今だからこそ「IoTとは何か」を考える
「以前は、IoTの後ろにカッコ書きで(モノのインターネット)や(Internet of Things)と書いてあるのが普通でしたが、最近ではニュースなどでも付かなくなってきている印象です」と松下氏は話し始めた。IoTという言葉が市民権を得てきているというのだ。
では、改めてIoTとは何なのだろうか。松下氏は説明のために、2つの簡単なデモ動画を紹介した。
1つ目は「SORACOM LTE-M Button」というデバイスによるデモだ。長さ10cm、幅3cmほどのスティックに押しボタンが1つ付いている。このボタンを押すと、SORACOMのモバイル回線で信号が送られて「LINE Notify」を通じて、スマートフォンのLINEアカウントにメッセージが送られる。
もうひとつのデモ動画では、LINEから送ったコマンドでネットワークカメラの方向を制御する様子を見せた。松下氏は、このようなIoTは次の3つの要素で構成されていると説明する。
まずはIoTの「Things」にあたる「モノ」である。つまり、センサーやスイッチなどの入力部分、モーターやLEDなどの出力部分、それをコントロールするデジタルデバイスを指す。このようなモノが現場をデジタル化する役目を持っている。そして、デジタル化された現場のデータは、従来であればモノの中で処理していたが、IoTでは「クラウド」で処理するのだ。さらに、このモノとクラウドをつなぐために「ネットワーク」が必要となる。IoTは、業種・業態・規模などに関係なく、この「モノ」「クラウド」「ネットワーク」の3つの要素で構成されているという。
「IoTを利用することで、遠く離れたモノや現場をデジタル化できます。IoTを活用するエンジニアは、現実世界と人をつなげて価値を創り出す役割を担うことができるのです」(松下氏)
では、実際にどのようなモノをつなぎ、どのような価値を創っているのだろうか。
松下氏は、代表的な事例をピックアップして紹介した。例えばダイキン工業では、オフィス用空調機器の定期点検のため、エアコン内部の定点カメラで画像を送信して、AIによる分析で清掃時期を自動判定している。これにより、人間は必要なときにのみ清掃すればよくなり、ビル管理業務の効率化が実現した。
「このように、IoTによって新しい価値を創り出すことができます。どこでもつながるデータ通信により、従来の労働を置き換えられます。収集できるデータの解像度が向上することで、既存ビジネスのスマート化が実現するのです。こういったテクノロジーを業界を超えて連携させることで、新たな顧客価値を生み出すことができます」と、導入の効果を説明した。
「SORACOMでは、すでに2万以上のお客さまに300万を超えるIoT契約回線を提供しています」と松下氏は語った。なおデブサミ2022の開催後、2月22日に同社は400万回線を達成したことを発表した。