Kotlin DSLによるナビゲーション定義
Safe Argsによるナビゲーションの話はここまでとして、最後に、Kotlin DSLによるナビゲーション定義を紹介します。この方法は、全くxmlファイルを作成せずに、Kotlinコードをプログラミングすることでナビゲーションを定義する方法です。なお、Kotlin DSLによるナビゲーションの定義は、Kotlinコードのみとなります。
Kotlin DSLナビゲーション利用の設定
Kotlin DSLによるナビゲーション定義を行う場合、前回紹介したナビゲーションコンポーネントの依存ライブラリの他に、追加の設定が必要です。
build.gradle.kts(Module)ファイルのpluginsプロパティにリスト10の(1)のコードを追記します。これは、のちのコードで出てくる@Serializableアノテーションを利用するためのものです。さらに、dependenciesプロパティに(2)のコードを追記します。
plugins {
:
kotlin("plugin.serialization") version "2.0.21" // (1)
}
:
dependencies {
api("androidx.navigation:navigation-fragment-ktx:2.9.6") // (2)
}
なお、Kotlin DSLでのナビゲーション定義を行う場合は、activity_main.xmlに記述するFragmentContainerViewタグ内のapp:navGrap属性は不要となるので注意してください。
idの代わりとなる型定義を行う
Kotlin DSLでナビゲーションを定義する場合、XML記述に定義するid値は利用できません。このidの代わりとなるものを、型定義で代用します。これを、ルート(Route)といいます。
例えば、これまでのサンプルと同様のものを考えると、リスト11のコードとなります。(2)がメモリストルートの定義、(3)がメモ詳細ルートの定義です。
@Serializable // (1) data object MemoList // (2) @Serializable // (1) data class MemoDetail(val id: Long) // (3)
ルートの定義は、リスト11のように、dataオブジェクト、または、dataクラスとして作成します。さらに、その定義に対して、(1)のように、@Serializableアノテーションをつけます。
そして、ルートに対して引数、すなわち、前節で紹介したような遷移元から受け取るデータを定義する場合は、(3)のように、プロパティとして定義します。そのため、引数が必要なルートに対しては、dataクラスを定義し、引数が不要なルートは、(2)のように、dataオブジェクトとします。
ナビゲーション定義
リスト11のような、ルート定義(=型定義)を行った上で、ナビゲーション定義を行います。これは、MainActivityのonCreate()メソッド内で、リスト12のコードを実行することです。
val navHostFragment = supportFragmentManager.findFragmentById(R.id.navHostFragmentContainer) as NavHostFragment // (1)
val navController = navHostFragment.navController // (1)
navController.graph = navController.createGraph(MemoList) { // (2)
fragment<MemoListFragment, MemoList> { // (3)
label = resources.getString(R.string.tb_list_title) // (4)
}
fragment<MemoDetailFragment, MemoDetail> { // (5)
label = resources.getString(R.string.tb_detail_title) // (6)
}
}
リスト12の(2)のコードが、Kotlin DSLによるナビゲーション定義の核となります。これは、(1)によって取得したNavControllerオブジェクトのgraphプロパティに対して、同じくNavControllerオブジェクトのcreateGraph()メソッドの戻り値を代入する処理です。
その際、引数として、初期表示画面のルートを渡します。今回のサンプルでは、もちろんリスト画面なので(2)のように、リスト11の(2)で定義したMemoListを渡します。
さらに、同じく、createGraph()メソッドの引数ラムダ式内でfragment()関数を実行することで、デスティネーションが定義されます。それが、(3)と(5)です。
その際、ジェネリクスとして、フラグメントクラスとそれに対応するルートを記述します。(3)ではMemoListFragmentとそのルートであるMemoList、(5)ではMemoDetailFragmentとそのルートであるMemoDetailを記述しています。
fragment()関数の引数ラムダ内には、追加情報を設定できます。どのような設定情報があるかは誌面の都合上割愛しますが、少なくとも、(4)や(6)のように、labelとして、各デスティネーションのラベル文字列を定義しておいた方がよいでしょう。
ここまでの内容を構文としてまとめると、以下の通りになります。
val navController = navHostFragment.navController
navController.graph = navController.createGraph(初期表示ルート) {
fragment<フラグメントクラス, ルート> {
label = デスティネーションのラベル文字列
}
:
}
この構文に該当するコード、すなわち、リスト12ならば(2)以降のコードに関しては、MainActivityのonCreate()メソッド内に直接記述するのではなく、例えば、createNavGraph()関数のようなものを別ファイルに定義しておき、それを読み込むという方法も、もちろん可能です。
なお、ここまで説明してきたように、Kotlin DSLでのナビゲーション定義というのは、MainActivityのonCreate()実行時、つまり、アプリ起動時に定義されることになります。XMLによるナビゲーション定義と決定的に違うところは、このナビゲーション定義のタイミングです。XMLの場合は、ビルド時に決定されます。そのため、Kotlin DSLは、動的なナビゲーション定義に向く一方で、デザインモードによるナビゲーション定義が利用できず、ややわかりにくい面があります。適材適所で使い分けるのがよいでしょう。
Kotlin DSLを利用した画面遷移
最後に、Kotlin DSLを利用した画面遷移コードを紹介します。これは、リスト13のように、navigate()メソッドの引数として、ルートインスタンスを渡すコードとなります。
navController.navigate(MemoDetail(memoId))
まとめ
Android Jetpackについて紹介していく本連載の第16回は、いかがでしたでしょうか。
今回は、ナビゲーションコンポーネントの使い方のうち、型安全に画面遷移を行えるSafe Argsと、Kotlin DSLによるナビゲーション定義を紹介しました。次回は、長らく続いてきた本連載の最終回です。その最終回として、Android開発でDI(Dependency Injection)を実現するHiltを紹介します。
