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一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門

型安全なナビゲーションとKotlin DSLによるナビゲーション

一歩進んだAndroidアプリ開発ができる「Android Jetpack」入門 第16回

Kotlin DSLによるナビゲーション定義

 Safe Argsによるナビゲーションの話はここまでとして、最後に、Kotlin DSLによるナビゲーション定義を紹介します。この方法は、全くxmlファイルを作成せずに、Kotlinコードをプログラミングすることでナビゲーションを定義する方法です。なお、Kotlin DSLによるナビゲーションの定義は、Kotlinコードのみとなります。

Kotlin DSLナビゲーション利用の設定

 Kotlin DSLによるナビゲーション定義を行う場合、前回紹介したナビゲーションコンポーネントの依存ライブラリの他に、追加の設定が必要です。

 build.gradle.kts(Module)ファイルのpluginsプロパティにリスト10の(1)のコードを追記します。これは、のちのコードで出てくる@Serializableアノテーションを利用するためのものです。さらに、dependenciesプロパティに(2)のコードを追記します。

[リスト10]build.gradle.kts(Module)への追加設定
plugins {
  :
  kotlin("plugin.serialization") version "2.0.21"  // (1)
}
  :
dependencies {
  api("androidx.navigation:navigation-fragment-ktx:2.9.6")  // (2)
}

 なお、Kotlin DSLでのナビゲーション定義を行う場合は、activity_main.xmlに記述するFragmentContainerViewタグ内のapp:navGrap属性は不要となるので注意してください。

idの代わりとなる型定義を行う

 Kotlin DSLでナビゲーションを定義する場合、XML記述に定義するid値は利用できません。このidの代わりとなるものを、型定義で代用します。これを、ルート(Route)といいます。

 例えば、これまでのサンプルと同様のものを考えると、リスト11のコードとなります。(2)がメモリストルートの定義、(3)がメモ詳細ルートの定義です。

[リスト11]navigation/MemoNavigation.kt
@Serializable  // (1)
data object MemoList  // (2)
@Serializable  // (1)
data class MemoDetail(val id: Long)  // (3)

 ルートの定義は、リスト11のように、dataオブジェクト、または、dataクラスとして作成します。さらに、その定義に対して、(1)のように、@Serializableアノテーションをつけます。

 そして、ルートに対して引数、すなわち、前節で紹介したような遷移元から受け取るデータを定義する場合は、(3)のように、プロパティとして定義します。そのため、引数が必要なルートに対しては、dataクラスを定義し、引数が不要なルートは、(2)のように、dataオブジェクトとします。

ナビゲーション定義

 リスト11のような、ルート定義(=型定義)を行った上で、ナビゲーション定義を行います。これは、MainActivityのonCreate()メソッド内で、リスト12のコードを実行することです。

[リスト12]MainActivity.kt
val navHostFragment = supportFragmentManager.findFragmentById(R.id.navHostFragmentContainer) as NavHostFragment  // (1)
val navController = navHostFragment.navController  // (1)
navController.graph = navController.createGraph(MemoList) {  // (2)
  fragment<MemoListFragment, MemoList> {  // (3)
    label = resources.getString(R.string.tb_list_title)  // (4)
  }
  fragment<MemoDetailFragment, MemoDetail> {  // (5)
    label = resources.getString(R.string.tb_detail_title)  // (6)
  }
}

 リスト12の(2)のコードが、Kotlin DSLによるナビゲーション定義の核となります。これは、(1)によって取得したNavControllerオブジェクトのgraphプロパティに対して、同じくNavControllerオブジェクトのcreateGraph()メソッドの戻り値を代入する処理です。

 その際、引数として、初期表示画面のルートを渡します。今回のサンプルでは、もちろんリスト画面なので(2)のように、リスト11の(2)で定義したMemoListを渡します。

 さらに、同じく、createGraph()メソッドの引数ラムダ式内でfragment()関数を実行することで、デスティネーションが定義されます。それが、(3)と(5)です。

 その際、ジェネリクスとして、フラグメントクラスとそれに対応するルートを記述します。(3)ではMemoListFragmentとそのルートであるMemoList、(5)ではMemoDetailFragmentとそのルートであるMemoDetailを記述しています。

 fragment()関数の引数ラムダ内には、追加情報を設定できます。どのような設定情報があるかは誌面の都合上割愛しますが、少なくとも、(4)や(6)のように、labelとして、各デスティネーションのラベル文字列を定義しておいた方がよいでしょう。

 ここまでの内容を構文としてまとめると、以下の通りになります。

[構文]Kotlin DSLによるナビゲーション定義
val navController = navHostFragment.navController
navController.graph = navController.createGraph(初期表示ルート) {
  fragment<フラグメントクラス, ルート> {
    label = デスティネーションのラベル文字列
  }
    :
}

 この構文に該当するコード、すなわち、リスト12ならば(2)以降のコードに関しては、MainActivityのonCreate()メソッド内に直接記述するのではなく、例えば、createNavGraph()関数のようなものを別ファイルに定義しておき、それを読み込むという方法も、もちろん可能です。

 なお、ここまで説明してきたように、Kotlin DSLでのナビゲーション定義というのは、MainActivityのonCreate()実行時、つまり、アプリ起動時に定義されることになります。XMLによるナビゲーション定義と決定的に違うところは、このナビゲーション定義のタイミングです。XMLの場合は、ビルド時に決定されます。そのため、Kotlin DSLは、動的なナビゲーション定義に向く一方で、デザインモードによるナビゲーション定義が利用できず、ややわかりにくい面があります。適材適所で使い分けるのがよいでしょう。

Kotlin DSLを利用した画面遷移

 最後に、Kotlin DSLを利用した画面遷移コードを紹介します。これは、リスト13のように、navigate()メソッドの引数として、ルートインスタンスを渡すコードとなります。

[リスト13]MemoListFragment.kt
navController.navigate(MemoDetail(memoId))

まとめ

 Android Jetpackについて紹介していく本連載の第16回は、いかがでしたでしょうか。

 今回は、ナビゲーションコンポーネントの使い方のうち、型安全に画面遷移を行えるSafe Argsと、Kotlin DSLによるナビゲーション定義を紹介しました。次回は、長らく続いてきた本連載の最終回です。その最終回として、Android開発でDI(Dependency Injection)を実現するHiltを紹介します。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 齊藤 新三(サイトウ シンゾウ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook <個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。Web系製作会社のシステム部門、SI会社を経てフリーランスとして独立。屋号はSarva(サルヴァ)。HAL大阪の非常勤講師を兼務。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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