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Developers Summit 2024 KANSAI セッションレポート

いいエンジニアになるための2つのポイント ──元Google技術者・石原氏が説く「シリコンバレー流ソフトウェア開発術」

【B-5】シリコンバレー流ソフトウェア開発術

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 AI技術の進化は、ソフトウェア開発の現場に大きな変化をもたらした。単純作業がLLMに代替される場面も増えてきた昨今、従来の開発手法は見直されつつある。いわゆる「シリコンバレー企業」をはじめとする欧米の先進的なIT企業により、従来の常識が次々と塗り替えられているなか、国内企業はどのようにして生き残っていくべきだろうか?ソフトウェア技術者の養成機関・Greek Alphabet Software Academyで講師を務め、自らもGoogle本社で10年間の勤務経験がある石原直樹氏が、AI新時代のエンジニアに求められるスキルや開発組織の在り方・養成機関での取り組みなどについて講演を行った。

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シリコンバレー流開発術とはトライ&エラーの繰り返し

 「シリコンバレー流ソフトウェア開発術」と銘打たれた本講演。その冒頭、石原氏は「正しいソフトウェア開発は存在しない」と断言する。ソフトウェア開発は常に変化し続けるため、昨日最適だったことが今日も正しいとは限らない。そのため、数多くのトライ&エラーを経て学んだことを次に活かすことが重要なのだ。

Greek Alphabet Software Academy 石原 直樹氏
Greek Alphabet Software Academy 石原 直樹氏

 いまやブランドとなったシリコンバレーにおいては、毎年大量のスタートアップが誕生し、そのうち9割が数年以内に消滅する。生き残る企業はわずかだが、その企業が実践していた手法に次世代の企業が変化を加え、再び多くの企業が淘汰されるという進化論的なサイクルが、極めて効率的な手法を確立するシリコンバレー企業を形作ったのだ。

 石原氏はここで、「Stand on the shoulder of giants(巨人の肩の上に立つ)」というニュートンの言葉を引用し、「シリコンバレー企業が成し遂げた成功の肩の上に乗せてもらうことは、我々が成功に近づく第一歩となる」と、先人から学ぶことの意義を強調した。

 こうしたトライ&エラーは開発手法にも及ぶ。開発手法は日々進化していくものだが、手法に名前を付けてルールやガイドラインを策定することで固定化されてしまう恐れがある。そのため、現在GAFAで行っている開発手法には特定の名前が存在しない。

「最も失敗した者が、最も進化する」という生存法則だけが変わらない
「最も失敗した者が、最も進化する」という生存法則だけが変わらない

 GAFAのような先進的な企業では、チームメンバーやテックリードが何らかのセミナーで優れた手法を学び、上手くいけばそれが定番手法として定着する形で日々の開発を行っている。

 そのためアジャイルやスクラム、イテレーティブといった従来手法と完全に一致するものがない独自の手法で開発を行っているチームもある一方で、スクラムに近い手法を採用しているチームが入り乱れている。

 「良いものを取り入れて自分たちの手法を進化させていくことは、一種の進化論(イテレーション)の繰り返しと言える。その道のりにおいて、名前は重要ではない」(石原氏)のだ。

 加えて、石原氏はソフトウェアエンジニアに求められる要件についても「コーディングがすべてではない」と警鐘を鳴らす。Googleの中で、最もコードを書く時間が多いジュニアエンジニアでも、コードを書く時間は業務時間の約40%であるという調査を引き合いに出し、残りの時間でさまざまな業務を行っていると示した。

 具体的なスキルの1つとして、コミュニケーションスキルが挙げられる。チーム開発が前提となっているソフトウェア領域において、「自分がなぜそのロジックを採用したのかを、同僚に対して明確かつシンプルに説明できる能力」は現代のエンジニアに不可欠だといえる。コーディングに傾倒してしまうとこうしたスキルがおろそかになってしまい、「本当のエンジニア」にはなれないのだ。

「予測不可能な未来」に対処するためにも幅広いスキルが必要
「予測不可能な未来」に対処するためにも幅広いスキルが必要

 この時の考え方として、「どの項目でも100点満点中30点程度は取れるようになり、得意分野では60点程度取れるようになれば十分」だと語る石原氏。「チームで協力して不得意分野を補い合えば、トラブルが発生した際に応急処置ができたり、助けが必要かどうかの判断ができたりする。そうすれば、チームとしてプロジェクトを進めていくことができる」と、チーム開発の必要性を力説する。

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この記事の著者

中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)

 立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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