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Developers Summit 2024 セッションレポート

今までのキャリアを強みにできる新職種「Professional Service」という働き方

【15-E-7】Professional Serviceという働き方

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 現代社会はインターネットをはじめとする情報伝達手段が浸透した情報化社会から、得られた情報を基にして得た知識があらゆる活動の基盤となる「知識基盤社会」に移ったと言われている。この知識基盤社会の中では、情報の洪水の中で正しい情報を選択しなければ最適な形での活動を行うことは非常に難しい。とりわけ数多くのクラウドサービスやSaaSプロダクトが存在する現代日本においては、ビジネスにおいても利活用する製品・サービスの選択肢も膨大だ。限られた時間で自社製品や事業とのシナジーが高い「正しい選択肢」を選び取ることは困難を極めるが、そんな時に助けとなるのが「プロフェッショナルサービス(以下、PS)」だ。PSの概要や活用例・キャリアプランなどについて、IoT領域でサービスを提供する株式会社ソラコムでPSを担当する須田桂伍氏が講演を行った。

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専門的な知識・スキルを要するプロフェッショナルサービスとは?

 プロフェッショナルサービス(PS)とは、クラウドサービスなどのプロダクトにおいて、専門的な知識・スキルでクライアントの目標達成を有償で支援する職種だ。ここでいう「専門知識」や「スキル」とは自社で提供するサービスや製品についての知識であり、仕様や使い方はもちろん、ノウハウやベストプラクティスの提案も含まれる。こうした支援を通じて、実際のデリバリーまでをクライアントと一緒に進めていく。

株式会社ソラコム シニアソリューションアーキテクト 須田 桂伍氏
株式会社ソラコム シニアソリューションアーキテクト 須田 桂伍氏

 須田氏によれば「昨今のクラウドサービスやSaaSは機能に特化して細分化されたものが多いので、サービスを単体で使うよりも、必要に応じて複数のサービスを組み合わせて使うことが求められる」という。そのためPSは、自社で提供しているサービスとインテグレーションするための関連知識も備えているのが理想だ。

 また、ひとくちにPSといっても、企業ごとに性格や特色は異なる。いわゆるソフトウェアエンジニア系のサービスを提供する企業においては、自社製品の導入支援やプロトタイピングなどの開発支援を行うことも多い。一方で特定ドメインに特化したサービスを行う企業では、専門性の高い技術領域のコンサルティングや、サービスの有償トレーニングを提供する企業もある。

PSの職務は大きく3タイプに分けられる
PSの職務は大きく3タイプに分けられる

 このようにPSを提供する企業が増えてきている背景には、「開発スタイルの変化がある」と須田氏は考察する。今やフルスクラッチで作成するよりも、AWSやAzureなど既存のサービスを組み合わせて1つの大きなシステムを作るという手法が主流となりつつあるが、「開発者としてすごく便利に感じる反面、目的を実現するための方式が多岐に渡り、ベストな方法を判断しづらい」というのだ。

 たとえば「ネットワークを活用してクラウドとIoTデバイスを連携する」だけでも、デバイス側に必要なセンサーや通信規格、クラウド側サービスの組み合わせなどは膨大な数にのぼる。カバーすべき知識範囲は日増しに拡大し、企業も自らの事業にマッチするツールやサービスの組み合わせを判断しきれない。

 さらに言えばIoTの分野においては、プロトコルやセキュリティなど、検討しなければならない要素は多岐にわたる。このような状況では、それぞれの選択におけるトレードオフをクライアント自身が検討することは難しいため、チームの一員のようにプロジェクトに参加し、コンサルや設計もしながら開発も行うPSへのニーズが高まっているわけだ。

選択肢の増加は開発スタイルの変化も招いた
選択肢の増加は開発スタイルの変化も招いた

 ここで須田氏は具体例として、アーキテクチャを決める上でのトレードオフを挙げた。たとえばバッテリーで駆動するデバイスを活用してIoTを行う場合、バッテリーの電力消費を節約するためにどのプロトコルでデータを送るかが論点になる。

 「HTTPのようにリッチなプロトコルを使うと、それだけ電力消費が高くなる。リッチなプロトコルならば再送もプロトコル側でやってくれるが、データ量を節約しようとしてUDPなどにシフトすると、データ量は小さくなるものの再送処理などをアプリケーション側で制御することになる」(須田氏)。

 なんとも悩ましい局面だが、PSが支援に入ることで、検討の時間を短縮できる。なおかつ検討や作業のプロセスに携わることで、将来の参考になるナレッジを残せるというメリットも享受できる。

 メリットはそれだけではない。多様な選択肢の中から1つを選び取らなければならないという現代のビジネス環境においては、深い知識を持つPSに1つ1つ相談できること、すなわち「壁打ち相手がいること」も重要な価値となる。

 「『そんなの、ChatGPTに聞けば良いじゃないか』と思われるかもしれないが、検索エンジンやLLMが示す選択肢がベストかどうかをお客様自身が判断することはときに難しい。『相談できる相手がいる』というPSの価値は、隠れたニーズとして多くの経営者から支持されているポイントだ」(須田氏)。

 ただし須田氏は、「PSはクライアントの代わりに開発設計をするのではなく、フェーズごとにクライアントに必要な知識・支援を考えて提供していく存在」と語る。意思決定の主役はあくまでも顧客であり、PSではない。

 また、PS側の視座として、「PS業務で直接売り上げを立てるのではなく、PSが伴走することでプラットフォームのビジネス拡大に貢献することがねらい」とも強調した。

次のページ
ニーズが高まるPS、具体的な業務とは?

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この記事の著者

山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)

 立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。

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