はじめに
本連載では、マルチプラットフォーム化が進む.NETと、そのWebアプリケーション開発フレームワークであるASP.NET Coreの全体像を俯瞰します。ASP.NET Coreは、アプリケーションの目的や開発スタイルに応じて選択することができる多彩なサブフレームワークを搭載しています。それらの基本的な性質や機能を読者に示すことで、ASP.NET Core導入の一助になることを目的とします。
対象読者
- Core以前のASP.NETに慣れ親しんだ方
- Web開発の新しい選択肢としてASP.NET Coreを理解したい方
- ASP.NET Coreの多彩なフレームワークを俯瞰したい方
必要な環境
本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。
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macOS Ventura / Windows 10(64bit)
- .NET SDK 7.0.100
- Google Chrome 111
[NOTE].NETのバージョン
本連載は.NET 6のASP.NET Coreについて紹介してきましたが、連載途中で.NET 7がリリースされたので、今回以降はサンプルを.NET 7をターゲットに作成し、それに基づき解説します。
ASP.NET CoreのWeb APIとは
ASP.NET Core Web API(以降、Web API)とは、ASP.NET CoreにおけるWeb API(Application Program Interface)いわゆるWebサービスの開発に特化したフレームワークです。このWeb APIにより、Webサービス提供のためのアプリケーションを容易に開発できるようになっています。
なぜWeb APIか?
なぜWeb APIが特別に設けられているのでしょうか? その理由は、Webアプリケーションの開発においてフロントエンドとバックエンドを明確に切り離す動きが顕著であるからです。Facebook、TwitterなどのSNS、Amazonや楽天といったECサービスの利用においては、PCではWebブラウザでの利用が一般的と思われますが、モバイル端末ではネイティブアプリケーションを利用することが多いと思われます。このような利用形態では、ビジネスロジックの処理はバックエンドに任せて、Webブラウザやネイティブアプリケーションではフロントエンドの処理に集中するというように役割分担するのが合理的です。ただし、バックエンドとフロントエンドの境界が曖昧だと、非常に使いにくいものになってしまいます。
このとき、バックエンドをWebサービスとして構成することで、フロントエンドに依存しない汎用的なWebシステムの構築が可能になります。ASP.NET Coreでは、Web APIでバックエンドを構成し、別途BlazorやReact、Angularでフロントエンドを構成する、といったことも可能になります。さらにWebサービス側では、内部のDBで処理を完結させても、さらに外部のWebサービスを利用してもよく、柔軟性がアップします。このとき、Webサービスのインタフェースが変わらない限り、フロントエンド側がそれを意識する必要はありません。Web APIを設けるということは、このようなシステム構成を採用するにあたり大きなアドバンテージとなります(図1)。