事業会社のエンジニアに求められるのは「主体性」と「変化」
最後のトークテーマは「事業会社にはどんなエンジニアが向いているか」。藤井氏は、ホテル業界のエンジニアは「接客が好き」または「辛さを乗り越えることを楽しいと感じられる」ことを資質として挙げた。そのうえで、「主体的にシステム開発を行うというオフェンシブな姿勢と、きちんとログを残したり運用を下支えしたりといったディフェンシブな姿勢の両方が求められる」という。
事業ステージによってはリーダーシップを発揮することも求められるため、企業や事業に関心を持ち、関係各所からヒアリングして話をまとめられる能力も重要だという。事業会社の場合はITに明るくない人間も多いため、間違った認識を正せるコミュニケーション能力も不可欠だ。
現場を知っていることも重要なポイントとして挙げられたが、よりプレゼンスを高めるには、「ただ現状を追認することなく、既存の仕組みへの批判的な視点を持っていること」が望ましいという。「実現したい事業像があり、それをITでどう実現するかを考えられる」エンジニアが求められるのだ。
藤井氏の意見に通じる視点として、荒木氏は「俯瞰してブランドを見る」ことを資質として挙げた。事業や組織のステージを冷静にとらえ、一歩引いた目線でビジネスを見るべきだというのだ。
そのうえで、「変化に対して高いモチベーションがある」ことも重要な資質だと荒木氏は話す。「水や空気のように、『当たり前にそこにある』システムを実現するには、実のところたゆまぬ進化が欠かせない。旧来依然とした仕組みなど、変えるべきものを変えていくことがエンジニアリングの真髄」なのだ。
講演の終わりには、スピーカーによる感想が述べられた。藤井氏は荒木氏のトークを踏まえ、「アメリカの本社で導入したシステムが日本で合わない、ということもあるだろう。グローバルな企業は大変だと感じたが、星野リゾートがやってきたことを提供できるかもしれないので、事業会社同士で話し合って、日本全体の事業をよくしていけたらと思う」と意欲を述べた。
荒木氏は「スターバックスも星野リゾートも、いわゆる“キラキラ企業”のように見えるかもしれないが、その中では結構ドロドロしたこともたくさんやっている」としつつ、「互いに情報提供することで、それぞれの課題をスムーズにクリアできれば」と、企業横断で情報交換できる体制を作ることの意義について示し、講演を締めた。