどっている。そこで国が推進するのが個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにする「働き方改革」である。
人事システム「COMPANY」を手がけるWHIは「『はたらく』を楽しくする」というミッションを掲げており、それを達成するために自社の社員自身も「はたらくを楽しむこと」をビジョンとしている。
そんな同社では、仕事と生活の垣根をなくして、介護や育児をしながら仕事をするワークライフミックスという働き方が浸透しており、男性エンジニアも育児休業(育休)を積極的に取得する文化が醸成しつつあるという。それは数値からも明らかだ。
厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると、2020年度の男性の育休取得率は12.65%。これは過去最高の記録となったが、女性の取得率83.0%と比較すると、まだ低いのが実情だ。だが、WHIの男性の育休取得率は27.05%と、全国平均よりは高い割合となっている。今年に入ってからも、10人超のエンジニアが育休を取得し、職場復帰しているという。
大規模なコードの保守や改善に興味を抱き、2019年に新卒で入社した寺尾拓氏は育休取得者の一人。寺尾氏は2020年12月から6カ月間の育休を取得した。「上司に相談したところ、長めに取った方が良いというアドバイスをもらったので、6カ月取得しました」(寺尾氏)
現在、統合ID管理製品のプロダクトオーナーとして活躍する吉水智宗氏は、「2017年、2人目の子どもが生まれたタイミングで約3カ月間の育休を取得しました」と話す。
吉水氏は分社化前のワークスアプリケーションズに2005年に入社。当時から会社としてダイバーシティを推奨していたというが、「1人目のときは、妻が出産直後に実家に帰省したため、育休を取得しなかった」という。しかし2人目のときは、長子が保育園に通っていたこともあり、実家に頼ることなく夫婦2人で子育てをしていこうと、育休の取得を決めた。「育休を取得することを上司に話すと、前向きに受け止めてくれた」と吉水氏は話す。当時は今ほど育休を取得する男性社員は少なかった。
「職場全体で育休取得が当たり前という雰囲気を醸成するには、役職者が率先して取得していくことが大事だと感じ、率先して取得しようと思いました」(吉水氏)
子育てをしながら働く社員を支援する制度・仕組み
WHIで育休取得が進むのは、子育てをしながら働く社員を支援する制度や仕組みを、社員が中心に働きかけて整備してきたからだ。社員からの声を元に、制度化、サービス化されたものがたくさんあり、その主なものがワークスミルククラブだ。
ワークスミルククラブは子どもを持つ社員が”働くことを楽しめる”理想の制度を目指して、内容や運用方法を設計したもの。ワークスミルククラブは次の5つの項目からなる。
- 妊娠判明時から、子どもが3歳になるまで取得できる育児休業制度
- 子どもが小学校を卒業するまで選択できる短時間勤務制度
- 子どもの病気やケガの看護が必要な場合の特別休暇
- 福利厚生サービスによる託児所「WithKids」の利用
- 職場復帰時のボーナス制度
いずれも魅力的な制度だが、中でも特筆すべきが社内に託児所「WithKids」が設置されていることだろう。社内に設置されていることで、子どもと一緒に通勤して、お昼ご飯一緒に食べられたり、自前で保育所機能を有することにより、保育園定員の空き待ちをする「保活」を避けて育休からの早期復帰が実現できるなど、社員からも非常に好評だという。
WHIで高い育休取得率、復帰率を実現しているのは、これらの制度やサービスというハード面の整備だけではない。子育てと仕事の両立を後押しする文化の醸成というようなソフト面の整備も図られている。その1つが、社内コミュニケーションツールとして活用しているSlackに「パパママチャンネル」というオープンチャンネルが開設されていることだ。
「150人以上の社員が参加し、日々の子育てについてちょっとした相談をしたり、愚痴を聞いてもらったりしています。このチャンネルは子育てをしている社員だけではなく、全社員に公開します。子どもを持たない人たちにとっても、子どもを育てながら働くことの理解につながります。子育てしながら働くことは普通だと思える文化の醸成に寄与していると思います」(吉水氏)
とはいえ、育休取得をすると他の開発メンバーに迷惑をかけてしまうのでは、という不安もある。だが、そのあたりについても、「心配は不要」と吉水氏は話す。吉水氏のチームでは、メンバーが育休の取得を申し出やすい雰囲気を醸成していることに加え、属人化しないような仕事のやり方を心がけている。育休取得までの期間に余裕を持って吉水氏に相談するという信頼関係を築くことで、十分な時間をかけて引き継ぎや業務調整を行うことができるほか、機能開発をチームで担当したりドキュメンテーションをして担当者以外でも理解できる状況にしておくことで、属人化を防いでいる。