新卒1年目がゼロから始めたDevOps
2017年創業で、LINE公式アカウントを使ったマーケティングや顧客管理を支援する「Liny」を開発・提供しているソーシャルデータバンク。従業員数63名のうち、エンジニアは約40%。機能開発10名(2チーム)・運用保守15名(2チーム)の体制である。
島田氏がDevOpsに取り組むきっかけは、入社して半年後のある日、「おもしろそうだから、やってみない?」と部長から声をかけられたことだった。「ピクスタ株式会社さんが技術顧問の@t_wadaさんと配信しているポッドキャスト『texta.fm』の話で部長と会話が盛り上がった。その中で紹介されていた書籍『LeanとDevOpsの科学』を読んで、DevOpsに興味はあった。当時、サービス規模が拡大している最中で、リードエンジニアが忙しく、私のような新人に白羽の矢が立った」と島田氏は振り返る。

DevOpsを始めるにあたり、島田氏は理想と現状のギャップを知るところから始めることにした。理想を明確にするために参考にしたのが、「DORA(DevOps Research and Assessment)」である。DORAは開発組織の「能力とパフォーマンスの関係」を明らかにするのを目的とした研究プログラムであり、Four Keysを提唱したことでも知られている。
Four Keysとは、ソフトウェア開発組織のパフォーマンスを示す4つの指標(デプロイ指標・リードタイム・平均修復時間・変更失敗率)のこと。DORAで示されたハイパフォーマンスな組織が持つ指標を、ソーシャルデータバンクが目指す理想に置くことにした。

次は、現状のパフォーマンスを知る必要がある。Four Keysのすべてを計測するのは大変なため、チームごとにプルリクエスト(以下、PR)のリードタイムを集計するダッシュボードを作成した。その結果、現状のリードタイムは1週間〜1カ月であることが判明。つまり、現状はDORAでいうミドルパフォーマンスの組織であり、ハイパフォーマンスな組織になるには、リードタイムを1日〜1週間に短縮する必要がある。
そこで島田氏は、「我々のパフォーマンスは真ん中くらいなので、まずはリードタイム1週間を目指して、PRを小さくするなど、各チームで改善をお願いします!」と呼びかけた。
しかし、これが失敗だった。「そんなことして何の意味があるの?」と、まったく賛同を得られなかったのだ。
「正直、心が折れかけた」と、島田氏は当時を振り返る。