オブザーバビリティプラットフォームを提供するNew Relicは6月18日、記者発表会を実施し、FinOps実現のための2つの新機能「Cloud Cost Intelligence」「Pipeline Control」を発表した。新機能により、クラウド利用のコストを最適化し、またデータのフィルタリングやサンプリングによって必要なデータのみを収集することでROIの向上を実現する。
アーキテクチャの複雑化によるクラウドコストの増幅
会見では、新機能の発表に先立ち、クラウド活用事業者が直面する課題について、同社 執行役員 技術統括 兼 CTOの松本大樹氏より説明された。

日本、世界いずれもクラウドサービスへの支出は増加しており、日本においては2029年までに現在の約2.1倍である8.8兆円まで市場が拡大すると試算されている。

そのような環境下で、クラウド活用事業者は課題に直面していると松本氏は指摘する。それは主にアーキテクチャの複雑化を起因とする、無制限のクラウド支出、ツールコストの増大、ROIの定量化難の3点だ。そのソリューションとして、今回の新機能が発表された。

新機能で実現する、クラウドコストの最適化とデータ価値の最大化
続いて、同社 上級エヴァンジェリスト 清水毅氏が、2つの新機能、「Cloud Cost Intelligence」(以下、CCI)と「Pipeline Control」を紹介した。

CCIは、AWSとKubernetesのリソースのコストをリアルタイムで可視化・分析することができる。この新機能により、技術チーム、ビジネスチームの両方から、過剰な支出や誤った分野への支出、無駄の防止にアプローチすることが可能になる。


一方、Pipeline Controlはテレメトリーデータを柔軟にフィルタ・変換・加工することが可能で、データ利用価値の最大化とデータコストの適正化を実現する。フィルタ・変換・加工の条件にあたるパイプラインルールは送信側の顧客、受信側のNew Relicいずれにも定義ができ、これにより送信時の負荷軽減や内部データの流出防止が可能になる。

クラウドリソース効率化とユーザー体験向上を両立したAI inside
最後にAI inside VPoE 三谷辰秋氏より、New Relicの活用でクラウドリソースを効率化させた事例について紹介された。

同社では、データ入力業務をサポートするAIエージェント「DX Suite」をはじめ、生成AIや自立型AIの研究開発と社会実装を推進している。プラットフォーム事業の規模拡大に伴い、2024年よりNew Relicで収集・可視化されたデータを基盤にコスト可視化と最適化を行うFinOpsの取り組みを進めてきた。結果として、年間のAWSクラウドリソースの効率を2024年から48%向上させながら、アプリケーションの主要機能の処理時間は従来比で2倍以上短縮するなどユーザー体験の向上も併せて実現した。

今回紹介されたAI insideのクラウドリソース効率化事例は、CCIやPipeline Controlの活用ではなく自社の運用により実現したものだが、三谷氏は、今回の新発表に対して「CCIはエンジニアとビジネス側が同じ画面で議論できるところ、Pipeline Controlはテレメトリデータを一元管理できることに期待している」とコメントした。
最後に松本氏は、New RelicがAWS Marketplace経由で日本円で利用できるようになったことに触れながら、次のようにコメントした。
「今後も企業のクラウド利用は進み、併せてオブザーバビリティデータもさらに増加していくことが予想される。したがって、企業はこれらのコストコントロールが求められていく。New Relicが今回発表した新機能はクラウド利用量及びオブザーバビリティデータ量を可視化・制御するものである。New Relicでは今後も技術的支援とサポート体制によって、オブザーバビリティの民主化を進めたい」
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中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)
SIer勤務を経て2025年6月よりCodeZine編集部所属。千葉大学法政経学部卒。
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