はじめに
Windows環境で開発可能なマルチプラットフォームGUI技術を解説してきた本連載も、次回で最後になりました。最後は、Avalonia UIを紹介します。これまでと異なり、Avalonia UIは、マイクロソフトが関わったフレームワークではありません。とはいえ、.NET上で動作するオープンソースのフレームワークであり、幅広い環境に対応しています。
対象読者
C#の基礎的な知識がある方を対象とします。C#の基本文法などの解説は割愛します。
Avalonia UI
Avalonia UIは、.NET(厳密には、.NET Standard 2.0)に対応したフレームワークです。
動作・開発環境
.NETが対応する環境で動作可能です。公式サイトでは、Windows 8以降、maxOS Sierra 10.13以降、Linux(Ubuntu 16.04以降など)をサポートしていると記されています。また、AndroidやiOSなどのモバイル環境にも対応し、さらにWebAssemblyにも対応しています。WebAssemblyとは、簡単に言えばブラウザ上で高速に動作するバイナリフォーマットで、ブラウザ単体で動作するWebアプリが開発可能です。
Avalonia UIの開発環境としては、Visual Studio 2017以降、JetBrains Rider 2020.3以降に対応しています。JetBrains Riderは、開発ツールで知られるJetBrains社の有料IDEです。
本稿では、Visual Studio Community 2022を利用します。
特徴
Avalonia UIは、.NET MAUIと同様にXAMLベースのフレームワークでWPFとよく似ています。WPFは、ご存じの通りマイクロソフトが開発した.NET FrameworkのGUIフレームワークです。WPFの名称となっている「Windows Presentation Foundation」のとおり、WPFはWindows環境のみのGUI技術に対して、Avalonia UIはマルチプラットフォームに対応したことで、WPFを発展、進化させたものとも言えるでしょう。
MVVMパターン
WPFでは、MVVMパターンと呼ばれるソフトウェア構成が推奨されていました。Avalonia UIにおいてもMVVMパターンを利用したアプリの開発が可能で、テンプレートとしてMVVMパターンのプロジェクトも提供されています。
MVVM(Model-View-ViewModel)パターンとは、アプリのロジック部分とUI部分とを分離(疎結合に)するためのソフトウェア構造です。ロジック部分とUI部分とを分離することにより、開発効率の向上やコードの再利用が容易になります。
Viewは、画面表示や入力を受けつける処理を担当します。Modelは、アプリで利用するデータの管理やアプリの内部的なロジックを担います。ViewModelはViewとModelを仲介し、ViewやModelに対して状態変更を通知、反映させる役割となります。
データバインディング
データバインディングとは、アプリのUIパーツとそのパーツで利用するデータとを接続する処理です。Avalonia UIではViewの画面定義となるXAMLでUIパーツを定義し、そのデータ部分はViewModelのプロパティとします(ここは実際のコードを見た方がわかりやすいので、サンプルコードと共に後述します)。