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安全ソフトウェアの設計

【第1回】組込みソフトウェアに求められる安全対策


電気的安全性と組込みソフトウェア

 最近の組込み機器で安全ソフトウェアが必要になっているのは、電気エネルギーを制御する商品です。電気エネルギーを扱う機器は幅広く存在し、私たちは身近に使っています。

 100VのACコンセントから供給される電源からは大きなエネルギーを取り出すことが可能です。家庭に引かれている商用電源は火災を起こすだけのエネルギーを持っています。しかし、これまで長い間AC100Vの電源を使った機器は、ハードウェアによる電気的な安全性を確保することでリスクを回避してきました。電源回路に対しては、機器の用途によって非常に厳しい国際規格が決められています。このような規格をパスした電源デバイスを使った組込み機器はほとんどの場合安全です。電源デバイスは装置を起動・終了するとき以外はソフトウェアで制御することがまったくなく、ソフトウェアからの独立性が非常に高いため、ソフトウェアの不具合の影響をほとんど受けません。だからこそ、AC100V電源の組込み機器の安全性は長い間確保され続けてきたのです。

 しかし、今後も電源デバイスをソフトウェアが制御しないという保証はありません。また、前述した携帯電話よる死亡事故は携帯電話に使われているバッテリが非常に大きなエネルギーを内包していることから起こりました。携帯電話の電子デバイスに流れる電流は微量ですが、携帯電話で何百時間も連続で会話できるほど電流を持続させるためにはバッテリの中に非常に大きなエネルギーを蓄えておく必要があります。現在のリチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリは大きな電気エネルギーを蓄えることができるようになっているため、バッテリの正極と負極をショートさせるとそのエネルギーが一気に流れて急激に加熱したり爆発したりします。携帯電話を買ったときに取り扱い説明書の冒頭に書かれている安全上の注意をじっくり読む人は少ないと思いますが、ここで電池パックの取り扱いに関する記述を眺めてみましょう。

携帯電話電池パックの注意文の例

注意文には「危険」「警告」「注意」の3つのランクがあります。ある携帯電話の電池パックに対する注意文には、「危険」が9項目、「警告」が4項目、「注意」が2項目ありました。ここでは、「危険」に相当する注意文を2つ紹介します。

(禁止) 絶対に火の中に投げ入れたり、加熱しないでください。爆発の可能性があります。

(禁止) 電池パックのコネクタのプラス(+)とマイナス(-)を針金などの金属類で接続しないでください。また、金属ネックレスなどと一緒に持ち運んだり、保管しないでください。電池パックの液漏れや、発熱、破裂、発火の原因となります。

 携帯電話のソフトウェアは電池パックを制御するすべがないため、バッテリの正極と負極をショートさせることはできないでしょう。しかし、充電器のソフトウェアはバッテリを過充電させることができます。

危険回避の責任

 大容量のバッテリが開発されたため、携帯型の組込み機器も大きなエネルギーを扱えるようになりました。これまでハードウェアエンジニアやバッテリデバイスメーカーがこの大エネルギーに対するリスクを回避する安全装置を用意してくれましたが、今後組込みソフトソフトウェアエンジニアにも機器で使われるリスクを含んだエネルギーの存在を認識し、ハード・ソフト合わせて大エネルギーからのリスクを回避できているかどうかを確認することが求められるようになります。

 こうしたことはバッテリに限りません。組込み機器が便利になればなるほど、機器をソフトウェアで細やかに制御する必要が増し、これまでソフトウェアから独立して存在していたハードウェアの安全装置にまでソフトウェアが入り込むようになってくる可能性があります。組込み機器の安全を確保するためには、機器に潜むリスクを認識した上でそのリスクを回避する安全対策を考え、その対策をハードウェアもしくはソフトウェアで実現しなければなりません。

 設計上の対策では回避しきれない場合、前述した携帯電話の電池パックのように取扱説明書や表示ラベルなどを通じて注意を喚起することでしかリスクを軽減できないこともあります。メーカーはユーザーの安全を確保し、製造物責任を果たすために、取り扱い説明書に注意文を載せています。ユーザーは、機器の使用に際してそれらの注意文を読む義務を負っています。ユーザーが注意文を読まずに禁忌事項を実行してしまった場合の事故責任はユーザー側により多くあります。日本の製品はどんなものでも安全品質が高いので事故が起こることは滅多にありませんが、海外の粗悪なものを同じように使っていると、とんでもない事故に巻き込まれるおそれがあることを認識しておかなければなりません。

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ユーザーインタフェースに絡んだ事故の可能性

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この記事の著者

酒井 由夫(サカイ ヨシオ)

1987年よりクリティカルデバイスのソフトウェア開発に20年間従事する。おもに16bitのワンチップマイコンを使った信号処理、リアルタイム組込みシステムの開発を行い、製品の仕様立案からソフトウェア開発のプロセス管理、プロジェクトマネージメント、安全性・信頼性の検証、保守、ソフトウェア技術者教育など組...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/3696 2009/03/16 18:30

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