「やりたい」「なりたい」にフォーカスする
南風原氏は現在、bgrassのテックリードとして、女性ITエンジニアのハイスキル転職サイト「WAKE Career」の開発に従事している。本セッションでは、同氏がこれまでのキャリア遍歴を振り返りながら、自分らしいエンジニアキャリアのために大事にしている「3つのポイント」を紹介した。
1つ目は「『やりたい』『なりたい』にフォーカスする」。南風原氏は、「皆さんは無意識の思い込み=バイアスで自分の可能性を自分自身で狭めてないでしょうか」と視聴者に問いかけた。
南風原氏自身も思い込みで限界を定めてしまっていた時期があると言い、その例として新卒時代のエピソードを語った。
大学時代にWeb開発の楽しさに気づき、SES企業にエンジニアとして就職。しかし、初めて配属された部門では、外国籍の事務メンバーの日本語添削を任され、エンジニアとしての業務を任せてもらえない日々が続いていた。
「営業の方に相談したところ、『新卒1年目はそもそも開発業務に入れないよ』『実務経験を積んでからじゃないと難しい』と言われてしまいました。周りの同期はエンジニアとしての業務をしっかりやれる環境にいたので、そういう人と比べて自分はエンジニアとしても社会人としてもダメなんじゃないか、と自信を失ってしまいました」
そこで「自分が本来やりたかったことは何か」に立ち戻ったという南風原氏。「そもそも物作りが好きでエンジニアになった。そして、エンジニアとしてはまだまだ未熟なので、やれることを広げていきたい。やりがいをもって働ける環境にいたい」といった「なりたい姿」が浮かんできた。すると、やりたいことと今の環境が大きくずれていることに気づき、環境に対しても、自分自身に対しても「イライラした」と振り返る。
「しかし、環境は自分で変えていかなければなりません。普段の仕事では実務経験が積めないため、空いた時間でプログラミング学習を独学でスタートしました。やりたいことができる環境に自分自身で変えていくために、スキルを身につけるという選択をしました」
「とりあえずやってみよう」の精神から見えるものとは?
2つ目に大事なのが「とりあえずやってみよう」の精神だ。「やれるかやれないかじゃなく、『1ミリでもいいからやってみたいかどうか』で決断してきたことが多い」と南風原氏。
その結果、南風原氏のエンジニアとしての経験は多岐にわたる。EMからスクラムマスター、プロダクトマネージャー、副業、フリーランスなど多様な立場を経験した。立候補したものもあれば、上司や同僚に背中を押されて携わった職務もある。
「とりあえずやってみよう」の良い点は、やってみた結果、自分の強み・弱み、得意・不得意、興味関心の範囲などがわかることだ。また、新しいコミュニティや環境に一歩踏み出すことで、人とのつながりも増える。
「振り返ると、私はキャリアアップを意識して選択してきたわけではないと思っています。自分自身の強みや得意なことがよくわからなかったので、いろいろやってみて、その度に自分の強みや得意、あと自分らしく働ける環境を見つけてきました。興味が湧いたことは少しでも挑戦してみる姿勢を大切にしよう、とお伝えしたいです」
そして、最後に紹介された3つ目のポイントは「強みを生かせる場所を見つける」だ。
ここまでに紹介した「やりたい」「なりたい」にフォーカスし、とりあえずやってみようの精神を実践していくと、自分の強みや得意を発見することができると語る南風原氏。
この時「自分のこれまでの経験を定期的に振り返ることがすごく大事」だと強調した。振り返る方法は自由だが、南風原氏は「職務経歴書を定期的に更新する」ことで自身の経験値やスキルを振り返っている。さまざまな役割やプロジェクトに関わり、それらを振り返ることで、自分の仕事のスタイルが見えてくるのだ。
例えば南風原氏の場合、EMの経験とPdMの経験を通して、「ピープルマネジメントよりももの作りに直接関われるPdMの役割の方が、自分自身に合っている」と気づいたという。
「これまでのエンジニアリングの経験も、PdMの方が生かしやすい。また、私はリスクヘッジを考えることが得意なため、その視点で要件定義を行うことでPdMの業務に強みが生かせると感じました」
また、強みを生かせる場所を見つけるためには、柔軟に環境を変えるという選択肢を持つことも重要だ。環境を変えるといっても、そのやり方は転職だけではない。社内の部署や職種、役割を変えることや、社外コミュニティへの参加も「環境を変える」ことの1つだ。
会社員時代から副業や外部コミュニティを通じてさまざまな人と出会ってきたという南風原氏。フリーランスエンジニアと交流する機会があり、その交流を通じて自分自身のキャリア観を見つめ直すきっかけになったこともある。
南風原氏は、石倉秀明著の書籍『CAREER FIT 仕事のモヤが晴れる適職思考法』(宝島社)の内容を引用し、「自分に合う場所」を見つける重要性を強調した。
「『目指すべきはキャリアアップという発想ではなく、その都度、自分に適した環境・場所を求めていく「キャリアフィット」ではないかと思う』という言葉が書かれています。私が大事にしている『強みを生かせる場所を見つける』とつながる考え方だなと、しっくりきました」
なりたいエンジニアになるための2つの環境
南風原氏の場合は、キャリア観として2つの環境を重視している。1つは「自分が楽しく働けて、成長を実感できる環境」、もう1つは「社会に貢献しつつ、自分自身もその恩恵を受けられるというサイクルを回せる環境」だ。
このキャリア観に対して、現在bgrassで働くことで実現できているそうだ。
bgrassが提供するWAKE Careerは、IT業界で働く女性にフォーカスしたサービスだ。南風原氏自身も女性エンジニアなので、ターゲット層にあたり、「自分事として開発にコミットしやすい環境」だ。
さらに、南風原氏が成長することで、より事業に貢献でき、事業の拡大につながる。「事業が大きくなることで、ユーザーである女性エンジニアを取り巻く環境の改善や、ジェンダーギャップ解消を目指せる。ターゲット層である私自身もより良い環境で働ける、生きていけるとさらなる成長ができる」と説明した。
「今、このサイクルがいい感じに回せていて、やりがいを持って働けていると実感しています」と南風原氏。発表のまとめとして、自分らしいエンジニアキャリアを見つけるためのポイントを振り返った。
「周りのバイアスを取っ払い、自分の『やりたい』『なりたい』にフォーカスしましょう。何でもできるし、何でもやれます。1ミリでも興味を持ったらとりあえずやってみましょう。失敗したらどうしようと思うこともありますが、『死ぬこと以外はかすり傷』だと考えて何でもやってみましょう。
また、これまでやってきた経験を定期的に振り返ると、自分の強みや、得意なこと、苦手なこと、そして自分らしくいられる環境が見つかります。そうやって強みを生かせる場所を見つけましょう。自分の可能性を制限せず、少しでも興味があることに向かって勇気をもって一歩踏み出してみましょう」
最後に、南風原氏が好きな言葉であり、bgrassが掲げるミッション「なりたいを解放しよう」を紹介。「今日のセッションを通じて、ひとり一人が自分のなりたいを解放するきっかけになれたらと思っています」とセッションを締めくくった。
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WAKE Careerは、女性IT/Webエンジニアのためのハイスキル転職サービスです。 自分が選んだキャリアを諦めたくない、新しい道を見つけたい方のご連絡をお待ちしています。
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