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Developers Summit 2022 レポート(AD)

「モノがつながる」が当たり前の時代、エンジニアが知っておきたいIoTの基礎知識【デブサミ2022】

【18-E-3】IoT(エンジニア)として歩んだ6年間から見る「IoTの今と展望」 ~ 今できる事と、これからに向けた準備

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IoTで見えてきた「技術のサイクル」

 ここで松下氏は、IoTが向き合ってきて見つけた技術サイクルについて説明した。「デジタル化→ネットワークによる共有→データ活用」というステップを繰り返しているというのだ。

 例えば、PCブームでビジネスや日常生活をデジタル化できるようになり、インターネットがその成果を共有することを可能にして、クラウドの普及でデータ活用が促進されているといった具合だ。

 そして、この技術サイクルがIoTでも繰り返されようとしている。IoTで現場のデジタル化が進み、5G/LPWAでネットワークを介した共有が可能になり、AIや機械学習によりデータ活用が進むということである。

 「もちろん、こうした応用もゼロからつくっているわけではありません。すでにある技術を土台にして、言わば巨人の肩に乗ることでいち早く対応できます」と、松下氏はIoTによるモノづくりについて説明する。

IoTでも技術サイクルが繰り返される
IoTでも技術サイクルが繰り返される

 では「すでにある技術」として、IoTでは何が利用できるのだろうか。

 モノにあたるデバイスとしては「Raspberry Pi」や「M5Stack」などのマイコンモジュールが比較的安価で入手できる。クラウドは、クレジットカード1枚あればオンラインで契約し、5分でサーバーを立ち上げることが可能だ。

 しかしIoT実現のための3つ目の要素、ネットワークには課題があった。SORACOMが登場する以前は、ネットワークの設定を人力で行うことが前提になっていたのだ。エアコンの中にネットワークカメラを設置するとしても、その設定やメンテナンスは人間が行う必要がある。

 「IoTをやってみようと考えた際に、モノとクラウドは簡単に手に入るにもかかわらず、ネットワークは面倒くさいというケースが多くありました」(松下氏)

 そこで登場したのが、IoT向けのデータ通信である。SORACOMは2015年のサービス開始当初から、誰でも購入可能でどこからでもつながる「IoTのためのネットワーク」を提供してきた。すでに、日本国内だけでなく世界140を超える国と地域で利用可能で、IoTエンジニアは世界で活躍できるという。

IoTで変化した「モノづくりのルール」

 ここで松下氏は「IoTでは、製品の定義が変わってきています」と、新しいルールについて説明した。今までは、センサーやモーターなどをマイコンで制御していた。つまり、これまでのモノづくりの領域は、下図のオレンジ色の部分のみにとどまっていた。

IoTではクラウド連携まで含めてモノづくりが必要になる
IoTではクラウド連携まで含めてモノづくりが必要になる

 これに対し、通信モジュールを標準搭載してクラウドと連携することが、IoTにおけるモノづくりとなる。製品の定義がオレンジ色から水色の部分にまで広がっているのだ。

 例えば、スマートスピーカーでは通信モジュールまでがハードウェア的な境界となるが、実際に機能を発揮するためにはクラウド連携が必須といった具合だ。

これからIoTに取り組むためには?

 松下氏は「IoTは、クラウドとの連携によりデータを活用して初めて価値を発揮できます」と改めて強調する。そのため、データ活用までの時間が勝負になるのだという。

IoTではデータ活用までの時間が勝負になる
IoTではデータ活用までの時間が勝負になる

 「IoTで解決できる課題を見つけたとしても、モノ・クラウド・ネットワークのことをすべて考える、言わば総合格闘技のような形で展開していく必要があります。しかも、1回の試行でうまくいくことはほぼありません。

 そのような状況でIoT開発のスタートラインはどこになるのか。IoTを使う側から見たスタートラインは、水色のところ。データ活用が始まってから、やっと『おっ便利じゃん』と感じてもらえます。

 一方で、IoTをつくる人から見たスタートラインは、赤い部分が非常に長いことが多い。にもかかわらず、IoTを使う側から見ると『あの人たちは一生懸命電子工作をしているけれど何なんだろう』と、赤い部分は価値のない時間になってしまいがちです」(松下氏)

 この赤い部分をいかに短縮するか。そのために、巨人の肩に乗る方法を学ぶ必要があるのだという。

 「経験ゼロでも素早く始めるには『作らずに創る』という考え方が必要です。SORACOMでも、IoTデバイスやデータ通信・クラウドサービスなどを提供しています。ハードウェアは1個から購入できますし、通信環境も用意しています。クラウド環境として、PaaSやSaaSも提供しています。なぜ私たちがツールを使うことをすすめるのか。それが巨人の肩に乗る方法を学ぶことにつながるからです」(松下氏)

 そして松下氏は「IoTエンジニアは、現実世界と人をつなげて価値を創り出す存在」だと、改めて語った。すでに、デバイスやクラウド、ネットワークといったIoTに必要な要素が、すべて高品質かつ安価で使える時代になっている。そしてIoTデバイスは、クラウドを味方に付けるインターフェースと言える。いち早く動くものをつくることが最大の説得材料となるのだ。

 最後に松下氏は、ケヴィン・ケリーの『〈インターネット〉の次に来るもの』という書籍の一節を紹介した。

 人間の歴史の中で、何かを始めるのに今ほど最高の時はない。今こそが、未来の人々が振り返って、「あの頃に生きて戻れれば!」と言う時なのだ。

 KEVIN KELLY ,〈インターネット〉の次に来るもの, NHK出版, 2016, P.18

 最後に「モノがつながるのが当たり前になる時代、エンジニアとして、あなたは何をやっていたいですか?」と問いかけ、松下氏はセッションをまとめた。

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この記事の著者

可知 豊(カチ ユタカ)

フリーランスのテクニカルライター 興味の対象はオープンソースの日常利用、ライセンス、プログラミング学習など。 著書「知る、読む、使う! オープンソースライセンス」。https://www.catch.jp

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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